どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「金田一少年の事件簿」のベスト事件5をあげてみる

話題になっていた「犯人たちの事件簿」に最近手を伸ばし、金田一少年を久々に読み返したのだけれど、やっぱり面白い…!!

昔大人気だった堂本剛が主演していたドラマ。こっちは全くみていなかったのですが、漫画好きの友人がコミックスを貸してくれたのをきっかけに、ハマる、ハマる…。

金田一少年の事件簿 (1) (講談社コミックス (1874巻))

金田一少年の事件簿 (1) (講談社コミックス (1874巻))

 

ヘンなカッコした殺人犯、孤立した村だの館だのの独特の雰囲気。めっちゃインパクトのある死体。

初期の金田一少年はとにかく怖かった…!!


自分が完読した金田一少年は、最初のFILEシリーズ(最初の27巻)と、次のCaseシリーズ(全10巻)のみ。

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そのあとのシリーズは断片的にしか読んでいないし、短編漫画やノベライズも読んでいない。

全部網羅した金田一少年ファンでは全くないけれど、初期のエピソードは大人になってから改めて読んでも面白かった!!と勝手にベスト5の事件を選出してみたいと思う。

 

※もうアタマから犯人の名前書いてネタバレしています。
※トリックやミステリの完成度より恐怖度や鬱ドラマ重視の採点です。

 

 

 

第1位  首吊り学園殺人事件
旧単行本9巻〜10巻掲載
犯人:地獄の子守唄 =浅野遥子

金田一少年の事件簿 (10) (講談社コミックス (2083巻))

金田一少年の事件簿 (10) (講談社コミックス (2083巻))

 

1度犯人として疑われて容疑の晴れた人物ってもう絶対にシロだと思ってたのに…と見事に騙された…!

連続殺人において殺しの順序が逆というトリックは金田一少年内でも何回か出てくる多分そんなに珍しくないヤツ。けど「そのうちの1人はどうやっても自分は殺せない」と錯覚させるため、あえて警察に連行されてみせた犯人の度胸と計算高さ。浅野先生から漂う知性がなんかいいんですよね〜。
不良生徒のカンニング、鉛筆をポキポキ折る筆圧の強い生徒…陰鬱な学校のイヤな生徒を描いただけのイベントと流し読みしてたようなとこが、まさかの犯人を追い詰める証拠となっていく展開もお見事。

「17歳の生徒と付き合う33歳の予備校教師」って子供の頃はなんか否定的にみてた気がするけど、深キョン横浜流星みたいなもんか。自分がいい年になると嫌悪感ゼロになる不思議(笑)。

なにより今読み返すと浅野先生の人物描写が丁寧で、真面目な人柄がかなり好感度が高い。逮捕後にやつれまくってた先生…本当は殺人なんてしたくなかったごく普通の人だったのかも、と思わせる。
心理テストのくだりだけ、「こんなに冷静で頭のいい犯人ならここも突破できたのでは?」と思ってしまうけど、落第生のはじめが先生を追い詰めるというドラマの見せ方はイイ!!
ホラーにしか思えなかった不気味な絵が伏線として綺麗に回収されるシナリオも上手くて、後味の悪くなさも含めて、満点の傑作回だと思う。

 


第2位  飛騨からくり屋敷殺人事件
旧単行本 11巻〜12巻掲載
犯人:首狩り武者 =主犯 たつみ志乃 共犯 仙田猿彦

密室トリックとか、首狩り武者とか、なんか色々出てきたのに、結局1番残ってるのは、銃向ける龍之介止めたオカンの必死の形相って…。
鬱度と恐怖度がトップクラスのからくり屋敷、自分は大好物でした。

かつて自分を虐げた女の顔をそこにみたから…血が繋がっていないとはいえ、大きくなるまで育てた息子を殺せるのだろうか、と捻れた母の愛に理解が全く及びません…!
また龍之介が全くもって好感度の低い奴なのよね。むしろこっちが先妻に似てて嫌いになりそうなもんだけどなあ。

殺人を厭わない実の息子の性が、犯人自らに跳ね返ってくることになる因果がまたキョレーツ。そもそも〝当主を征丸に〟と遺言をのこした先代も何か勘付いてたんじゃない!?と想像するとまた暗澹としたものが込み上がってくる。

脇役だけれど、相続争いから逃れようと、わざと知的障害のあるフリをしている3男の隼人の豹変ぶりにもドキッ…!こんなまでしないと生き残れない村なんて…。どこか閉鎖的でよそ者に排他的な村の雰囲気が、横溝正史金田一の雰囲気に1番近いのかなと思う、個人的には大好きなエピソード。

 

 

第3位  異人館村殺人事件
旧単行本 2巻〜3巻収録
犯人:7人目のミイラ =小田切進(六星竜一)

金田一少年の事件簿 (2) (講談社コミックス (1895巻))

金田一少年の事件簿 (2) (講談社コミックス (1895巻))

 

もうこの回は並大抵のホラー映画より怖いといっても過言ではない恐怖度だった。
舞台は、ダビデの紋章を模した六角形に、6つの洋館が建つ不思議な村・六角村。
このヘンテコな村の外観がまず気持ち悪い。奇天烈な村人たちが怖い。嫁入り前に教会で寝るという謎すぎるしきたりも不気味。首のないウエディングドレス姿の死体の絵はホント、トラウマもん。
さらに明らかになるドス黒い村の過去が本当に酷くて…これは復讐されて当然と思ってしまう。

どのミイラも身体の一部がかけているが、実は6人の死体を7人に見せかけ、本当は1人生き延びていたのでは??
7体の人形を使って説明する金田一少年にドキドキし、ひきつけられた。
しかしこれが「占星術殺人事件」(島田荘司著)からまるごとトリックを盗用しているという騒動を大人になってから知ってガッカリ…。

占星術殺人事件 (講談社文庫)

占星術殺人事件 (講談社文庫)

 

これがなければ1位にしたいくらい…。
騒動は残念だけど、残酷な過去に引き裂かれた悲劇の恋愛ドラマとしてみても、少年漫画とは思えない濃密さがあったと思う。
お互い、好きだったのに、殺し、殺される方を選んだ2人。
脇役だけど、若葉の仇をとろうとしたスケキヨさんみたいな連城さんも、なにげに忘れられないキャラ。辛い人生の中で若葉の写真だけが彼の人生の彩りだったのだと想像すると、悲しすぎる。
復讐もの、ホラー、ラブストーリーと三本柱が上手く重なった傑作回ではないかと思う。

 

 

第4位  悲恋湖殺人事件
旧単行本 6巻〜7巻収録
犯人:ジェイソン= 遠野英治

”復讐ものにして、無差別殺人”というプロットが想像を遥か超えたもので、こちらも忘れられない回。
「集まった全員に何か共通点があるのでは?」とじわじわその謎が明かされていくのがスリリングで面白かった。
自分の恋人の死に関わったと思われる人間のイニシャルしかわからない。なら同じイニシャルの人間を全員集めて殺してやる…。この発想に至る犯人はかなりヤバいし、遠野は金田一の中でも凶悪犯の1人だと思う。
また沈没事故にあって女の子を見捨てなければいけなかったおじさんがとても善い人なのが辛い。船会社とか訴えて呼びかけた方がよっぽど良かったんじゃ…。
「お前は大馬鹿野郎だよ!!」と金田一にいわれて当然の遠野だけど、ラストのオチをみて、選択肢の全くない、どこまでも行き場のない奴だったんだなあ、と幕引きも絶妙だった。

 

しかしその後……悲恋湖に散ったと思われた遠野らしき人物が、黒死蝶事件(22〜23巻)に登場したのにはまたビックリ。

 しかも新しい人生をしっかり掴んで幸せそうなラストに…。
「遠野英治は悲恋湖で死んだんだよ。」「これでいいんだよ。」by金田一
記憶無くしたら殺人罪ノーカンでいいのか!?もし記憶戻ったらどーなるんだ!?と考えると自分はどうしてもモヤモヤしてしまった。後続の展開は残念~!!

 


第5位 学園七不思議殺人事件
旧単行本 4巻〜5巻収録
犯人:放課後の魔術師= 的場勇一郎

金田一少年の事件簿 (5) (講談社コミックス (1960巻))

金田一少年の事件簿 (5) (講談社コミックス (1960巻))

 

この白骨の前でもう一度言ってみろ!「自分は無実だ」と!!
いつものエグい金田一少年の追い詰め方が最高にキマっていた回。
壁に埋まった死体のコマのインパクトは強烈で本当に怖かった。

大人しそうな的場先生。組織の一端だった気の弱い人間が「隠す」ためだけに義務感に駆られて人を殺してきたというのは、ある意味一番リアルで怖い事件のように思う。

あとミス研の人たちもなんかみんな気持ち悪かったなあ。学校の校舎の不気味さが絵から伝わってきて、「大鏡を置いて別の部屋と錯覚させた」という密室トリックも、数多登場する他のトリックより、分かりやすくて自分は好きだった。

あれだけ無実の人を殺して、自分は死にたくないって断末魔がまた最悪で、全編通して恐怖度が高かった。

 

 

 

ベスト5漏れの印象的なキャラ&事件

以下、さらなる蛇足ですが、個人的に印象が強い準レギュラーキャラを数人挙げつつ、ベスト5から漏れてしまった事件についても少し語ってみたい。

 

速水玲香
恐怖度はいまいちだったけれど、玲香ちゃん主役回の「タロット山荘殺人事件」も結構好きだった回。

刑事コロンボ的な「犯人あたまから分かってる路線」で来るかと思いきや、「その犯人を操る存在が現れる」という展開が面白かった。真犯人、改めてみたら計画殺人じゃないのに、色々頑張ぎ…!そしてはじめちゃんマクガイバーすぎるやろ…!

しかしこの回で明らかになった玲香ちゃんの生い立ちには絶句。主人公好きになっちゃうアイドル属性のご都合ヒロインじゃなかったの?重い、重いよ〜!!

26巻でまた誘拐事件にあってトラウマほじくり返されて、自分のマネージャーが2代続けて殺人犯と判明…って怖すぎて芸能界やめるわ…。
それでも明るく前向きな玲香ちゃんのメンタルがすごすぎる…!

 

●佐木竜二
異人館ホテル殺人事件にて、準レギュラーキャラだと思っていた竜太が殺されて唖然。
そしてたった3巻ほどの間しかあけず、まるでドッペルゲンガーの弟・竜二がサラッと登場して更に唖然。

2代目竜二の初登場回は金田一少年の殺人。
仲間みんなが金田一を助ける…!というプロットで、オールスターキャストにしたいから出した??のかもしれないけど、大人になってから読むと「ビデオカメラ要員めっちゃ便利だったのに殺しちゃったわ、復活させねば。」という作者側の都合としか思えない。
あちこちカメラ撮りまくってるって、犯人からしたら、めっちゃイヤな存在だよなあ。
異人館ホテル殺人事件では、はじめが真実を告げることで最後に犯人がどん底に落ちるラストも強烈だった。結果佐木(兄)の死が犯人の暗すぎる過去でかすんじゃって…でもこの回も鬱度ではトップクラスのように思う、個人的に好きな回。

 

 

高遠遥一 (地獄の傀儡師)

20巻近くなったところで、名探偵の宿敵キャラが登場、それが凄腕マジシャンという展開にワクワクした、「魔術列車殺人事件」。

金田一少年の事件簿 (20) (講談社コミックス (2304巻))

金田一少年の事件簿 (20) (講談社コミックス (2304巻))

 

でも読み返すと「事件を解決しそうな探偵を事前に殺そうとしたけど結果失敗した」というところにモヤモヤしてしまうのよね。
殺し屋としてはアカンし、その後の高遠が正々堂々謎解き勝負しかけたい雰囲気なのに、初回はキャラが確立してないような気が…。(みんなそんなもんかー)

でもラストの、お母さんが、息子が手を下さなくても裁きを準備してた…という締め方は、大好きでした。

 

堂本剛版のドラマをまったく観てなかった自分だけど、その後単発ドラマで放映された松潤主演の「魔術列車」実写版を視聴。
そこで出てきた、全然カッコよくない&細くない高遠に驚愕…!!違う、こんなの高遠じゃない…と絶叫した記憶が(笑)。

もうちょいイケメン連れてきて…!と思ってたら、成宮くんという大当たりがきたのに、うーん、まさか本当に事件になってしまうとは…。

高遠は”豹変ぶり”に魅せられて、キャラとしては好きだったんだけど、この20巻あたりから絵がかなり綺麗になって、恐怖度もどんどん落ちて行って…と…12巻くらいまでの怖い、暗ーい金田一少年がツボだった自分としては複雑な気持ち。

 ↑↑とか文句いいつつ、これだけ買っちゃったよ、アハハ。

 

 

犯人たちの事件簿は、1巻のお試し版をWebで読んだら意外に面白くて、買ってしまったんですが、「27巻までの金田一は犯人とか、トリックのネタとか、年月がたってもかなり憶えているものだなあ」としみじみ。

回によって当たりハズレある気がしますが、本編のシリアスさと切り離して自分は懐かしみながら笑えて楽しめました。

↑↑ノリが完全にカイジのスピンオフと一緒だけど、同じ講談社だからいいのか!?表紙も自分は旧単行本の方の印象が抜群に強いし、そこをトレースしてくれているのも嬉しい。

 

最新刊7巻からはファイルシリーズの犯人が登場のようで、「うーん、こっから記憶が薄いんだよなあ」と読むのを迷っているところ。

自分の中では27巻で完結…!といっても過言ではない、初期金田一少年のファンですが、久々に読んでも色褪せない名作でした。