どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「未来惑星ザルドス」4Kデジタルリマスター版を観てきました

SFカルトとして名高い74年ジョン・ブアマン監督作が今秋4Kリマスターとなって全国順次公開。

この監督の作品は「脱出」「エクソシスト2」しか観ていなくて高尚なイメージがあったのですが、直球シンプルなストーリーで素直に楽しめました。

2293年、戦争と環境汚染により地球は荒廃。

人類はボルテックスと呼ばれる理想郷に住むエリートたちと、彼らに支配されるブルータルス(獣人)の2つに分かれていました。

エリートたちは獣人たちにザルドスという恐ろしい猿の顔の偶像を信仰させ食糧を貢がせていました。

しかしある日信仰に疑問を抱いた獣人部隊の隊長ゼッド(ショーン・コネリー)がエリートたちの楽園に潜入し大波乱が起きてしまいます…

 

不老不死を達成後、性を悪とし生殖行為もしなくなったエリートたちの社会。

チ○コのない世界に突如現れたショーン・コネリーに皆心奪われてしまいます(笑)。

赤パンツ一丁&ニーハイブーツという刺激的すぎる衣装がまた何とも堪りません。

エリートたちは不老不死ですが、皆の意にそぐわないものは「老化の刑」に処せられ強制的に数年、数十年分歳をとらされるなど不気味な描写も。

無気力な人間の溜まり場があったり、人々がクリスタルの指輪を通じて記憶や知識を分かち合っていたり…ネットなど色々時代を先読みしているようにも思えなくない、面白い世界観。

豊かさが飽和すると皆子供をつくらなくなってしまうのですね…

 

元々歪んだユートピアだったようですが、ショーン・コネリー乱入でますます人々は混乱、「やっぱり不老不死だとメンタルキツいから死にたいわー」という人が続出したり、ショーン・コネリーの魅力にノックダウンされて性を愉しもうとする女性が出てきたりします。

合理化だけを目指して何でも管理・規制しようとするとそこで失われるものはやっぱりあってそれが果たして幸福といえるのか…しかし獣人たちの世界は自由である代わりに暴に満ちていてそこで傷ついている人たちは確かに存在しています。

人間の本能か文明社会か…「脱出」も似たようなテーマだった気がしますが、自分は昔好きだった「花嫁はエイリアン」というおバカコメディを思い出してしまいました。

あの作品も宇宙人たちは生殖行為をやめて平等で平和な世界に住んでいる…しかしその代わり様々な楽しみや喜びを知らないままでいる…というストーリーでした。
 
70年代〜80年代の共産圏を意識したようなこの年代らしいSF、今の時代の閉塞感ともリンクするものがあって思った以上に入りやすいストーリーでした。

 

ラスト、野蛮でありながら知性も備えたバランス人間となったショーン・コネリーがエリート族の女性(シャーロット・ランプリング)と結ばれて子供を産み育てて死んでいく様を映して映画は終わります。

「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ」…

どこの煉獄さんだよ!!…って感じですがそんなメッセージを感じさせるラスト。

人間の生には限りがあるけど次の世代に愛や想いを遺していくことが尊い…物悲しさもありつつホッとさせられるような、余韻が残るエンディングでした。

 

シュールな映像と独特の世界観でとっつきにくい印象でしたが、力の抜けたような場面もあって、勃起テストを真面目に受けているショーン・コネリーとまさかのウェディングドレス姿に笑ってしまいました。

そして何よりベートーヴェン交響曲と共に巨大な猿の岩が現れる冒頭がカッコよくてシビれます。

真剣さと狂気感が溢れててこの年代のSFはカッコいいなあ…!!