ノーラ・エフロン監督、スティーヴ・マーティン主演の94年のコメディ映画。
全米で大コケ、最低映画と名高い1本らしいのですが…
自分は子供の頃、親がビデオを借りてきたのを一緒に観たのですが大爆笑だった記憶。
なにがそんなにウケたのか、1人だけ床を転がるほど笑っていて家族が驚いていました。
自殺を考える人の悩みを聞く〝いのちの電話〟のようなコールセンターが舞台。
世の中にはこんな仕事もあるんだーと新鮮で、設定だけでも惹きつけられるものがありました。
◇◇◇
人生相談所〝ライフセイバーズ〟はクリスマスを前に大忙し。孤独を感じる人からの電話が鳴り止みません。
中には「女を出せ!ヤらせろ!」と罵るとんでもない電話が来たり、「今話題の殺人事件が怖い」と関係ない訴えをしてくる人がいたり…
自殺するほど落ち込んでいるのか疑問に思うような相談者もいるものの、話す相手がいなくなったら本当に命を絶ってしまうのかもしれない…
「もし本当に死にたい人だったらまた電話してくるやろ」は強烈なブラックジョーク。
代表であるフィリップ(スティーヴ・マーティン)は独善的なところがありつつも口から出まかせで人を元気づけるのが上手いタイプ。
その他の従業員は、適度に図太い神経してるおばちゃんのミセス・マンチニクと、親身になりすぎて自分がメンタル病んじゃいそうなキャスリン。
寄付金頼りの事務所は全く儲かっておらず、家主から年末までに退去するように命じられてしまいます。
恋人にもフラれてドン底気分になったフィリップは事務所の大原則・「決して住所を教えてはならない」を破ってしまい、切羽詰まった相談者に個人情報を明かしてしまいます。
その後事務所にやって来たのは女装したゴツい男性のクリス。
体型を気にしているのに親戚の集まりで「シュワルツェネッガー」と揶揄われて傷心。
そこにさらに妊婦のグレイシーと恋人のフィリックスがやって来て派手に痴話喧嘩を開始。
成り行きで銃を乱射してしまい、弾丸が家主に命中して死亡。
「赤ちゃんを刑務所で産むわけにはいかない」…カップル2人は死体をツリーに埋め込み、皆でそれを外に捨てにいくことに…
〝クリスマスに人殺して死体遺棄〟を平然とやってのける恐るべきドタバタコメディ。
人を選ぶ内容だと思いますが、自分が子供の頃爆笑したのはこの死体ツリー。
ズタ袋に死体入れて接着剤で固めた人間入りのツリーをクリスマスソング歌いながら捨てに行くシーンがシュールすぎる…
相談所に集うキャラクターが皆個性的で強烈ですが、女装姿のリーヴ・シュレイバーが謎の可愛らしさ。
「私の声キッシンジャーに似てるわよね!?」…って知らんがな(笑)と思うけど、家庭にもどこにも居場所がない寂しい気持ちが切々と伝わって来る。
謎のウクレレ弾き(アダム・サンドラー)の妙ちきりんな歌で元気を出すクリスの姿にはなぜかジーンとなります。
マデリーン・カーン演じるおばちゃん従業員もいい味出してて、エレベーターに閉じ込められて玩具のカラオケセットで歌い出すも、謎にラップ上手いババアで爆笑。
妊婦役のジュリエット・ルイスは超絶問題児で、刑務所帰りの恋人に「やっぱり相手は会社員がいい」って情け容赦ない(笑)。
ある意味主人公が1番薄味なキャラクターになってしまっていて、自分を内省するエピソードなどもう少しドラマがあればもっと深みのある作品になったのでは…と惜しく思われます。
ラストには殺した家主が実は懸賞金のかかったシリアル・キラーだったことが判明。
思わぬ大金を得て事務所も救われるという予定調和すぎるハッピーエンド。
ジュリエット・ルイスの妊婦が「破水よ!」と言った数分後に赤ん坊を抱いている驚異のスピードに閉口するも、愛と赦しのクリスマス映画として無理矢理着陸。
それにしても医療費が高いから獣医に診てもらうってアメリカおっかさなすぎる…
ベッタベタのクリスマスソングがてんこ盛り。カリフォルニアのビーチサイドの街のイルミネーション、なぜかディナーはテイクアウトの中華…と不思議なクリスマス気分が味わえます。
自殺しようとしている男を目の前にして主人公がラストに繰り出すスピーチ…「クリスマスは自分の持っていないものに打ちのめされて落ち込むこともある」は名言。
スベってるところもあるし不謹慎な笑いも多いしで独特の雰囲気。バッサリ好みが分かれる作品だと思いますが、自分はこの作品の空気感好き。
なぜだかお気に入りのクリスマスムービーなのでした。