どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「リトル・ロマンス」…お別れは悲しいけど思い出はいつまでも

13歳の少年少女の瑞々しい初恋を描いた秀作。・・・静かで単調な映画かと思いきやすっごく面白かったです。

子供の頃家族が勧めてみせてくれて、そのときは何となく雰囲気で楽しんでましたが、大人になってから観ると、より良さが胸に沁みるような1本でした。

リトル・ロマンス [DVD]

リトル・ロマンス [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2003/05/09
  • メディア: DVD
 

監督は「スティング」、「明日に向かって撃て!」のジョージ・ロイ・ヒル

1979年のアカデミー賞、作曲賞/ジョルジュ・ドルリュー受賞。

 

お話は…パリに住むフランス人の男の子と、お父さんの仕事の都合でパリに来たアメリカ人の女の子の恋を描く。本当にそれだけなんですが、2人のキャラクターがとてもいいです。

男の子のダニエル(テロニアス・べアール)は、大の映画好き。

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お母さんはいなくて、タクシードライバーのお父さんとアパートで2人暮らし。お父さんは悪い人ではなさそうだけど、少年の方がどこか大人びていて、子供の理解者ではなさそうです。


そして女の子のローレン(ダイアン・レイン)。

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当時14歳。めちゃくちゃ超可愛い!!

お嬢様な彼女も、家庭に居場所がなさそう。母親は3回結婚していて、その上さらに浮気を繰り返すのか、若い男と娘の前でイチャイチャ。娘の自主性なんぞは一切省みない。

どこか孤独を抱えた少年と少女…でも本や映画を心の拠り所にして、明るくまっすぐ生きてる2人が愛らしいです。

 

そしてこの2人、神童(ギフテッド)でもあるんですね。

同年代の子とは話が合わない、そんな2人がたまたま出会って、あげく哲学書の話とかし始めて意気投合しちゃう。

どうながはパッパラパーでハイデッガーも知らぬ存ぜぬですが、なんかこう「気の合う人に会えた!」「話が合う人に会えた!」という喜びだけはなんか分かります。

 

13歳という年齢。性的な興味とか、大人びたい一心で無理に背伸びするとか…そんな理由で付き合う子供たちもいそうな気がするんですが、この2人はすごくいい子で、ただただ心を通わせるというピュアな恋に、心が清められるようです。

 

しかしローレンは義父の決断でまもなくアメリカに帰ることに。

ヴェネツィアのため息橋で夕暮れ時にキスした2人は永遠に結ばれる”…という伝説をきいたローレンは、「私をベニスへ連れてって!」とダニエルにせがみます。


子供だけの家出というドキドキ感。パリ(ヴェルサイユ宮殿ルーブル)→イタリア(ヴェローナヴェネツィア)のロケーションも贅沢で、旅をしたような気持ちにさせてくれます。

 

さらに2人の旅に協力してくれるお爺ちゃん、ローレンス・オリヴィエ演じる英国紳士・ジュリアンとの掛け合いが面白くてたまらない。

当時72歳のサー。この3年前には「マラソンマン」で元ナチのとんでもない怖いじいさんを演じてたのに、とても同一人物にみえません…!

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自転車漕いでる場面はこっちもハアハアしてしまいますね…。

ちょっと間の抜けた癒し系お爺ちゃんかと思いきや、実はなかなかの曲者で、道中ローレンが信じた伝説が偽りだったことが分かってしまいます。

おとぎ話も信じれば本物になる…ジュリアンからすれば、成就しなかった自分の恋を託す、自分の過ちゆえに失った恋人への贖罪のような気持ちも感じて、「老人が若者に夢を託す」ストーリーが感動的です。

 

そして…夢を叶えた2人ですが、ラストにはお別れがやってきます。

「毎日手紙を書くわ。」「変わりたくない。」

…なんて言ってますが、遠く離れた距離、これから山程の出会いがあるだろう歳の2人が、変わらぬ関係を保つことは、難しいことのような気がします。

やはりラストは別離、2人が大人になって結婚するようなことは絶対ないんだろうなあ、と自分は思います。

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ヴェネツィアも水に沈みゆく街…と変わりゆく場所。

そして別れのシーンを観ると、女の子のローレンの方がより大人なのかなあ、と思う。

ベニスに行きたかったのも、伝説を100%信じてたわけではなくて、お別れになるから最後の思い出をつくりたいとどこかで意識しつつの願いだったのかなあ、なんて。

 

男の子のダニエルの方は、変わらないでいてくれという言葉がより真に迫る感じがします。

ダニエルって改めてみるとちょっとメンドくさそうな男なんですね。嫉妬深いし、彼女へのプレゼントに自分の趣味のモノを送ってしまうし…。このあと秒速五センチメートルにならないといいな(笑)。

 

最後にジュリアンを抱きしめて、ダニエルを振り切るローレン。迎える彼女の家族が出だしから変化を経ていることを考えると、結局は彼女の成長の物語だったのかなーなんて思いますね。

 

そして繰り返しになってしまいますが、本当にこの映画のダイアン・レインの可愛らしさといったらない!!

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ライトブルーのブラウス、赤チェックのスカートにハイソックス、ファッションもたまらん!!ってあやしいオジサンみたいな目線になってる!?

まさかのセクシー路線な美人へと変貌、以降お年を召してもずっと綺麗でしたが、ローレンの、少女の顔に時折みせる大人びた表情にドキッとさせられます。


ダニエルが映画好きということもあって、本作ではたくさんの映画が登場するのも見所ですが、気になったのは映画館のバックヤードでデート鑑賞して、大ひんしゅくを買ってしまった謎の成人指定映画。 (映像自体はでないしフェイク作品かな)

和の雰囲気の音楽が流れてる気もして、もしかして「愛のコリーダ」(←未見)でしょうか。

美術館で裸体像をみるシーンといい、「性の知識が全くないわけではないけど、まだよく分かってない」微妙な感じを、何気ない場面で上手く描いているなあと思いました。

 

…疎遠になった友人、もう会わない思い出の人が、年とともに増えてしまう…

でももう会えない人でも、自分の中で会えてよかったと思える人がいることは、それだけで幸せなことなのかなあと思います。

 

ダニエルとローレンの2人がまた再会するかは分からないけど、ヴェネツィアでゴンドラに乗った思い出が、一生懸命自分ののぞみを叶えたという思い出が、生きていく中の活力になって、いい未来を歩んでいてほしい。切ないけれど明るい気持ちになれるラストでした。


色褪せない名作…!!