なんかスゴイ流行っている…というのは知っていたのですが、完全にスルーしてた「鬼滅の刃」。
今月初めには19巻が発売とのことで、最新刊まで一気に読んでみたら、なかなか面白かった…!
↑↑2016年から週刊少年ジャンプに掲載。著者は本作が連載初作品の吾峠呼世晴。
少年漫画をたくさん読んでるわけでもないし、最近の流行りも全く知らないし…なんですが、この作品が、今の子供達が読む少年漫画なんだと考えると、結構残酷なところもあるなあ、でも自分が昔読んでた少年漫画もそんなもんだったかなあと、色々思いが湧いてきました。
アニメはほぼ未視聴、本誌未読の単行本のみ読みたてな完全な新参者状態。
どのキャラがどうなるとかそういうネタバレはないけど、内容に触れつつ、軽く感想を書いてみたいと思います。
目新しさはないけど、主人公が魅力的
「鬼滅の刃」の舞台は大正時代。主人公が、人間を喰らう「鬼」と呼ばれる敵と戦いながら、鬼と化した妹を人間に戻す方法を探す…という物語です。
一見独特の世界観がありそうなものの、
・異形のものとなった妹を助けるという展開は「鋼の錬金術師」を思わせる。
・鬼を倒す組織に入隊し、チームで戦うという展開は「クレイモア」にどこか似ている。
・独自の呼吸法によって強化し、戦うバトル要素には「ジョジョ」2部、各剣士に属性がある所は「HUNTER×HUNTER」などが思い浮かぶ。
…と、お話的に斬新…!という感じは正直全くなかったです。
しかしなぜ自分が「鬼滅」を面白く読めたのかというと、まずは少年漫画なのに結構残酷!?なところかなあ、と思いました。
本作で登場する鬼は子供が読むと結構グロテスクな造形をしていて、人を食べるし、人が死んでいる描写もしっかりとある。
そのおかげでバトルには悲壮感もあって、「仲間の誰かが死ぬかもしれない」という緊張感がしっかりとある。
10巻あたりのバトルは個人的に「GANTZ」大阪編がよぎりました。いやGANTZ大阪編よりもっとすっきりしててあんなに怖くはないけど、「なかなか倒せないけど、どーなんのこれ!?」みたいな絶望感がいい具合に出ててドキドキしながら読めました。
死んだ奴が生きてた的な展開も皆無で、死んだ人間は死ぬ。
敵味方ともに死が丁寧に描かれているところがとても良かったです。
そしてもう1つ魅力を感じたところは、主人公が物凄くいい奴だということ。
体育会系の熱血主人公や、揺るぎないを信念持った孤高の主人公系タイプではなく、鬼滅の炭治郎は、礼儀正しく、優しい、心穏やかな人間です。
物語の中で成長する主人公というよりも、もう1巻の冒頭から「家族のために働く長男」でその人間性が完成されています。
ルフィやゴンさんにはあまり感情移入できませんが、個人的にこの主人公は心から応援したくなるタイプでした。
正義感を振りかざす作品が多々ある中、炭次郎はもっと道徳観に基づいているというか、「正しい」「正しくない」よりも、当たり前に善いことを行動に移していく人間という感じがして、みていて癒される、新鮮な主人公でした。
悪人は地獄へ行くという世界観
本作の敵、鬼と呼ばれる存在も、元々は人間で、人間らしさを残していたり、哀しい過去を持っていたりします。これも少年漫画あるある。
人情もの的な過去話が展開され、自分も同じ立場におかれたら悪い方に転ぶだろう…と思わせる、敵側にも魅力がありますし、心優しい主人公がこの鬼にも心を寄せる場面にうるっときます。
しかし!!
決して戦った鬼と和解したり、仲間になったりとかそういう展開はない。同情しても「ゆるしはしない」と言う。
どんな言い分があろうと、人を殺してきたこと、鬼が無実の人間を食らってきたことは絶対に許されないことだと。この辺りもなんか道徳観の強い作品だなあと感じました。
またある種の死生観があるのも、この作品の特徴で、「地獄に行く」という言葉や、死ぬ前に見る走馬灯、〝死後の世界〟を思わせる描写が出てくるのも印象的です。
「この世界には天国も地獄も存在しない。」…自分は碌でもない奴な童磨と全くおんなじ考えだわーと思ってしまったけれど(笑)、「悪は地獄へ」という考えもどこか教訓的です。
自分が子供の頃夢中で読んだ漫画といえば「幽遊白書」なのですが、戸愚呂弟が自ら望んで最も厳しい地獄に行く…という話は、子供ながら強烈に心に残っています。
少年漫画は小中学生が読むものだし、こういう死生観は子供の心に訴えるものとしては、すごくいいんじゃないかなあなんて思いながら読みました。
厳しい自己犠牲の是か非
キャラ同士の掛け合いは明るく、楽しいパートもたくさんありましたが、なんというか、全体的にすごーくまじめな感じがする漫画です。
「自分が成し得なくても、誰かがそれを引き継いでくれる、そのために頑張る」…炭治郎という主人公が、鬼滅隊という組織が、他者貢献のために努力を惜しまない、というところが強調されています。
最近の流行りものを追いかけられていないのであまり語れないけど、例えば「天気の子」は、自己犠牲的な精神を超えて、自分の幸せをとる選択があることを明示した作品だったのかと思います。
また同じ少年漫画でも例えば「ワンピース」なんかは自分の夢を追うという明るさを感じる。
でも今鬼滅が流行っているのは、こういう古めかしい!?価値観に良さを感じる、そこに感動できる人がたくさんいる…ということなんですかね。
報われなくてもとにかく今を頑張れ!!誰かに、若い世代にそれを託せ!!
いい歳した人間が読むと、なかなか厳しいこといってんなーって思ってしまうけど(笑)、友情・努力・勝利の少年漫画の典型でもあって、「ダイの大冒険」だったり、「からくりサーカス」だったり、誰かが悪しきものを滅するために犠牲になり、託す場面に確かな感動がありました。
厳しい世界での純粋な努力と他者への貢献を否定しない物語。鬼滅はそういう少年漫画の気骨を受け継ぐという点で、王道な作品で、そこにある種の癒しがある作品なのかと思います。
気になる続きとアニメについて
現在19巻まで…緻密な設定を回収していくタイプの作品というよりは、「完全に勢いで突き進む」タイプの作品だと思います。でも出し惜しみなく強敵がポンポン出てきて、テンポがいいのは嬉しいです。
最新刊の状況は、例えるならもうヴァニラ・アイス戦あたりまで来ていて、きっと今頃本誌はvsディオ戦にまで入っているはず…。
引き伸ばしなど全く感じさせずここまで来てるので、決戦はうやむやにせずもう完結しちゃっていいよ、なんて思っちゃいますが、集英社がこんな稼ぎ頭を完結させるのかどうかはかなり疑問…。
ジョジョみたいに1部2部みたいな構成にするのでは!?と憶測されている方もいるみたいで、なるほど~そうすると「誰かが受け継ぐ」という話の骨子も生かせるし、鬼滅隊結成のストーリーをエピソード1みたいにしてもいいし…と上手く話をまとめつつ、続けて展開してくれる道に期待です。
また人気の火付け役となったというアニメに手を伸ばして、3話までみてみました。
アニメは、
・Fateシリーズでおなじみのufotableが制作、音楽は梶浦由記と椎名豪。
・現在全26話の放映が終了し単行本の6巻まで。今年続きが劇場版になる予定。
26話を6巻までというのは超スローペースで、数話見ただけの自分でも、びっくりするくらい丁寧に、ゆっくり描いているのに驚きました。
作画はもうめちゃくちゃ綺麗。
正直この作品に、技の設定とか能力バトル的な魅力を感じなかったのですが、アニメでみた方がここはずっと良かったです。
自分は鬼滅、正直6巻超えたあたりからエンジンがかかったように、面白かった。
アニメはまだ「いいところ」をやってないんだなあと、それでもすごい人気出たんだなあと、自分も相当遅れて今読んだところだけど、これからまだまだフィーバーきそうな感じがします。
久々に読んだザ・少年漫画。結構残酷なとこもあるけど、これが少年漫画かー、と何だかしみじみとなってしまいましたが、面白かったので、アニメも漫画も、ゆっくり追ってみたいと思います。