どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「キャンディマン」(1992)…蜂まみれの変態プレイの世界

原作は「ヘルレイザー」のクライヴ・バーカー、監督は「ペーパーハウス霊少女」のバーナード・ローズとイギリス人コンビが送る雰囲気たっぷりの名作ホラー。

ジョーダン・ピール製作のリメイク版が近々公開されるらしくオリジナルの方を久々に観なおしてみました。

"キャンディマン"と鏡に向かってその名前を5回唱えるとカギの手でその身体はズタズタに引き裂かれる…
黒人居住区にまつわる都市伝説を研究していた大学院生・ヘレンは迂闊にもその名を口にしてしまうが…

口裂け女やら「学校の怪談」が流行っていた世代としては似たようなのが海外にもあるんだなーと親近感。

でもこのキャンディマンあまり悪い奴にはみえず、元人間のその正体は19世紀に白人女性と恋に落ち地主の怒りを買って惨殺された黒人男性。

かつての恋人にそっくりなヘレンをみて「YOUも一緒に死んで都市伝説になろうよ」と勧誘してくるあたり何だか寂しがり屋さん。

名前を呼べばどんな場所にでもキッチリ現れてくれるなんてある意味一途なロマンチック野郎です。

長身にロングコート姿のトニー・トッドがやたらカッコいいので怖さという点ではイマイチな殺人鬼かもしれません。

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しかし大学院生のヘレンは既婚者の身。

登場シーンからして胡散臭い夫は妻よりもさらに若い女子大生と浮気中とかなりのクズ野郎です。

妻が警察に拘留されてる間に浮気相手を自宅に呼んで部屋の模様替えさせるってかなりの強者。

でもこの浮気カップルのクズっぷりが妙にリアルでもあります。

女の方は妻がいなくなるやいなや急に熱が冷めだす、夫の方は失って初めて「やっぱり前の妻の方がいい女だった…」とさめざめ泣きはじめる…

どうしようもない下半身Freen!男が制裁されるラストにはスッキリしてしまいます。

危険な男だけど一途なキャンディマンか、平凡だけど浮気性な夫か、ストーリーは意外にロマンス仕立てなんですね。

蜂にまみれたキャンディマンがヒロインに熱いキスをするところはとんでもない変態プレイをみせつけられている気分…
「貴方もドMの世界に来ますか??」
と誘われてるようで、こういうところは「ヘルレイザー」と似た感じがします。

結局ヘレンが男たちを見捨てて赤ちゃんを助けに行くところには妙なカタルシスがあるのでした。

 

メロドラマとともにもう一つの見所は、実際にシカゴにあった低所得者住居・カブリーニ・グリーンでロケされた映像の迫力ではないかと思います。

原作はリヴァプールが舞台で階級制度をテーマにしていたそうですが、映画の方はシカゴが舞台で黒人差別と格差社会を背景にしているようでした。

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人が住んでいるはずなのに廃墟のような物寂しい風景。マンション壁面の汚い落書き、臭いまで伝わってきそうな汚すぎるトイレ…と作品全体を覆うズーンとしたどんより感に圧倒されます。

エミリオ・エステヴェスがスラム街で追いかけっこする「ジャッジメント・ナイト」なんて作品も93年にありましたがあちらも舞台がシカゴでした。

裕福な市の中にある低所得者向け住宅が孤立しスラム街化してしまった…意外に社会派ドラマな背景が描かれています。

白人のヘレンが黒人女性とその子供を襲撃したと勘違いされ人々に追い立てられるシーンはここ数年のアメリカのニュース映像と重なるもんがあるように思えました。

リメイク版はオリジナルのこういうカラーをより強めて今風の社会派ホラーに仕立ててるんでしょうか。

リメイク版予告をみてもオリジナルのじめっとした雰囲気はなさそうでそこはガックリですが、キャンディマン役はなんとトニー・トッドが続投とのこと。

この人しかいないというハマり役でしたし、30年経っても同じ役できるのカッコええですね。

オリジナル版は改めて観てもオープニングの空撮映像&フィリップ・グラスの音楽がめちゃくちゃカッコよくてここだけでテンションが上がってしまいます。

蜂のシーンもCGじゃないからすごい、主演の2人はめちゃくちゃ身体張ってるなーと思いました。