どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「スライディング・ドア」…並行世界のラブストーリーがみせるキビしさと優しさ

おしゃれなラブ・ストーリーかと思いきやちょっとSFな作品。

主人公が〝電車に乗り遅れた世界〟と〝電車に乗れた世界〟の2つがパラレルワールドとして展開していく構成。肩肘張らず楽しめながらも、人の運命とは??となかなか思いの巡る作品にもなっています。

スライディング・ドア [DVD]

スライディング・ドア [DVD]

  • 発売日: 1999/03/20
  • メディア: DVD
 

主人公のヘレンは、ある日勤める広告会社をクビになり、失意のまま家に帰ろうとします。
一方ヘレンの彼氏のジェリーは作家志望ながらヒモ同然の生活を送り、さらにヘレンに隠れて元カノと浮気を繰り返していました。

 

冒頭…乗ろうとした地下鉄のドアがピシャリと目の前で閉まり、それに乗れた世界線(A)と、乗れなかった世界線(B)に分かれて進んで行くのですが…

 

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Aの世界線のヘレンは、早くお家に帰れたことで、彼氏の浮気現場にハチ合わせ。

仕事と恋を同時に失ってどん底に落ちますが、捨てる神あれば拾う神あり…!!

電車で隣に居合わせたジェームズと再会し、明るく誠実そうな彼といい感じに。

仕事も良縁が舞い込んで、広告の仕事を自分で立ち上げていきます。

 

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Aのヘレンは、失恋後すぐに金髪ベリーショートにしてイメチェンするので、どっちの世界線か分かりやすい♫


一方Bの世界線のヘレンは、電車に乗れず帰宅が遅れたため、彼氏の浮気に気付かないまま。2人の生活を支えるためにアルバイトを掛け持ちし、時々彼の不審な行動に疑問を感じるも、はぐらかされてばかり…。

 

どっちの世界線でも、ヒモ彼氏のジェリーはクズ(笑)。

浮気してたくせに別れた方の世界線では、未練たらたらヘレンを追いかけてくるという始末。

浮気相手の女性の方も相当意地が悪そうですが、男の方がどっちつかずだから、イライラしてしょうがないというのは分かる。なんでこんな男に執着しちゃうかなあ。  

 

2つの世界が交差して描かれるのが実にスタイリッシュで、「電車乗り遅れただけで、天国と地獄とまでは言わんけど、幸せ度がこんなに違うなんて…」と2人のヘレンを複雑な気持ちで見守るほかありません。

自分の意志で選択したものによって結果が変わるというならまだしも、自分の意志ではどうにもできないような些細なことにこうも人生が翻弄されるとは…そんな無情さをひしひしと感じてしまいます。

また〝どちらの世界でも必ず起きる出来事〟というのが度々描かれ(体調不良や妊娠)、避けられない大きな運命の流れみたいなもの、そんなものが人生にあるのかしら…と思わせたりもします。

 

ラブストーリーとしても個人的にはなかなか好きな雰囲気で、グウィネス・パルトロウ、「第2のグレース・ケリー?それはないわー」と思っていたのですが、この作品のグウィネスは、シンプルなファッションがキマっていて魅力的なモード系美人。

ちょっとネガティブで流されやすいところのある主人公というのも親近感です。

 

そんなヘレンが新しく出会ったジェームズは、モンティ・パイソンのジョークを放つユーモラスな男。

ハムナプトラ」のお兄ちゃん役を演っていたジョン・ハナー、3枚目以外の何ものでもない人が相手役というのがまた意外。

1つ秘密を抱えていて、そこに関しては「なんで早く言わんのよ!」とツッコまずにはいられず・・・家族の病気で大変なこともあるだろうに、他者に機嫌よく明るく接しているところなんかはすごく惹かれるんですが…。ベタベタだけど「一緒にいた女性は妹でした」とかの方がよかったかなーと、ここだけは残念。

 


そして、ここからはラストまでのネタバレになりますが…

 

絶好調に見えたAの世界線のヘレンはなんと交通事故に遭って死亡してしまいます。
Bの世界線のヘレンも時を同じくして階段からの転落事故に遭いますが、こちらは何とか生き残る。

 

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驚くべきことに、絶好調に見えたAの未来はデッドエンドで、絶不調なBの方が結果的に良かったというんですね。

Aの人生を思うとものすごく残酷なんですが、このストーリー見方を変えると、「今上手く行ってない」と思える人生も、トータルでみたらそれが良かったんだということもあるのかもしれないよ…厳しさと表裏一体に優しさも同時に最後にみせてくれている気もしました。

 

生き残ったBの世界線の最後…ヘレンはまたエレベーターのドアが閉まるかどうかの〝別れ道〟に遭遇し、次のエレベーターに乗ったヘレンはまたジェームズと出会う。

まさに〝運命の出会い〟。ラストカットが洒落ててなんともロマンチック…!

 

タイムトラベルものやループものにあるような「何としてでも運命を切り開いてやる!!」というあの気概溢れる雰囲気にも惹かれますが、この「スライディング・ドア」の、「人生どうにもならんこともあるけどその中で生きてる」という無情かつ少しだけ優しい世界の描き方もまたいいなーと、地味だけどすごく好きな作品です。

 

エンドロールで流れる曲、昔エミネムがカヴァーしてたっけ、Dido"Thank You"も好きでした。