チャーリー・シーンのお兄ちゃん、エミリオ・エステベス。
弟より爽やか&優しめな印象ですが、80年代~90年代の彼の出演作は意外に掘り出し物が。
この作品も地味ながら光る大好きな1本です。
冒頭は陽気な音楽が響きながらシカゴの平和そうな住宅街がゆっくりと映されていきます。
エミリオお兄ちゃん演じるフランクは、妻と生まれたばかりの娘と3人暮らし。
久しぶりに昔の地元の友達と遊びに出掛けたいと妻におねだり。「3ヶ月も外出してないのは私の方よ」と赤ちゃん抱えつつ気前よく送り出してくれる優しい妻。
しかしこの友達連中がなかなかの問題児ばかりでした。
会社経由で大嘘ついて無料で車借りてきたレイ(ジェレミー・ピヴェン)。
美人を見かけるや見境なくナンパするマイク(キューバ・グッディング・Jr.)。
地元じゃ札付きのワルと有名なフランクの弟・ジョン(スティーヴン・ドーフ)。
どうやらエミリオお兄ちゃん自身も昔はかなりのヤンチャさんだったようですが、所帯を持って丸くなったみたいです。
バブリーなサロンカーに乗る4人。
しかし飲酒運転するわ、高速横入りするわ、とエミリオお兄ちゃん以外はやりたい放題。
ホラー映画だと真っ先に殺されんぞ!と思って観てるとこの後きっちり惨劇が訪れてくれます。
ボクシング観戦に行く途中だった4人は渋滞に耐えられず、近道にとスラム街へ車を進めました。
するといきなり飛び出して来た人を轢いてしまう…!!慌てて車を降りると男は撃たれて血を流していました。
放っておくわけにはいかないと病院に届けようとした矢先、ギャングのような集団が現れ、男を目の前で射殺。
目撃者になったフランクたち4人も後を追われ、地獄の追いかけっこが幕を開けます。
本作で素晴らしいのは何と言ってもスラム街の雰囲気。
道路にはゴミと塵が舞い、建物はまるで廃墟。パトカーを呼んでも見捨てられたように来ない。
「俺たちの家から10マイル離れていない」…冒頭に出た平和な住宅街とは「パラサイト半地下の家族」並みの雲泥の差があり、闇を感じさせます。
途中電話を貸してくれとアパート住人に声をかけると…
バットと包丁を持って構えて出てくるお姉さん2人。どんなマッドマックスな世界だよ、とツッコミたくなります。
いい洋服を身につけたフランクたち4人は完全なる〝よそ者〟で、関わってはいけない土地系ホラーにも似た空気が流れています。
途中ホームレスの人たちが生活している車輌置き場に逃げ込むも、助ける代わりに金品を1つずつせびられるシーンなどは冷たい恐怖で胸がいっぱいになります。
一方アクション映画としてはドキドキハラハラの連続で気前のいいつくり。
冒頭からサロンカーは大破してしまいますが、小道に挟まった車をバリケードにしてギャングたちから逃げるシーンからしてなかなかの迫力。
逃げ込んだアパートを押さえられ、屋上から梯子で脱出する場面はハラハラ。
さらには下水道へとロケーションを変え追跡劇を展開。
追われっぱなしでたまるか!何かいい武器はないか?「あったよ!鉄の棒が!」と反撃に出る攻防戦もドキドキ。
不良じみた仲間は一向に当てにならず、世帯を持って丸くなったはずのエミリオお兄ちゃんがかつてのヤンキーな自分を思い出し敵に立ち向かっていく姿はどこか西部劇的な感じがします。
敵ギャングボス、ファーロン役はデニス・リアリー。
しつこくネチネチと追い詰めてくる90年代らしい悪役。トチ狂った男ではなく話通じそうで通じないってとこがいいです。
手下役のピーター・グリーン(ジム・キャリーの「マスク」で悪役だった人)も印象に残る顔でした。
正直敵ボスはここまでしてフランク達を追わなくても良かったんじゃと思うのですが、仲間の中で1番クズのボンボン、レイがファーロンと交渉する場面がありました。
「10万ドルやるから見逃してくれ」…和やかに話がつくかと思いきや翻ってレイを始末するファーロン。
〝持っている〟レイの「金さえあればなんでも」の不遜な態度が〝持たざる者〟を意図せず激昂させてしまった…緊迫感たっぷりの駆け引きでした。
クライマックスは男の肉弾戦、だけどロケ地は深夜のスーパー(笑)。
一見B級ながら「悪魔の追跡」や「脱出」のような孤立感を感じさせる怖さがあって、90年代アクションの朗らかさと程よくミックス!!
なかなかの良作だったと思います。