復讐するは我にあり…エロイムエッサイム…
「太陽を盗んだ男」のジュリーに惚れ惚れしたので、もう1つの主演作「魔界転生」を鑑賞。
この作品は前にも観たことがあるのですが、ジュリー以外も濃すぎる顔ぶれで目移りしてしまいます。
島原の乱で命を落とした天草四郎時貞が悪魔・ベルゼブブの力で復活!!
自分と同じく現生で無念の死を遂げた者たちを仲間に引き入れ、徳川幕府の世を転覆せんと企む。
ゲーム・アニメで有名なFateシリーズはこの「魔界転生」にインスパイアされたそうですが、歴史の有名人が復活してバトル!!っていう厨二感にワクワクが止まりません。
復活者が現生に未練のある人物というのは、漫画「ドリフターズ」の廃棄物チームがよぎります。
81年公開で監督は深作欣二。東映の特撮技術に迫力の殺陣シーンと安い映画になってないのが凄い…!
冒頭は島原の乱の戦あとから幕開け、生首がそこかしこにあって完全にホラーな雰囲気。
復活したジュリー 、実際の天草四郎はもっと少年だったんでしょうが、妖しい美しさにゾクゾクします。
「神はなぜ祈りに応えなかったのか」と怒り心頭で悪魔になっちゃう四郎様、極端やな。
自分たちを迫害した幕府を滅ぼしてやる!!とまずは仲間集めに奔走。
1人目の仲間は細川ガラシャ(佳那晃子)。
戦国大名・細川忠興の妻。キリスト教に入信してからはつましさを求めて夫に淡白に振る舞うように。
「激しいキミが好きだったのに」…嫉妬させようと浮気に走る忠興→夫好きなのに素直になれず拗らせるガラシャ
その後三成軍が来てたった1人殺されてしまうガラシャ。ホントは寂しかったのによくも見捨てたわねー!! ツンデレというかヤンデレなところがたまりません。
2人目の仲間は宮本武蔵(緒形拳)。
無敗伝説を誇る剣豪・武蔵。潔い男かと思いきや過去の女性に未練タラタラ。
さらには「そういや柳生親子と戦ってなかったなー」「オラ、もっと強え奴と戦いてえ!」と転生を決意。
緒方拳の顔のドアップ&モノローグで語られる武蔵の回想は、動きの少ない場面なのに唯ならぬ気迫を感じさせます。
3人目の仲間は宝蔵院胤舜(室田日出男)。
仏門に入っていた武闘家。
「ホントはおなごの胸が揉みたかった」…煩悩にまみれて転生を決意。
女性の着物を剥ぎ取っては乱暴という救いようのないエロ坊主と化します。
4人目の仲間は伊賀の忍者・霧丸(真田広之)。
甲賀の里からの奇襲で無念の死を遂げ転生。
霧丸だけ有名人じゃなくない?と思うけど、ジュリーとの妖しげなキスシーンがあり。きっと四郎様のお好みだったのでしょう。(BL脳)
こうしてドリームチームをつくった四郎は作物が不作になるようにと呪いをかけ、ガラシャは大奥に紛れ込み家綱公を骨抜きに…世は混沌としていきます。
そんな中異変に気付いて立ち上がったのは、剣豪・柳生十兵衛(千葉真一)。
魔物を切るのはまた魔物だと妖刀・村雨をつくった刀鍛冶(丹波哲郎)を訪れ、新たな刀を手にして立ち向かう!!
本作で圧倒的に素晴らしいのは殺陣シーン。
大きな見所の1つは巌流島の決闘を再現したような武蔵vs十兵衛の戦いです。
二刀流といわれた武蔵の剣術を再現し、風流な笛の音が鳴り響く中、波打ち際を横走りする2人が格好いい。
CGもワイヤーもなく役者さんの力量のみで撮られた迫真のチャンバラに圧倒されます。
そして最大の見せ場は柳生宗矩と十兵衛の親子バトル。
なんと幕府側だった十兵衛の父も闇堕ちして敵となっていました。
宗矩を演じるのは若山富三郎という勝新太郎のお兄さん。〝すとすとぴっちゃん〟じゃない方の「子連れ狼」で有名な方です。
身体が大きいのに動きはめちゃくちゃ素早いというとんでもない運動神経の持ち主で、大人数をバッタバッタと斬り伏せる若山富三郎のとんでもない立ち回りに目を奪われます。
十兵衛に迫る宗矩はどこか楽しそうで、彼の転生の理由は「息子と1回全力で戦ってみたかった」という身勝手すぎるものでした。
他の転生者もそうですが、歴史に名を残すような一角の人物でも死の間際には思うところがあるようで、「自分の人生になかったものを求めてしまう」のが何だか哀れにうつります。
甘い囁きで人の生き様を否定する蘇生者・四郎に十兵衛が「人の心の弱みにつけ込んで!」と怒るシーンは「鬼滅の刃」っぽいかも。
「魔界転生」の復活者たちは色欲や名誉欲に囚われての闇堕ちが多く、より脆くて人間臭い感じがするのがいいですね。
ラストは大迫力の炎に包まれてのバトル!!
合成でもCGでもなく、実際に燃えてる中で撮影したとのこと。
こんな絵よく実写で撮れたなあ、よく死人が出なかったなあとびっくりです。
裸体がポンポン出てくる映画で地上波向けではないと思いますが、漫画アニメ好きな今の若い層にもこの映画結構受けそうな気がします。
鬼滅の実写化をやるくらいなら、こちらを代わりに再上映するとかどうでしょう。
音楽もかなりいいのですが、なんとこの年末にCDが復活発売されるみたいですね。
二次元にも負けない美しさとアクションをみせる役者陣に圧倒の、今みても新鮮な時代劇でした。