ルトガー・ハウアーが近未来刑務所で大暴れ!!
紛うことなきB級作品ですがアイデア勝負な脱獄モノとしてよく出来ている1本。
ルトガー・ハウアー演じるフランクは電子工学の天才と呼ばれる男。婚約者と友人のたっての願いでダイヤ強盗に加担することになります。
しかし婚約者は友人と浮気していて2人してフランクを裏切り、たった1人捕まってしまいました。
フランクが送られた刑務所は柵もなく、看守の人数も異様に少ないという実験的な刑務所。
囚人たちは電子ロックの首輪を付けられます。
首輪は他の囚人と電子信号でリンクしていて90メートル以上離れると…
ドカン!!と爆発。めちゃくちゃ「バトルロワイヤル」っぽい。
首輪のリンク先は皆ペア同士になってると言いますが、「片割れ」が誰なのかは判別不能。
全員一斉に動いて脱獄したらどうすんのよ、と細かい設定が気になりますが、その場合は遠隔操作でドカンと行くってことでしょうか。
90メートルって結構近い気もするしザル設定が否めないけど、こういうボンクラ映画は深く考えずに観るのが1番!
囚人たちがお互いを見張り合うというシステムはそれなりに功を奏しているようで、味方だと思っていた奴が看守のタレコミ屋だった…など刑務所モノとしての面白さが序盤から存分に発揮されています。
なぜか男女一緒の生活空間で囚人同士の性行為も認められているというガバガバな刑務所。
囚人の逃げる気力を奪うという1点に注力してて経費節減してるっぽいです。
囚人たちは皆本名でなく〝色〟にちなんだコードネームで呼ばれるという厨二心をくすぐる設定も出てきますが、フランクのあだ名はマジェンタ。何だか響きがカッコいい。
仲間の裏切りで投獄されたフランクでしたが、実は捕まる直前にダイヤを別場所に隠していました。
裏切った2人は刑務所の悪徳所長とグルになり、ダイヤの居場所を吐かせようと嫌がらせが繰り返されます。
こちらは水房と呼ばれる懲罰房。
水の貼った真っ暗な棺に延々と閉じ込められるという結構酷い目に遭っています。こういういかにもB級映画なセットがいいですね。
しかし囚人同士の争いでパニックがあったある日、トレイシーという女性に先導されてフランクは脱獄することになります。
「看守と寝てあなたが〝片割れ〟って知ってたのよ」と語るなかなか豪胆な女性(ミミ・ロジャース)。
首輪を付けたままの脱獄、しかし2人は決して90メートル以上離れてはならない…制作陣がやりたかっただろう設定が半ば無理矢理スタート。
途中別々のバスに乗ってしまい一気に距離が開いたのを必死で走って追いかける…!!
高層ビルのエレベーターに1人だけ乗せられてしまい離れ離れになる2人…階段駆け降りーの、ロープでビルから落下しーの…で必死に追いかける…!!
設定を生かしたアクションが面白いです。
やがてどうしても脱獄したかったというトレイシーの過去が明らかに。
ウェイトレスだったトレイシーは裕福な議員とお付き合いしていましたが、家柄が釣り合わないという理由で彼の家族から麻薬歴をデッチあげられ無実の罪で刑務所送りになっていました。
裏切った男の結婚式をぶち壊しに行くのだというトレイシー。
なんとフランクもトレイシーも恋人から捨てられた者同士。
合わない2人が徐々に惹かれあっていく…ラブコメの波動を感じずにいられません。
しかし!!
実はトレイシーも所長と内通していて脱獄はダイヤの場所を見つけるため仕組まれたものでした。(この展開は割と読めてしまう)
フランクまた裏切られちゃうの!?切ないわーと思ってみてたら、裏切りに罪悪感を覚えたトレイシー、フランクの味方に付きます。
2人の首輪を爆発させようとした所長たちですが、さすが電子工学の天才、とっくに外しててブラフかまします。爆弾返ししてどっかーん!!にスカッとしないボンクラ人間はいないでしょう。
「どうする?もう一緒にいなくていいんだぜ。」と言いつつ抱き合う2人。
崩れた教会あとの景色も何だかロマンチックでラストはエンダァァァと叫びたくなります。
アクションにラブロマンスに脱獄モノと一粒で3度美味しい作品。
後半の雰囲気はトム・クルーズとキャメロン・ディアスの「ナイト&デイ」みたいな感じで癒されます。
ロケーションもビール醸造工場でバトルなどいかにも90年代前後のアクション映画っていう絵面がどこかノスタルジック。
ルトガー・ハウアーがハマり役かというとこれは疑問で彼の冷たい厳かな美しさは控えめです。
謎の民族衣装、変な柄のジャケット、ちょんまげ結びの髪型…となぜか驚異的にダサい格好ばかりで登場しますが、逆にレアでこれはこれでお楽しみ。
敵役の女性が「サルート・オブ・ザ・ジャガー」のジョアン・チェンでヒロインと全く違う雰囲気の女性ってところも良かったです。
囚人の中には何と若き日のダニー・トレホが…!!
B級だけど何だか満足!!ルトガー・ハウアー作品の中で意外にめっけもんな1本です。