1968年公開、リー・ヴァン・クリーフvsジュリアーノ・ジェンマという多分このジャンルでのゴジラvsキングギドラみたいな2大スターが激突した傑作。
マカロニ・ウエスタンの中には「ベテランガンマンと若いガンマンがパートナーを組む」というプロットの作品が幾つかありますが、それが師弟バトルに発展するというのが抜群に面白かったです。
暴力描写も控えめ、アクが強くなくてこのジャンルの中でもとっつきやすい作品ではないかと思いました。
娼婦の子供だと差別を受けてきた気弱な青年スコットは街にやってきた凄腕ガンマン・タルビーに惚れ込み、弟子入りを志願します。
街の人から蔑まれ自信を失っているけど、密かにガンマンに憧れ、木製銃で射撃の練習をしている…と少年漫画の主人公感あふれるスコット。
そして師匠タルビーについて“ガンマン十戒〟なるものを教わっていくのですが…これが実に小気味よく、観客もみながら凄腕ガンマンの心得を学んでるような気分にさせてくれます。
アクションも見応えたっぷりで、ジュリアーノ・ジェンマは元々スタントマン出身で、運動神経抜群だったといいますが、ジャグリングのように銃を投げキャッチしての早撃ちがカッコいい。
ろくに鞍もついてないラバを乗りこなしていたり、殴られたあとのよろめき方など身体の動きを追いかけると楽しい役者さんです。
対する師匠のリー・ヴァン・クリーフは落ち着いた物腰に歴戦の猛者感があってこれまた格好いい。
馬上決闘という珍しい対決シーンも見どころで、マズルローダーと呼ばれる銃口から弾を装填するタイプの銃を持って、お互い反対側から向き合って馬で駆け抜けいく。
揺れる馬の上でいかに冷静に弾を装填して正確に撃てるか…絵的には中世の騎士の槍試合を思わせるような決闘スタイルですが、疾走感も相まってドキドキの名場面です。
タルビーはスコットを相棒に従えて街の権力を掌握していきますが、悪事に疑問を抱いたスコットはやがて師匠と対決することに…。
ところがタルビーは実に抜け目がなく、弟子が牙を向いたときには絶対に自分に勝てないようにと、決闘に不利な銃をスコットに与えていました。
しかしそれに気付いていた街の老保安官が、スコットにドク・ホリデイの銃だというカスタム・ガンを遺していました。
抜き身しやすいように銃身を削り、撃鉄も叩かずとも流れるように連射できる改造銃!!こういうディテールをストーリーに詰めてくるところも楽しいです。
ラスト、師匠から教わったガンマン十戒を呟きながら敵を倒していくジェンマの爽快感。アニメっぽいシーンですが、好きな人間にはたまりません。
街で差別を受けてきたスコットは怒りを抱えていて、師匠とともに街を破壊する選択をすることもできたはずですが、結局最後には街の秩序を守る側につく。
苦しみながらもゆるしをとった主人公に哀愁が漂っていて、青臭い少年から憂いを帯びた大人の顔になるジェンマ、すごくいい役です。
スコットの激情を現したかのようなリズ・オルトラーニによるテーマ曲も血が沸き立つような名曲で、タランティーノの「ジャンゴ」ではジェイミー・フォックスが雪山で銃の特訓をする場面で流れていました。
雪景色なのに「殺しが静かにやって来る」じゃないのかーと思ったけど、差別に怒りを抱えた主人公、師弟モノ、新人ガンマンの特訓ってことでこのチョイスだったのかと納得!!
テストに出るわけでもないし、凄腕ガンマンを目指す予定もないけど、最後にガンマン十戒を載せておきたいと思います。
1:他人にものを頼むな。
2:決して他人を信用するな。
3:銃と標的の間に立つな。
4:拳も弾と同じだ。数え間違えば殺される。
5:傷を負わせたら殺せ。見逃せば自分が殺される。
6:危険なときほどよく狙え。
7:縄を解く前には武器を取り上げろ。
8:相手には必要な弾しか渡すな。
9:挑戦を受けなければ全て失うときがある。
10:殺しは覚えたらやめられない。
渋い男の世界って感じですね…!この十戒をきれいに伏線のように回収してくる対決には胸がアツくなります。