どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「イヴの総て」/芸能界は過酷な世界…!!

サンセット大通り」と1950年度のオスカーを争った末作品賞に輝いた名作。

舞台劇をみているような地味な作品で映画的なつくりは「サンセット〜」の方が優れているかと思われますが、粋な台詞と役者さんの演技にグイグイ引き込まれて観てしまいます…

2作品併せて観た際、単純に「好きだ」と思ったのはこちらの方でした。

アメリカ演劇界最高の賞を受賞した新人女優イヴ・ハリントン。その成功への道のりはベテラン女優マーゴたちを踏み台にしたものだった…

お話としてはよくあるのし上がり系ストーリー。

最初に「オチ」をみせてそこから長いフラッシュバックが展開する演出は「市民ケーン」を意識しているようで、今見ると目新しさはないもののこの作品には合ってると思いました。

従順な付き人だったイヴが次第に本性を表していく過程がスリリング、段々声や顔つきまで変わっていく変貌演技は「ゴッドファーザー」のマイケルのような迫力です。

こういう「大人しかった人が意外な本性をあらわす」キャラってギャップ萌えというとなんだけど心惹かれる悪役キャラ。

芸能界、実力・努力だけではどうにもならんことも多いのでしょう、虎視眈々とコネを築いてくイヴ、腹黒女には違いないけど出来るヤツです。

イヴが悪女に映るのはベティ・デイヴィス演じる大女優・マーゴが案外イジワルな人間じゃなかったというのもあるかもしれません。

イヴの過去話に同情するなど人情家で昔の友情も大事にしている…悪い人には全くみえず、気性は激しいとはいえそんなでもないとトップの女優なんて務まらなさそう。

子役上がりのベテラン女優というならもっと清濁飲み込んできててイヴになんて騙されなさそうなのにね…意外に純なマーゴもギャップ萌えキャラです。

マーゴが車の中で自分の想いを吐き出すシーン…「女は成功しても努力がいる」と語るシーンはベティ・デイヴィスの演技も圧巻で名シーンでした。

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以前みた「デブラ・ウィンガーを探して」というドキュメンタリー映画では「歳をとると女優は役自体がなくなる」と数々の有名女優が語っていました。

あのメリル・ストリープですら「〝プラダを着た悪魔〟のおかげでハリウッドのお偉いさんたちに自分はまだ使える存在だと認めてもらえた」なんて語ってましたし、こういう芸能の世界ってめちゃくちゃキビしい世界なんだなー、と思います。まして50年代となればそれはもう…

ただ「イヴの総て」は演劇界の話なのでハリウッドとはまた違う世界が垣間みえる部分もあるように思われました。

「40歳の女優が20歳の役をやり続ける」…今はどうか知らないけど昔の演劇界ってこんなイメージ、1人ハマった俳優さんが出たらなかなか下に役がまわっていかないっていうのがこういう舞台業界のあるあるなのかなーと思いました。

そうすると実力のある若いイヴに世代交代したのはハッピーエンドな展開なのかも…
次々に新しいものに鞍替えしていくハリウッドとはまた対照的に伝統を大事にする演劇界の閉鎖的な空気も感じられました。

しかし…!!あれだけ舞台上の喝采を神聖視していたようなイヴがあっさりとハリウッド進出宣言をするのがまた意外…!!

マーゴは演劇界に愛のある人間だったけど、イヴは自己顕示欲の塊で富や名声を際限なく求め続けていく…

ラストシーン、第2のイヴが現れ、かつてのイヴのように喝采を夢みるエンディングがやっぱり超名シーン。

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鏡で表現された無限に現れる夢を追う少女たち…諸行無常の無限ループ、メリーバッドエンドって感じのこのラストが圧巻でした。

今回DVDの特典をみて初めて知ったのですが公開当時には評論家の間で「イヴはレズビアンという説が囁かれていたそうです。

女友達と親密そうに階段を上がっていくシーンが意味深に映ったというのと、ラストシーンで家に上がった女子高生をすんなり迎え入れてしまうところもアヤしいと思われたみたい…
最後のシーンは成功を掴んだらとたん寂しくなったりして懐に入られてしまうものなのかなと思って納得してみてましたが…

まあでもこういうスターや大女優って言われる人って人に理解されない何かを抱えていたり人から認められたい気持ちを人一倍持っている人が多いんじゃないかなあ、そういう人が心の空白埋めるようにすごい演技したりするもんなのかなあと思いました。

ヨレヨレコート→清楚服→マーゴの模倣→キラキラドレス…とスターの階段駆け上がっていく様をみせてくれる衣装も秀逸。

138分とやや長めで映画というより舞台っぽい好みの分かれそうな作品ですが、役者さんの演技と細やかな人物描写でみせてくる名作でした。