2021年4月から放送されていたアニメ「86」(エイティシックス)全11話をイッキ見しました。
ラノベ原作の本作、影響を受けた作品が「スクリーマーズ」と「ミスト」らしいということで気になっていたのですが、ストライクゾーンに入りまくりのすごく好きな作品でした。
サンマグノリア共和国は隣国ギアーデ帝国の侵略を受けるが、その攻撃は完全無人戦闘機・レギオンによるものだった。
しかしレギオンは開発国のギアーデ側をも無差別に攻撃し彼らは壊滅。
残った共和国は所定の地域以外を見捨てて壁をつくり、有色人種にのみ兵役を課し壁外に住まわせ機械と戦わせることにした…
機械に高性能な機能を搭載したことが仇となり人類の敵となるというプロットは確かに「スクリーマーズ」(ディック原作の変種第2号)と似ています。
人の居住地が1区〜86区と番号付けされていて上にいくほど特権階級という設定もいかにもディストピアらしい設定。
さらに今作で面白かったのはダブル主人公制で、
・1区に住むエリート軍人のレーナ
・86区に住む最前線で戦う兵士シン
の2人が離れたところから共に戦うというストーリー。
レーナの方はオペレーター/作戦の指揮官という役割ですが、「ダイハード」のマクレーンと黒人警官のようなお互い顔も本名も知らないような関係性からスタート。
そして「現場にいないあんたは気楽でいいですね」的な「新幹線大爆破」の宇津井健と千葉真一のような会話もチーム内で発生…なんか例えがおじさんしか出てきませんが、離れた場所から遣り取りしあうドラマってそれだけでなんか盛り上がってきます。
安全なところにいて声高に理想論を語るレーナちゃんは途中うざったくみえてシンの部隊から邪険にされたりもします。
けれど彼女のそういうイタさが現場にいる者にしか分からない戦いの悲惨さ、当事者とそうでないものとで見てる景色が全く違うという現実を強調していると思いました。
反対にシンの方はガンダムSEEDが頭をよぎる名前とキャラデザにもかかわらずめちゃくちゃ出来た寡黙な兵士。イライラ度ゼロという驚きの主人公でした。
ロボットものとしては86たちが乗るロボは全く有能ロボしてなくてむしろ戦車っぽい仕様。
機動力はあるけど装甲は薄いというところが使い捨て兵士感漂っていて絶望感しかなかったです。
敵の機械軍団・レギオンはいくつかタイプがいるようでしたがとにかく数が多いというのが何より恐ろしい、「マヴラヴ」が思い出される嫌な敵でした。
戦闘シーン以外は作画枚数がそう多くないアニメに思えましたが、ドラマパートの構成・演出が秀逸で不足を全く感じさせませんでした。
シンたち86サイドとレーナサイドと…全く同じ場面をそれぞれの視点から2回繰り返してみせることが度々、「あーこのときこっちはこんな景色だったんだなー」とその差が切なかったです。そのほか、
・豪華な戦没者墓地をバックに話すレーナと墓も残らないシンたち
・線香花火と砲撃で散る仲間たち
・なんてことない間のつなぎにみえつつ不穏な未来を映し出すトランプのやりとり
対比や想起させるイメージの見せ方が上手く、時系列を交差させた各エピソードの組み立ても凝っていて鼻につくことなくカッコよかった。毎回流れるED音楽もすごく合っていました。
1クールで完結していない作品で2クール目が10月から放送予定のことですが…
↓こっからネタバレ
どうあがいても絶望の中行けるとこまで行ってやる…この辺が「ミスト」要素なのかなあと思いつつ見守ることしばらく…
シン主人公じゃなかったのかよ!!とまさかのエンディングにポカーン。こんなところで終わって放置するなんてなんというドSアニメなんでしょう。
設定諸々、短期間で国の状況がこんなになるかなあとか通してみて疑問に思うところもあったけど、レギオンのバッテリーが2年で切れる予定&だから迫害した民族を使い潰すっていう設定もよく出来てると思いました。
3話でカイエが亡くなったあとスピアヘッド隊の皆さんがかなり普通に過ごしてるのが怖かったですが、仲間の死にとことん慣れた異常な状態がよく出ていました。86内でも差別があったしアルバにもいい人はいたから…ってあんな決断に至れるのがすごい。達観視したメンバーに余計に悲壮感感じました。
レーナちゃんのドラマ的には11話で話の区切りがついていてここで完結でもよかったという完成度。でもこれだけ練られた設定があるならまだまだ続きますよね…メカ作った方のギアーデの方も実は全滅してないんじゃないかとか、あとアンジュさんの背中はなんだったんだろうとか気になるところはたくさんあります。
世のアニメはなろう全盛時代??それと真逆のかなり暗いトーンでしたが個人的にはすごく好きな作品でした。
続きが気になるし原作も読んでみたいと思ったけどとりあえず二期をみてから考えようかな…秋までアニメの方を待ちたいと思います。