どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ロンゲスト・ヤード」…囚人vs看守、クールなアメフト試合に心が燃える…!

バート・レイノルズ主演、ロバート・アルドリッチ監督の1974年公開作品。

アメフトのルールとか全く知らないで観たのですが、刑務所モノ+スポーツものというだけで、めちゃくちゃ面白く、夢中になった1本です。

ロンゲスト・ヤード [DVD]

ロンゲスト・ヤード [DVD]

  • 発売日: 2004/11/26
  • メディア: DVD
 

 

かつてプロのアメフト選手でクォーターバックだったポール・クルーは、八百長疑惑によりチームを追放され、その後には問題行動を起こして実刑判決を受けることに。

収容先の刑務所では、看守たちがアメフトチームを組み、セミプロ1位獲得に執念を燃やしていました。

ある日クルーは所長から、看守たちのチームの練習相手になるよう、〝負けチーム〟となること前提で、囚人たちのアメフトチームをつくるように命令されるのですが…。

 


◆〝良くも〟〝悪くも〟描かれない囚人

囚人=看守にいじめられる可哀想な人たち…みたいな見せ方を微塵もしておらず、ヒューマンドラマっぽく仕立てていないところがいいなあと思います。

看守たちは嫌な奴ではあって、強制労働、差別、嫌がらせをしてる腹の立つ連中なんだけど、一方の囚人たちは確かに犯罪者であって、ヤバい奴もいっぱい。

それをドライなタッチでみせてくれて、変に良く見せようとしないからこそ、キャラクターたちを好きになれる気がします。 

フットボールをやったことは?」
「少しなら。」
「どこで?」
オクラホマ州立。」
「大学か。」
「刑務所だ。」

アメリカンジョーーーク!!なのか分からんけど、なんか笑ってしまう。

いい加減でバラバラの烏合の衆みたいなのが、〝アメフト試合で日頃の鬱憤を晴らす〟というたった1つの目的のために団結する。そこに胸が高鳴ります。


主人公のバート・レイノルズだけは、葛藤を抱えていますが…

元はフットボールなんてどうでもよかった(=病気の父親を助けたかった)と語る場面もあったけど、冒頭のシーンでは、テレビで試合をみてたってことなんですよね。ほんとは好きだったのに…口には出さないけど未練はある…。

 

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どしっと構えたアウトローのようでいて、器用に人生描けない、内に怒りを抱えた人間。

腹の立つことを飲み込まなきゃいけないときもあるけど、飲み込んでたまるか!!なときもある…見た目に反して意外と!?サラリーマンタイプな主人公だからこそ共感しやすいのではないかと思います。

 

 

◆分かりやすさのない迫力の試合

メンバーを集め、学び、練習し、仲間を失い(ツライ)、最初で最後の試合が開幕。

・チアガールの演奏以外、音楽がない。
・ルールの説明もないし、会話も少ない。
・途中スプリットスクリーンを交えながら目まぐるしくカットが変わるが、ひきの画も多い。

 

「誰が今得点した?」「怪我したの誰よ!?」と、分かりにくかったりするんですが、逆に喰らいつくのに必死になっちゃう。

アメフト試合観に行ったらこんな感じなのかなあ、テレビで見るみたいにわかりやすくテロップとか流れんよね、という臨場感にエキサイトします。

 

ルールはよく分かんないけど、ボール持って敵陣進んでゴールすればいいんだよね?というアバウトすぎる認識で自分は楽しく観れました(笑)。

セミプロの看守たちでさえ、「ドロップキックだとお?」とか言ってるし、アメフト知らなくても楽しめる映画なんじゃないでしょうか。

 

味方メンバーの中では狂犬タイプの囚人も印象が強いけど、やっぱり1番グッとくるのは、元野球選手のスカーボロ

「楽しい。」「生まれて初めてのタッチダウンだ。」にブワッとなるけど、医務室連れられてからの「俺のタッチダウンを聞いたか?」にもニヤッとさせられます。

スカーボロやグランビル(最初に仲間になってくれた黒人)って、中年というより、熟年といっていいようなお歳にみえる…。

 

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喜びまくるおじさん2人がかわいい。枕の羽毛むしりすぎ(笑)。


いくつになっても夢中になれるものがあるのって幸せなことなんだなーと、そんなとこでも活力のもらえる映画です。

 


◆所長はみんなに嫌われてた

清々しいまでの悪党所長が最後ぼっちになってスカッ!!

自分の権力に酔いしれて人を虐めるサイテーな奴、やっぱり部下にも嫌われてた。誰がどうみてもパワハラ上司ですもんね。

自身は現場に関わらずこの人がセミプロ1位に拘ったのは、やっぱり権力欲のためでしょう。

 

スポーツの世界なんて(あるいは仕事の世界も)基本競争してなんぼで、結果を出すために努力するっていうのは悪くないことだけれど…そのためには何をしてもいいんだ、暴力もいいんだ、みたいなダークサイドに落ちちゃう…ってどこにでもいそうなヒール。

「悪の体育会系」みたいな存在!?胸の悪いパワハラ野郎をみんなで倒すところにカタルシスのある作品なんだなあと思います。


反対に、同じ現場を共にした看守たちとはちょっと心通じ合えた感じがしていて…

 

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いい悪人顔、クナウアー看守長に最後ホッとさせられました。


一緒に戦った相手だけが分かち合える瞬間…。自分みたいな非体育会系ぼっち人間がみても、スポーツっていいのね…!と思わせてくれるれっきとしたスポーツ映画です。

 

ラスト、所長の付き人が、録音テープを取り出すシーンがさっと流れてて、もしかしたらあのあと所長は告発されて破滅、新しい所長が来たら空気変わっていい刑務所になるのかも…なんて一筋の希望を感じさせます。

30年刑期延長のおやじさん、外に出れたらいいのになあ。

 


リメイク版ができるってタイミングでこの作品みた気がするんですが、結局このアダム・サンドラーのバージョンはそういえば観ていない…。

バート・レイノルズの役がアダム・サンドラーなの!?と本家を先にみるとどうしてもイメージがつきつつ、Amazonでレビューみたら結構評価が高いので今更ですが気になりました。

もっと分かりやすい試合シーンになっているのかな。

でもオリジナルの突き放したようなクールな見せ方、それが「ロンゲスト・ヤード」の色褪せない魅力のような気がします。