カタツムリが鼻から耳から口から入ってくる!この生き地獄をあなたは正視できるか!?
88年公開、ルチオ・フルチ監督のオカルトホラー。
昔ビデオで観た際にはまあまあなB級って印象でしたが、今みたらアレ結構いい映画じゃない!?…(感覚麻痺してきてんのかな)
いじめが原因で昏睡状態に陥った少女が転校生に憑依し復讐を開始する…今回は「キャリー」と「パトリック」が混じったようなプロット。
オープニング、懐メロテイストな洋楽と共にドレスアップしていく少女・キャシーの姿。
まさにこれからプロムに行くキャリーって感じですが、なんとデートの相手は学校の教師。
実はこれは仕組まれたデートで裏ではクラスメイトたちがその様子を盗聴、種明かしした後に皆でキャシーを笑い者にして追い詰める…イジメ胸糞すぎるし、グルになってる男教師が畜生すぎます。
動揺して道に飛び出したキャシーは車に轢かれて昏睡状態に…
その後に学校にはエバという転校生がやって来ますが、知っているはずのないキャシーの記憶を持っている様子。
その身体にはキャシーが憑りついていました…
普通に考えたら関係ないエバちゃんめちゃくちゃ被害者ですが、転校早々「男紹介して」とクラスメイトに迫るビッチな姿に同情心は自然と薄らいでしまいます。
↑エバ役のララ・ラツィンスキーはナスターシャ・キンスキーの従姉妹。迫力ある美人でハマり役…!
しかし肝心の乗り移り設定がストーリーにあまり生かされず、結局エバを介さない超常現象でクラスメイトたちが殺戮されていくあたり安定の雑な脚本。
その代わり女子校独特の閉鎖的な雰囲気はよく醸し出されていてホラーと相性ぴったり。女生徒は可愛い女優さんが多く皆それぞれ印象を残すキャラになっていました。
特に各キャラの部屋に飾ってあるポスターの演出がオモロイ。
いじめの主犯格・キムの部屋に飾ってあるポスターは「トップガン」のトム・クルーズ。
分かりやすいイケメン好きミーハーってとこでしょうか。
ドアを開けては次の部屋がまた自分の部屋…を繰り返す四畳半神話大系のような恐怖を味わったあと、トムのポスターに浮かび上がってきたキャシーに追い詰められ転落死…ここだけ観たらトム・クルーズに呪い殺されたみたいな謎すぎる死に様を迎えます(笑)。
学校一の尻軽女と呼ばれるグレースの部屋に飾ってあるポスターは「ロッキー」のスタローン。
よくみるとクリストファー・ランバートのポスターも…??
個人的にはめっちゃ友達になりたいですがコイツもいじめ加担者。
全身カタツムリに覆われ窒息死というVHSでも一押しされていたインパクト大な死を遂げます。ここはフルチ版「フェノミナ」って感じ。
その他のクラスメイトも夜の美術館で展示品に襲われるなど印象的な死に方で、おそらく相手が潜在的に苦手なものを幻覚に投影して殺しているようです。
乗り移り設定どこ行ったよ、という驚愕のスタンド能力。
一方肝心のエバちゃんは学校の中で唯一いじめを問題視していた生徒・ジェニーとルームメイトになります。
ジェニーが部屋に飾ってるポスターは「スターウォーズ」のヨーダ。
ハン・ソロではなくヨーダを飾るあたりガチファンか何かを悟った賢者としか思えません。
そしてその心を現すかのようにインモラルな学校で唯一まともでいい娘そう…
…だったのですが、そんな彼女も突然年上の医者と恋に落ちてしまいます。
その医者は昏睡状態のキャシーの主治医でキャシーもこの医者に恋をしていました。
かつての友人と恋のバトルが発生…復讐ドラマどこ行ったよ…なとっ散らかった内容に(笑)。
イジメシーンで1番のクズ野郎だった淫交教師を最後の復讐相手として取っておいた方がドラマとしては盛り上がったのではないかと思うのですが、教師は最初にあっさり死んでしまい、代わりにイケメンでもない医者が女子高生2人に取り囲われるのが謎展開すぎます。
けれど母親に知的障害があって父親は身元不明だったというキャシー。元々父性に飢えていて年上男性に依存的になってしまうキャラクター像には説得力を感じます。
恋に焦がれた女子高生が美女に転生して男に執着するというプロットは味があってなかなかイイんではないでしょうか。
実はお母さんが幻覚殺人の犯人だったとかもう一捻りあってもよかったかも…と色々考えてしまいますが、いじめの犯人だけは全員処刑される展開もすっきり。退屈せず観れる1本になっています。
幽体離脱したキャシーの魂が上空から学校を俯瞰するミニチュア撮影のショットはこの世ならざる雰囲気が出ていてよく出来ていました。
そして懐メロテイストな洋楽と集合写真で無理やり青春映画テイストにしてしまう強引なエンドロール(笑)。
ラストまでイタリアンホラーらしい豪快さでオモロかったです。