2000年公開、ジョン・フランケンハイマーの最後の劇場監督作となったサスペンス・アクション。
1級のエンタメ作品とは言い難くむしろB級風味。
けれどキャストそれぞれの個性が生きていて、まずまずの良質娯楽作に仕上がっていたように思います。
自分はこの映画、クリスマスではなかったと思うけど年末年始シーズンに深夜のテレビでみたような記憶があって、やけに楽しかった憶えがあります。
気忙しい季節にポテチでもつまみながらボーッとみるには最適の映画。
たまーに観たくなる、なんか好きなクリスマス映画でした。
◇◇◇
車泥棒の罪で刑務所に入ったルディは、クリスマスを前にして間もなく出所の予定。
同じ独房で親友となったニックも同じ日に出所を予定していましたが、ニックには文通を通じて恋仲となったアシュリーという女性がいました。
一度も会ったことがない運命の女性が刑務所の外で待っている…喜びを噛み締めている親友に「そんな女は実際にいるのか??」と冷めた態度をとるルディ。
しかし熱い愛の手紙とやたら美人な女性の写真に、ルディも内心では心惹きつけられていたのでした。
しかし…!!
出所まであと数日というある日、刑務所内で暴動が起き、それに乗じてルディに恨みを持っていた囚人が刃物を持って襲いかかってきました。
ルディを庇ったニックが刺されてしまい、目の前で死亡。ルディは1人寂しく出所することに…
出所の日、刑務所の外ではニックの文通相手であったと思われる女性・アシュリーが来ない親友を待ち続けて雪の中で佇んでいました。
魔が差したルディは、自分をニックと偽って女性に接近。熱い一夜を共にしてしまいます…
なんでシャーリーズ・セロンみたいなごっつい美人が囚人のペンパルやっとんねん!!…とツッコミたくなること不可避(笑)。
でも当時25歳のシャーリーズ・セロン、今のような大女優オーラがなく安っぽいメイクと衣装で絶妙に垢抜けてない…すごい美人だけど田舎のヤンキーのお姉ちゃんに見えないこともないかも…
ベン・アフレックも下心に負けてしまったアホ男がハマり役。
親友を失ってクリスマス前にシャバに放り出されるという孤独なシチュエーション。
嘘をついたことに一応罪悪感は感じているようで、ニックの手紙をずっと一緒に読んできたから実はルディも彼女のことが割と本気で好きだった…という辺りの描写が話に説得力を持たせています。
でも世の中やっぱりそんなに上手い話はないよ…美女とベッドイン後、突然めちゃくちゃ怖いお兄ちゃんが登場。
ロン毛のゲイリー・シニーズ率いるチンピラ軍団が現れ、ボコボコにされるルディ。
「妹との手紙を盗み読みさせてもらったが、お前昔カジノの警備員やってたよな。今からそのカジノを襲うから警備や金庫の情報を吐け」と脅されてしまいます。
「自分は実はニックじゃないから分からない」と訴えるルディでしたが、役に立たないと消されてしまいそうなので、ニックになりすまし渋々協力することに…
口から出まかせを繰り返しながら、一緒にカジノに向かいます。
チンピラ軍団が揃いも揃って間抜けばかり、緊迫感に乏しいのは残念。
でも緩いメンバーも意外と愉快だったりして…
「クリスマスの売り上げが半年分の売り上げに相当するなら、もう1個クリスマスをつくったら??」…独自の理論を語り出す強面ダニー・トレホに笑ってしまいます。
雪の降る田舎のカジノをチンピラたちがサンタクロース姿で襲撃する画がユーモラス。この小さな規模感とうら寂しさがいいムード。
ルディをニックと信じて疑わず一途な愛を向けてくるシャーリーズ・セロンは果たして善玉なのか悪玉なのか…
車泥棒の腕を生かして脱走したルディは、お兄ちゃんのはずのゲイリー・シニーズと乳繰りあっているアシュリーの姿を目撃。
やっぱり裏切り者で最初からグルだったのね…
シャーリーズ・セロンがこんな映画でバンバン脱いでいるのになんだかビックリしてしまいます。
決行当日、カジノ支配人たちの思わぬ反撃を受けて倒れるチンピラ軍団でしたが、アシュリーと偽兄貴は大金を強奪することに成功。
しかし、知るはずのないニックの死因を口走ったアシュリーにルディは違和感を抱きます。
親友が殺されたことは喋ったが刺されたとは言ってない…問い詰めようとした矢先、突然アシュリーに射殺されるゲイリー・シニーズ。
するとルディの耳に聞き覚えのある口笛のメロディが…
現れたのはなんと死んだはずのニック。
全てはニックの狂言で、刑務所での一連の騒動はニックが看守や他の囚人に賄賂を渡して偽装工作したもの。
アシュリーとは刑務所に入る前からずっと恋人同士だった…
昔働いていたカジノの金を強奪したいと考えていたニックは、アシュリーの店に来ていたチンピラたちを利用することを画策。
さらにチンピラたちが話に食いつくように自分の身代わりとしてニックを利用したのでした。
かなり回りくどい計画でここまでするかとびっくり(笑)。
アクの強いゲイリー・シニーズがあっさり退場するのが勿体ない気がしましたが、裏切りが2段重ねだったのは予想できずオモロかったです。
どんどん悪女顔になってくシャーリーズ・セロンの豹変演技もよくて、人間不信になりそうな主人公にここへ来てちょっぴり同情。
ルディに罪をなすりつけてトンズラしようとする悪徳バカップルでしたが、主人公の車泥棒設定がまたまた効いて、返り討ちに…
1人きりになったルディのもとに奇しくもカジノから強奪した大金が残ります。
翌朝のクリスマス…サンタ姿で大袋を担ぎ故郷までの道のりを進む中、見知らぬ家のポストに札束を投函していくルディ。
♫ラパパンパン〜
それカジノの金だしどーなんと思うけど、罪が洗い清められていくような不思議な感覚。
クズ男の悔恨と再起を感じさせるラストがなぜだか美しく、すごく好きなエンディングでした。
散々馬鹿やって恋人も友達もいないクリスマス。踏んだり蹴ったりでも、どこかに帰る場所があって美味しいものを食べれるのは幸せだなあ…
そんな気持ちになるラストが晴れやかで温かいです。
好物だというホットチョコレートとペカンパイ、甘いもの×甘いもので胃もたれしそうだけど、ちょっと食べてみたいかも(笑)。
フランケンハイマー監督の中では名作とは言い難いのだろうけど、ベン・アフレックはこういう肩肘張らないちょっとアホな映画に出てるときの方が好き。
ホリデーシーズンにみたくなる、なんか好きな1本でした。