どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「悪夢の惨劇」…オカルト!?病院ホラー!?着地点も見事な80年代サイコスリラー

エルム街の悪夢3」のジェニファー・ルービン主演。

「ザ・クラフト」のアンドリュー・フレミングが監督、「ターミネーター」「エイリアン2」のゲイル・アン・ハードがプロデュース。

カルト宗教の集団自殺から生き延びた女性の悪夢を描く87年のサイコスリラーだそうで…

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KONMAさんに先日教えていただいて、怖くてとても面白そうなのを初鑑賞してみました。

サスペンスタッチなストーリーからショック描写も時折挟まってきて飽きさせず、意外な話の着地点が上手い…!!

キャストも地味ながら皆ハマり役で、B級かと思いきやしっかり作られた感心の1本でした。

 

◇◇◇

若者ばかりが集められた大きな館。

1人1人に油をかけながら、「死ぬのは怖くない」と演説する怪しい男…宗教団体・和合教団の教祖・ハリスは突然火を放ち、信者たちと共に焼身自殺を図ります。

燃え盛る館からたった1人救出された少女・シンシアは、13年の昏睡状態から目覚め、精神科で療養生活を送ることに…

しかし死んだはずの教祖・ハリスの幻覚に悩まされ、同じ病棟の患者たちが奇怪にも次々と自殺を遂げていきます。

 

アメリカで類似する大規模な事件があったそうですが、開幕からの異様な空気が恐ろしい。



教祖役のリチャード・リンチの顔に迫力がありすぎて、その後幻覚で現れる度にギョッとさせられます(笑)。

 

舞台設定的にも「エルム街の悪夢3」が頭をよぎるストーリーですが、ジュブナイルもののワクワク感はなくもっと地味で硬派な印象。

精神病棟の雰囲気がとにかく抜群で、グループセラピーを受ける仲間たちが個性的。

出番は少ないながら皆キャラが立っていて役者陣の演技が光っています。

饒舌に話すお調子者かと思いきや自傷癖のある青年・ラルフ。

カップルで性依存症に苦しんでいるのか2人揃ってセラピーを受けているのはエドとコニー。

意志の強そうな目をしたギルダは敬虔なキリスト教信者。

元記者だという中年女性・ミリアムはシンシアの体験を聞き「雑誌社にネタを売り込んで一儲けしよう」と提案。

まともそうにみえるけど「編集長がいつでも戻って来いと言ってた」っていうのもきっと本人の中だけの話なんだろうなあ…

常にA4バッグを抱えた佇まいなどキャラの作り込みが素晴らしいです。

また無口なラナはシンシアがいた教団のポリシーに共感し、重い口を開いて興奮気味に語り始めます。

「エゴをなくして皆で仲良くなれば平和になれる」…根が真面目な人ほどこういうのにハマってしまうのかも…

〝一見普通に見えるけど不安定な人たち〟のキャラクターが、病気を大袈裟に誇張することもなく真摯に描かれていて、引き込まれるものがありました。

 

そしてそんなシンシアたちの治療にあたるのが、年若いドクターのカーメン。

「死霊のしたたり」のブルース・アボットが演じていて、何だか頼りなくヤブ医者にみえてきます(笑)。

 

グループセラピーを続けるも、ある日ラナがプールで突然溺死。さらに続けてミリアムがいきなり投身自殺。

自分が仲間を死に追いやったのでは…罪悪感に駆られるシンシアでしたが、チーフ医師・ベリスフォードは「かねてから皆には自殺癖があった」と一蹴します。

 

しかしシンシアの前に死んだはずの教祖の亡霊が登場。「君だけが抜けた、君が来ないなら代わりの者を呼ぶぞ!」と恫喝し始めます。

ライトが点滅する故障したエレベーターの中迫ってくる教祖様がひたすら恐ろしく、時折やけどを負ったグロテスクな姿で現れるのもショッキング…!!

生き残った罪悪感による幻覚なのか、はたまた本当の幽霊なのか…ヒロインと共に心を揺さぶられます。

 

やがて依存症気味カップルも換気口に体を突っ込み自殺。

細切れになった肉体が通風孔から血のシャワーとなって大量に注がれるのには、そうはならんやろwwと笑ってしまいましたが、「キャリー」と蛆虫が降ってきた「サスペリア」を思い出して思わずニッコリ。

 

他の仲間たちも精神を乱して次々と自殺。

ベリスフォード医師はシンシアを隔離棟に入れることを提案しますが、その処置に反対したカーメン医師が病院から解雇されてしまいます。

すると車で帰宅途中に上司に出会したカーメン医師が突然激昂、ベリスフォード医師を執拗に車で轢き殺しにかかります。

こちらも大変ホラーなシーン。唐突な展開に思わずギョッとさせられるも、これはカーメンの幻覚!?

錯乱直前に院内で処方されている薬を偶然口にしたことを思い出したカーメンは、もう一度病院を訪れることにしますが…

 

(※以下どんでん返しありネタバレ)

なんと病院で皆に処方されていたのはヤバい薬ばかりだった!!

グループセラピーのメンバーに投与されていた薬はどれも危険な劇薬ばかり。

実は不適切な薬のせいで精神を乱され自殺に追い込まれていたことが発覚。

ベリスフォード医師が自分の論文の実験証明のため意図的に薬を投与、皆を死に追いやっていたのでした。

 

ヤブ医者はお前だったのか…!!とんでもなく恐ろしい病院でびっくり(笑)。

〝昏睡患者の自殺説〟を何が何でも証明したいのか、ベリスフォード医師はシンシアにも屋上から飛び降りるよう迫ります。

しかしそこにカーメン医師が現れ、一命をとりとめるシンシア。

意識を取り戻したシンシアは邪悪なベリスフォードの顔にかつての教祖の面影をみて、彼を屋上から突き落とし全ての決着をつけます。

 

心の弱った人間を食い物にする大人が1番恐ろしい…そんな恐怖の余韻が残る結末。

「弱そうな主人公が幻覚を見ているに違いない」…こちらの先入観を利用した意外な犯人によるどんでん返しがとても面白かったです。

 

カーメン医師がシンシアに愛を告白するのが唐突で、美少女に一目惚れしただけにしか見えないのはちょっぴり残念(笑)。

もう少し前半から2人が惹かれる様子を自然に描いていると尚良かった気がします。

黒幕・ベリスフォード医師の論文がどんなものだったのか謎すぎるし、警察が何にも仕事せず去っていくところには唖然(笑)。

ツッコミどころはたくさんあって全体的には低予算B級風味。

けれど主人公たちが錯乱する場面の前にしっかり投薬&服薬シーンが挟み込まれているなど、よく練られて作られているなーと感心でした。

 

ヒロイン役のジェニファー・ルービンはなぜか今回橋本環奈にみえてきて、アン・ハサウェイと橋本環奈を足して割ったような美貌。

終始弱々しく心許ないですが、それがスリリングで罪悪感に苦しむ心情がリアルに伝わってきました。

 

冒頭の救急搬送シーンで勢いある青春ロックミュージックが鳴り響くのが、アンビバレントでオシャレ。

轢き殺しシーンでは美しいオペラ曲がかかり、エンディング曲はガンズ・アンド・ローゼズ。音楽の使い方も印象的でした。

 

ビデオタイトルは「シンシア・悪夢の惨劇」らしく、ビデオジャケットはしっとりした印象。

こちらはこちらで良い雰囲気♫

 

オカルト、サイコサスペンス、宗教ホラー…色んなホラージャンルの魅力を垣間見せつつ、着地点が鮮やかでよく出来た1本でした。