「三銃士」といえば…王政下のフランス、青年・ダルタニャンが活躍する冒険物語だけれど、アレクサンドル・デュマ・ペールの原作を全部読んだことがあるという人はどの位いるのだろうか。
実は「三銃士」は、「ダルタニャン物語」3部作の第1部にすぎず、全体の6分の1ほどでしかないという。
一度図書館で全巻ズラリと並んでいるのを見たことがあるが、かなりの大作で、「モンテ・クリスト伯」と「レ・ミゼラブル」を足してお釣りが来ないくらいの分量にみえた(笑)。
かくいう自分も第1部「三銃士」しか読んでいない。
しかも読んだのは大きくなってからで、それ以前に「映像化された三銃士」にたくさん触れ、独自のイメージ(あるいは誤解)を持っていたと思う。
今日は、そんな自分が触れた「三銃士」の映像化作品を、うろ覚え部分もありつつ、出会った順に振り返り、語ってみたい。
アニメ三銃士
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1987年~1989年にNHKで放送された全52話のアニメ。(のちに映画化もされる。)
かなり小さいときにみたからか、記憶はかなりおぼろげ…でも面白い作品だったと思う。
原作を大胆にアレンジしていて、なんと三銃士のひとり、アラミスが男装した女性…!
これだからジャパンは…といいたくもなるが、この設定にワクワクがとまらなかった(笑)。
コンスタンスを巻き込みながら、とにかくダルタニャンがミレディーと戦っていたという印象だけれど、Wikipediaのミレディーの説明がすごすぎる…。
謎の女性。笛などで動物を操る術と催眠術を駆使し、ダルタニャン達をたびたび追い込んだ。銃やナイフの扱いはもちろん、変装で他人に成りすまし、火薬や毒薬も使いこなす。
何者なんだよ!
なんとなく、ダルタニャン → 王道主人公 アラミス → クールビューティー アトス → かっこいいリーダー ポルトス → じゃがいも …なイメージが付いてしまった子供の頃の三銃士。
「♬愛情するよりこんなとき友情したい♬」酒井法子が歌っていた主題歌・「夢冒険」はカラオケで歌えそうです。
「三銃士」(1993年の映画)
ディズニーが実写化した三銃士映画。子供の頃に劇場に連れて行ってもらって観た。
ダルタニャンはクリス・オドネルで、純粋主人公感がたっぷり。
しかしまず、アラミスが女性じゃないことに驚く(笑)。聖職者を目指すプレイボーイって…。チャーリー・シーンがチャラくみえるので、アラミス=チャラいイメージに修正される。
そして、アトスとミレディーが元夫婦という切ない公式の設定をここで初めて知る。
キーファー・サザーランドとレベッカ・デモーネイの組み合わせ、今見ても悪くないと思う。
リシュリュー側vs国王側の戦いがわかりやすく、枢機卿軍(赤色衣装)近衛銃士(青色衣装)と南北戦争のようにキレイにわかれて戦ってくれる。
ティム・カリーのリシュリューが、とにかくトンデモない奴すぎて、大人になってみるとおかしい。
自分が王に成りかわろうとするわ、王妃の風呂場に入って来るわ…こりゃ怒られますわ。
あと出番が少ないが、ルイ13世役の役者さんの「上品なお子様」感がすごく、何気に名配役!?「王様ってこんな幼い雰囲気の人がやってたのかな」なんて思わせてくれた。
「仮面の男」(1998年の映画)
「タイタニック」のあと、空前のディカプリオ・ブームの中、公開された1作。
三銃士たちは老いて50代に。暴君・ルイ14世(ディカプリオ)の悪政をみかねた銃士たちが、バスチーユ牢獄に収監されている、鉄仮面の男(実は王の双子の兄)と国王をすり替えてしまおうという作戦にでる…!!
ここではじめて、「三銃士」の物語には続きがあって、「銃士が50歳になっても話が続いている」ことを知って驚いた。
「仮面の男」は決して原作に忠実な内容ではないようだが、なかなか面白かった。
アトス→ジョン・マルコビッチ アラミス→ジェレミー・アイアンズ ポルトス→ジェラール・ドパルデューの豪華布陣。
ガブリエル・バーン演じるダルタニャンだけが、王に忠実であろうとし、かつての仲間と対立するストーリーが面白かったが、オチにはビックリ…!!
「タイタニック」後、厳しい目線でみられることが多かったように思うディカプリオだけれど、「狂暴なルイ14世」と「優しい鉄仮面」の双子の一人二役、自分は上手だな~と思って、感心しながら観ていた。
「三銃士」「四銃士」(1973年~74年の映画)
「仮面の男」を観たあと、他に銃士ものはないのかとビデオで借りてみた作品だが、個人的に「三銃士」映画のベストはコレではないかと思っている。
監督が、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」のリチャード・レスター監督だからか、独特のユーモアがたっぷり。それがデュマ原作の三銃士本来がもつ、豪快な感じとマッチしていると思う。
イギリス勢が強い、超豪華キャスト…!
ダルタニャン→マイケル・ヨーク アラミス→リチャード・チェンバレン コンスタンス→ラクエル・ウェルチ リシュリュー→チャールトン・ヘストン ロシュフォール→クリストファー・リー など。
アトス×ミレディーの組み合わせは、オリバー・リードとフェイ・ダナウェイの、濃すぎるカップル…。
フェイ・ダナウェイのギラギラしたミレディーが主役といってもいい存在感だ。
剣のアクションも、優雅な今風ではなく、もっと肉弾戦感!?が強く、みてるとハアハアしてくる。
前編(三銃士)は、首飾り事件がメインストーリーで、舞踏会の様子なども豪華でみていて楽しい。
明るいおちゃらけた感じかと思いきや、後半(四銃士)は、意外に原作に忠実で主要人物がしっかりと死ぬ。
1番時代劇らしくて一押しの作品。
「ヤング・ブラッド」(2001年の映画)
記憶に薄いアクション映画。
「三銃士」の剣アクションを、香港仕込みのワイヤー・アクションでみせる映画だったと思うが、多分、「三銃士」にコレ求めてない…という中途半端な組み合わせになってしまっていたと思う。
王妃役がカトリーヌ・ドヌーヴで贅沢だな、と思ったのと、コンスタンス役・メナ・スヴァーリにお風呂シーンがあり、「アメリカン・ビューティーやん!」と思った記憶しかない。
ティム・ロスがロシュフォールだっけ??役者陣のビジュアルは悪くないんだけどなあ、といいつつ、自分の持っていた「三銃士」イメージを上書きするものがなかった作品。
「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」 (2011年の映画)
ミラ・ジョヴォヴィッチのミレディーが「バイオハザード」みたいに暴れまわるトンデモ三銃士映画だが、自分、嫌いではない。
これまで何度も映像化しているのだから、飛行船でも出して差別化していくしかないという姿勢があっぱれ…!
なんでもアリで、ある意味、子供の頃にみたアニメの三銃士に1番近いのかもしれない。
一応ストーリーラインは、「首飾り事件」に沿っているといえば沿っている。
オーランド・ブルームのバッキンガム公と、マッツ・ミケルセンのロシュフォールがいい。
アホで能天気そうにみえるルイ13世が、夫婦仲に悩んでいるというドラマもかわいくまとまっていて、なかなか楽しめる1作だった。
自分が観たのはこのくらいだが、「三銃士」は何度も映像化されていて、他にも未見の気になる作品は多い。
三谷幸喜が脚色に関わったというNHKの人形劇にもファンが多いようだ。
個人的にずっと気になっていたのはこれ…。
「もしかして男装の女アラミスやってくれてた!?」と思っていたら、ダルタニャンの娘役みたい…。
色んな派生作品があるなあ、と感心する。
本当の”悪”は銃士たち…?
子供の頃…92年の「三銃士」を観たあとだったと思うが、親から、「さっきの映画では王様たちが勝っていたけれど、本当は、最後にはあの人たちの方が負けるんだよ。」「王様たちの方が悪くて、みんな処刑されてしまうんだよ。」…みたいな解説を受けた。
なんて恐ろしいんだろうと驚いてしまった。
しかし、今になってみると、親が教えてくれたことは、半分正解で、半分間違いという気がする。
処刑されたのは、マリー・アントワネットの夫のルイ16世…。
「三銃士」のルイ13世の時代は、フランス革命の大体100年前の話。
自分は歴史サッパリな残念な奴なのですが、ここらへんのイメージがごっちゃになっているなあ、と感じる。
多分「ごっちゃになりやすい」のは、デュマが時代の異なるマリー・アントワネットのエピソードを借用・大幅脚色して織り込んできたからで、日本ではさらに「ベルサイユのばら」のイメージが重なって、マリー・アントワネット=アンヌ王妃と混同しやすいのかもしれない。
しかし「王様側(銃士たち)」が実は悪なのでは…という観点は面白い。
原作「三銃士」の中で、アンヌ王妃は、ルイ13世に冷たくされ、リシュリューからもいじめられている…というような立ち位置であると説明があるものの、バッキンガム公と派手な不倫をし、「国王にもらったダイヤをプレゼントする」という舞い上がった行動にでてしまっているのは、いただけない気が…。
そのアンヌ王妃側にまわる銃士たちが100%の正義なのだろうか…と大人になると疑問に思ったりする。
リシュリューも当時の偉人といわれたり、一般的には評価の高い人物のようだが、「三銃士」のせいで!?狡猾な悪い奴のイメージがついてしまっている。
そもそも庶民ではなく、王政の方の味方…という立ち位置が、今だとかえって珍しいのかも…。
デュマには多数アシスタントもいて、たくさんの資料を元に連作小説を書いていたというが、「三銃士」はあくまでフィクションで、歴史的な正当性はない…というのはファンも認めているところのようだ。
10年、20年経ったときに、また「三銃士」は映像化されるのではないかと思う。
デュマの練った壮大な虚構の中に、さらに練られていく虚構…。
時代、時代で新たな作品がつくられつつも、それぞれに強いイメージを残していく三銃士たちの姿を、この先ももし刻めることがあれば、嬉しいと思う。