最新映画情報にとことん疎いものの、実写版「ライオン・キング」が賛否両論らしいことは何となく伝わってきた(笑)。
そしてなぜか唐突に叫びたくなる、「代わりに猿のリンクをみてくれ!!」と。
「サイコ2」のリチャード・フランクリン監督、天才チンパンジーが人間を襲う密室パニック・アクション・ホラー。
今のだと動物愛護の問題などが指摘されてもう絶対に撮れない映画という感じがしますが、ヒッチコックの「鳥」のアニマルトレーナーが動物の演技指導に入っていたらしく、とにかくお猿さんの演技がすごい!!

◆牙をむく天才チンパンジー・リンク
アメリカからイギリスの理科大学に留学している女学生ジェーン。
ジェーンはひょんなことから霊長類学の権威・フィリップ教授のもとでひと夏のアルバイトをすることになる。
人里離れた教授の屋敷で彼女を待っていたのは、驚くべき知能指数を持つチンパンジー”リンク”だった。
洋服を着てまるで人間のような振る舞いをみせるリンクだったが、主人である教授と衝突。
知らぬ間に屋敷に1人取り残されたジェーンは、彼女を物欲しげにみつめる猿と対決することになるのだった…

テレンス・スタンプ演じる教授が開始早々どうみてもヤバい奴にしかみえない(笑)。
偉そうに生物うんちくを語るものの、チンパンジー3頭をどうみても御しきれていない様子で屋敷の中は大荒れ。
「この猿は君の腕力の10倍あるから気をつけてね」…いやいや、どうみてもアンタも世話できてないでっせ。
教授の飼っている猿は、おとなしめの子猿インプ、暴れ者で常に檻に入れられているブードゥー、そして執事のような格好をして人間のように屋敷をとりしきるリンクの3匹。
ある朝ジェーンが目を覚ますと、予定の打ち合わせに出掛けたのか、教授の姿が見当たらない。
その後、部屋から殺されたブードゥーの死体が出てきて、ジェーンはリンクを問い詰めるが、素知らぬ顔。
海岸沿いの人気のない屋敷。電話線は切られ、音信不通に…側にいるのは2匹のチンパンジーだけ。
金田一少年の事件簿ばりに孤立したジェーンに、リンクの魔の手が襲いかかる!!

特別な訓練を受けた猿として描かれているリンク達ですが、言葉を理解してコンピュータで意思疎通をする様子などその知能の高さにびっくり。
こちらが快く思っているか、馬鹿にしているか、人間のささやかな感情もキャッチしているようで何とも言えない緊張感が漂います。
途中で教授が実は、手に負えなくなったブードゥーとリンクを処分してもらおうと業者と連絡をとっていたことが判明しますが、頭のいいリンクが教授の腹づもりに気付かないわけはない。
教授や業者の男に襲い掛かるリンクですが、そもそもこうなって当然というか、悪いのは都合よく利用しようとした人間の方だと同情的な気持ちが沸き上がってきます。
◆自分より”下”でいる限りは可愛いという欺瞞
執事のような格好をして主人に仕えているリンクですが、舞台がお城のようなお屋敷なのもあって、階級社会や奴隷制度への風刺のようなものが随所で感じられます。
屋敷から出たジェーンが野犬に襲われリンクが助ける場面が序盤にありますが、このシーンはなぜかディズニーの「美女と野獣」にそっくり。
でも本作ではジェーンにちゃんとイケメンの恋人がいて、種を超えた恋が始まるわけでもない…というのがシビアであります(笑)。
この作品で1番可愛くみえるのは、子供の小さいお猿・インプですが、ジェーンの腕に収まっている子猿もゆくゆくはリンクのように牙をむくことになるのかもしれません。
親のいうことをきいているうちは可愛いけれど、思い通りに育たないと子供を憎んでしまうこともある…
自分より”下”でいるうちは、自分と別の存在と切り捨てて愛でれるけれど、自分に近づいてくると、次第に憎悪が湧いてくる…親子関係、人種問題、階級社会などなど、色んなものを当て込めてみれるような設定が秀逸で、引き込まれてみてしまいます。
猿の視点カメラワークみたいなのがイマイチ生かしきれていないように思ったり、ジェーンの無能ボーイフレンドが来る場面でちょっと間延びしたり…
粗っぽいところもあるけれど、ジェリー・ゴールドスミスの音楽が秀逸で見事な援護射撃。ユーモラスかつ緊迫感を高めるスコアが耳に残ります。
昔VHSのワゴンセール叩き売りで発見して鑑賞、ジャケットデザインは今販売しているDVDよりこちらの方が好みだったかも…


VHS裏面の解説(by上岡雅史氏)のおかげで、「リンク」が「フランケンシュタインの花嫁」のオマージュになっていることを知りましたが、怖がらせモンスターでなく哀しみ漂うキャラクターになっていたのが素晴らしかったです。
本作で1番不気味なのは、ジェーンが風呂場で脱いでいるのをリンクがじっと眺めているシーン。(エリザべス・シュー、大人になったらしつこい透明人間に襲われるし、若い頃から苦労が絶えない…)
嫌らしい視線が完全にオッサンでドン引き(笑)。
自分でマッチを擦って葉巻をふかしたり、命令をふてくされた顔で無視したり、スーツを脱いで主人に怒りをぶつけたり…中に人が入っているのでは??と思わせるリンクの演技がとにかく凄まじく、メイキングや撮影の裏話が気になる作品でもあります。
リメイク版「猿の惑星:ジェネシス」を観たときに猿が全部CGだときいてその技術に驚いたけれど、「リンク」は本物の動物にしか表現できないリアルさに心奪われる作品でした。
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