どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

映画「リンク」…ホンモノの猿の演技がすごい!!

最新映画情報にとことん疎いものの、実写版「ライオン・キング」が賛否両論らしいことは何となく伝わってきた(笑)。
そしてなぜか唐突に叫びたくなる、「代わりに猿のリンクをみてくれ!!」と。

リンク [DVD]

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「リンク」は、イギリスで製作された1986年のホラー映画なのですが、天才チンパンジーが人間を襲うという、密室パニック・アクション・ホラー。

ヒッチコックの「鳥」のアニマルトレーナーが動物の演技指導に入った作品だというが、とにかくお猿さんの演技がすごい!!
今の時代だと、動物愛護の問題とかが指摘されて、もう撮れない映画ではないかと思う。

ただただホンモノの動物の迫真の演技に圧倒される良作ホラー・「リンク」について、今日は少し語ってみたい。

 

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牙をむく天才チンパンジー・リンク

本作の主人公は、アメリカからイギリスの理科大学に留学している女学生ジェーン。
(演じるのはエリザベス・シュー。大人になったらしつこい透明人間に襲われるし、若い頃から苦労が絶えない。)

ジェーンはひょんなことから霊長類学の権威・フィリップ教授のもとでひと夏のアルバイトをすることになる。

まずこのテレンス・スタンプ演じるフィリップ教授が、ヤバい奴にしかみえない。

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研究のため、知能指数の高いチンパンジーを田舎の屋敷で3頭飼っている教授。

散々生物うんちくを語るが、屋敷の中はカオスで、猿たちを怒鳴り散らしている。
「この猿は君の腕力の10倍あるから気をつけてね。」
いやいや、どうみてもアンタも世話できてないでっせ。

 

教授の飼っている猿は、おとなしめの子猿インプ、暴れ者で常に檻に入れられているブードゥー、そして執事のような格好をし、まるで人間のように屋敷をとりしきるリンクの3匹。


ある朝ジェーンが目を覚ますと、予定の打ち合わせに出掛けたのか、教授の姿が見当たらない。
その後、部屋から殺されたブードゥーの死体が出てきて、ジェーンはリンクを問い詰めるが、素知らぬ顔。

海岸沿いの人気のない屋敷。電話線は切られ、音信不通に。側にいるのは2匹のチンパンジーだけ。

金田一少年の事件簿ばりに孤立したジェーンに、リンクの魔の手が襲いかかる!!

 

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リンクたちは特別な訓練を受けた猿で、言葉を理解して、コンピュータで意思疎通ができたり、図形のテストをこなしなり、みんなとっても知能が高い。
人の気持ちも、何もかも理解していそうで、〝姿だけが猿〟のヒトにみえてしまう といっても過言ではないかも…。

途中、教授が実は、手に負えなくなったブードゥーとリンクを処分してもらおうと業者と連絡をとっていたことが判明する。
頭のいいリンクが教授の腹づもりに気付かないわけはないし、この仕打ちに怒るのは当然…!

リンク自身、そもそも悪い奴ではなく、悪いのは利用しようとした人間の方という気持ちになってくる。

 


自分より”下”でいる限りは可愛いという欺瞞

良いホラー映画って、作り手の意図を超えて!?色んなメッセージを感じることがあるように思ったりするけど、この「リンク」もそんな作品。

 

●執事のような格好をして主人に仕えているリンク。

テレンス・スタンプがイギリス人、舞台がお城のようなお屋敷なのもあって、階級社会や奴隷制度が思い浮かばなくもない。見た目や人種の違う〝リンク〟への差別にもみえてくる。

 

●序盤、屋敷から出たジェーンは野犬に襲われる。リンクが野犬を倒し、ジェーンを助ける場面は、ディズニーの「美女と野獣」にすごく似ていると思う。(「リンク」の方が古いですが)
見目の良くないモテない男の片思い!?ストーリーにもみえるかも!?

 

●この作品で1番可愛くみえるのは、子供の小さいお猿、インプ。

親(教授やジェーン)のいうことをきいているうちは可愛いが、思い通りに育たないと子供を憎んでしまうことも…。インプだって大きくなったら、捨てられるのかもしれない。


自分より”下”でいるうちは、自分と別の存在と切り捨てて愛でれるけれど、自分に近づいてくると、次第に憎悪が湧いてくる…そんなヒトの嫌らしいところを感じる「リンク」は、設定が勝利のホラーだと思う。

 


猿の視点カメラワークみたいなのがイマイチ生かしきれていないように思ったり、ジェーンの無能ボーイフレンドが来る場面でちょっと間延びしたり…

なかなかアラもあるように思うけれど、超有能ジェリー・ゴールドスミス節が炸裂!!
音楽のおかげで、緊迫感が大幅アップしている!!

 


「リンク」は昔ワゴンセールしてたVHSを購入したけれど、ジャケットデザインなど、今販売しているDVDより好みだったかも…。

何よりVHS裏面の解説(by上岡雅史氏)のおかげで、「リンク」が「フランケンシュタインの花嫁」のオマージュになっていることを自分は知れた。

 

「リンク」もただの怖がらせるモンスターではなく、哀しみのあるキャラクターになっていると思う。

 


本作最大の見せ場は、エリザベス・シューが風呂場でちょっと脱いでくれて、リンクがそれをじっと眺めるシーンだろうか。
嫌らしい視線は完全にオッサンである。

自分でマッチを擦って葉巻をふかしたり、命令をふてくされた顔で無視したり、スーツを脱いで主人に怒りをぶつけたり…

中身は人間なのでは??と思わせるリンクの演技がすごく、今更ながら、メイキングや撮影の裏話が気になってしまう作品だ。


リメイク版の「猿の惑星ジェネシス」を観たとき、猿がCGだときいて、その技術に驚いたけど、「リンク」には、本物の動物にしか表現できない、心奪われるリアルさがあると思う。

〝演技の達人、リンク、ブラボー!!〟