どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「フューリー」…デ・パルマの超能力モノ、なぜかキャリーより好き

ブラピの戦車映画は観れてないけど、コッチ、コッチが好きなのよ〜。

フューリー -HDリマスター版- [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2018/02/02
  • メディア: Blu-ray
 

子供の頃「キャリー」鑑賞後、デ・パルマ好きの家族に「これも面白いで!」と勧められ、ほぼ間を空けずに観た「フューリー」。

母娘の哀しきドラマ、地獄と化すプロム…圧倒的完成度で何もかも鮮烈な「キャリー」に対し、「フューリー」は数段落ちる評価なのかなあ、と思いますが、自分はなぜかこっちが大好きでした。

 

簡単なあらすじは…

元諜報員ピーターの息子ロビンが誘拐された。首謀者はピーターのかつての同僚チルドレスで、ロビンが持つ念力をスパイ活動に利用しようと企んでいた。
父ピーターは、同じ超能力を持つ少女・ギリアンを発見し、息子の行方探しに協力してもらおうとする…。


改めてみてもキャストが素晴らしい本作。

まず父ピーター役の、当時61歳のカーク・ダグラス

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おじいちゃんだけど、精悍でダンディー…!

半裸姿での見事な立ち回り、霧の中でのカーチェイスでの機転…とアクションがカッコいいですが、亡くした人を思い夜行バスで涙する姿など悲しみの表現にもグッときます。

対する悪役・チルドレスには、ジョン・カサヴェテス暴れたり変顔したり、そんなことは一切しない静かなキャラなのに、冷たーい感じに迫力がたっぷり。

超能力少女・ギリアン役は「キャリー」でもお馴染み、エイミー・アーヴィング。一緒に観た家族は「高校生にみえん!」と辛口でしたが、当時25歳。美人で可愛いと思うんだけどなー。

他にも・・・スパイになって手助けしてくれる優しく上品な先生へスター、(キャリー・スノッドグレス)、ロビンの監視役で抑えた色気のスーザン(フィオナ・ルイス)・・・と女優陣が美しい作品。

出番は少ないけど印象的なキャラクターが多く、冒頭出てくる超能力者は、「ファントム・オブ・パラダイス」のウィリアム・フィンレイ。インチキ臭いところも含めてホンモノ感が漂っています(笑)。

 


そして、なんといっても心掴まれるのは超能力の映像表現です。

名シーンの1つは、ギリアンが人に触れるとその人の思念、過去みたいなのが映像で再現されるところ。

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後ろに別レイヤーの、ロビンが走り行く映像が展開しつつ、前の映像ではギリアンがぐるーっと回って正面を向いてくる。

「フューリー」の超能力って、アニメ的というか、厨二感のある感じが自分には刺さるんだけど、「こんな風にみえてるんだー」と説得力すら感じる映像の躍動感がすごいです。

 

しかし意外に血の量は多く、「念力で発生した電磁場のせいで周りの人が出血してしまう」という謎設定…。

ラストを除くと、もっとも血が飛び散るのはスーザンがロビンに嬲り殺されるシーンでしょうか。

残酷なんだけど、同時に思春期の男の子の性の爆発を感じるどこか性的なシーンにも思えるし、母のいないロビンが初めて惹かれた女性が年上美人…っていうキャスティングや話のリンクもすべて含めて上手いなあ〜と思います。


また屋内遊園地でロビンが超能力を暴走させるシーン。こちらもすごく印象的です。

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アラブ人観光客の乗ったまわるアトラクションがグルグル止まらなくなる…

スーザンのシーンと同様、単純なまわるというスピード感の恐怖もあるし、「無関係な人が怒りの巻き添えになる」という理不尽さも怖かった。

改めてみると、冒頭でロビンは父親をアラブ人に殺されたと思っていて、その映像を執拗に何度も見せられ洗脳されていて、人種偏見、植え付けられた憎しみの暴走にもとれます。


単純なオカルト・サイキック話っぽいようで、ドラマが本当によく出来てる!!

 

すっごい面白いと思うんだけど、「フューリー」が1978年公開当時、ヒットせず、評価が芳しくなかったのは、やっぱりラストの展開なのかな。

やっと再会した父子があっけなく直ぐに死んでしまうのは勿体ないっていう人が多いんでしょうね。

でも自分はここも含めてなんか好きでした。

 

特別扱いで歪んでしまった子供。大事に育てた我が子がなにかの拍子に自分の知らない人間になっている。


「キャリー」からは子視点での親の理不尽さを感じるけど、その反対もあっていいと思う。

あそこまできてハッピーエンドって逆に白けそうで、「殺しが静かにやって来る」みたいな唐突な不条理感、それがイイと思います。

 

ビックリの人体爆発シーンは、「スキャナーズ」が思い浮かびますが、人体破壊への拘りというよりやったれ!!という潔さを感じます。

ロビンからの受け継がれた意思、ギリアンの怒りのポーズ!?からのカサヴェテスかくかく…感情の爆発のピークでエンドロール。スカッとするというには、哀しみが残りすぎててちょっと寂しい感じ。その独特の余韻も大好きです。


改めて製作陣を確認すると…

音楽は、ジョン・ウィリアムズ
撮影監督は、リチャード・H・クライン。
特殊メイクは、リック・ベイカー

…とめっちゃすごい布陣ですね。

 

離れたところにいる超能力者2人が呼応する演出は、今みると新しい「スターウォーズ」のレイとカイロ・レンにちょっと似てるかも!?なんて思ってしまいました。フォースはこういうザ・サイキックとはまた違うよなあ。


とにかく「フューリー」、今みてもメチャクチャ面白かった!!

 

 「キャリー」も長らくみてないけど、凄さでいったらこっちなんだと思う。また鑑賞して比較してみたいと思いました。