この作品のデ・ニーロが1番好きという人は案外多いみたいで…デ・ニーロ45歳のときの公開作品ですが、自分も「ゴッドファーザーPART2」のヴィトーとどっちかなあと迷うぐらい大好きです。
以降年を経ても、「アナライズ・ミー」「ミート・ザ・ペアレンツ」などでコメディ分野での演技をみせてくれていたデ・ニーロ。
本作は、笑わせてくれる&カッコいい&人間ドラマもある、といいとこ尽くめ…!
元警察官のジャック・ウォルシュ(デ・ニーロ)は、逃亡した被告人を公判までに連れ戻してくる〝賞金稼ぎ〟の仕事をしていました。
ある日ウォルシュは、とある会計士、マデューカスの身柄拘束の依頼を受け、ロスからニューヨークへ。
マデューカスはギャングの金を横領して慈善団体に寄付をしたという変わり者で、あちこちからその身を狙われていました。
男2人の思いがけぬ珍道中の行方は…!!
♫チャララー、チャチャチャチャ、チャララ〜
ダニー・エルフマンの軽快な音楽で幕開けるオープニングの掴みが抜群。
ターゲットのマデューカス(あだ名:デューク)捕獲に悪戦苦闘するのかと思いきや、意外や意外、ウォルシュがかなり〝出来る奴〟で、すぐに見つけてしまうのですね。
でもここに、
・デュークを証人として利用したいFBI(※間抜け集団)
・デュークを殺害したいギャング集団(※間抜け集団)
・辛抱きかん依頼主がよんじゃった同業者(たまに勘のいいおバカ 新聞は読まないタイプ)
の面々が追いかけてきて、四つ巴になるから面白い!!
監督のマーティン・ブレストは、「セント・オブ・ウーマン」や「ジョー・ブラックによろしく」など、やや長めのゆったりしたドラマが得意なのかなという印象もありますが、「ミッドナイト・ラン」は、ゆっくりしてるようで、緊張感は程よく途切れません。
ニューヨーク → シカゴ → テキサス州アマリロ → チャニング → アリゾナ州フラッグスタッフ → ラスベガス → ロス
…と日本人の自分にはいまいち馴染みのない地名も含みつつの5日間コース。
移動手段も、飛行機→列車→バス→貨物列車→カーチェイス とどんどん切り替わっていって、意図的にというより場当たり的にピンチを乗り越えていくのが軽快です。
各所見せ場はあるけど、1番たまらないのは、こういうアメリカンダイナーの雰囲気だったりして。
そして何と言っても主人公2人のキャラクターの掘り下げの上手さ…!!
逃避行の中、異様にしつこいデュークの尋問!?により、ちょっとずつ口下手なウォルシュの過去が明らかに…。
荒くれ者かと思いきや、ギャングの賄賂を断った正義の人だったということが分かってくる。
仕事を自分なりに〝きちっと〟する美学のある男感が伝わってきてカッコいいですねー。
ホントはいい人なのに不器用で、家族を失ってしまったんだなあ、別れても男の方はいつまでも気持ち引きずってしまうんだなあ…と腕時計でみせる〝前に進めない人生〟がとてもリアル。
9年も会っていない娘との再会シーン…会っていなくてもお互い愛があるんだとホッとする反面、それが余計に切なく思えてきたりします。
デュークの方は、一見受け身の大人しいキャラに見えるけど、相当な頑固者だし、すごい胆力のある人ですね。
超真面目さんかと思いきや、偽札詐欺やるわ、小型飛行機を無断拝借しようとするわ、「それはいいんかい!」って(笑)。
ラストは人情をみせた主人公が人情返しによって報われるという結末に、高揚感に浸ったまま、流れるエンドロールがまた最高におしゃれ!! 最後は歩いて帰るのかーって、それがまたカッコいいですねえ。
「来世でまた会おう」
友情って必ずしも永続的なものでなく、別れがあるものだなあと思いますが、刹那的な人間関係の中であっても、相手を好きになれる、気持ちを通わせることができるっていいなあと、観ていて幸せな気持ちになれる2人です。
ちなみに本作、過去のテレビ放映版が日本語吹替史上最高傑作などと言われているそうで…でもamazonやネットフリックスで配信されている吹替はどうやらVHS版っぽい。
"I 've come too far. Too far. I'm too close." /「えらい所に来ちまった。もう少しなのに。」
とつぶやいているデ・ニーロの台詞のひびきが凄く好きだったりして、自分は英語音声&字幕がいいかなあと思っています。
程よくスリムで、革ジャン姿がキマッてて、カッコいいデ・ニーロ!!
80年代特有の明るさを持たせつつ、哀愁も感じさせるドラマ…絶妙なバランスで、色褪せない1本だなあと思います。