1989年公開、「あの頃ペニー・レインと」のキャメロン・クロウの監督デビュー作。
高校生が主人公の恋愛青春映画なのですが、ほろっと苦味もあって、なかなかいい作品!
主人公ロイド(ジョン・キューザック)は、これといった取り柄もなく将来の計画も持っていない、ちょっと変わり者のオタク感漂う高校生。
そんな彼が学年一の秀才で美人の「高嶺の花」ダイアンに一目惚れ。
一度も言い寄られたことのなかったダイアンは新鮮に思ったのか、ロイドが誘うと案外コロッとOKを出します。
ダイアンは奨学金でイギリスの名門校に進学予定の超優等生。
堅実な努力家ですが、卒業生代表スピーチでは未来への不安な思いを吐露していました。
進学、就職、結婚…これからそれらを達成しなければならないのだろうというプレッシャー、大きな夢や大志があるわけでもなく明確な未来がわからないという心もとなさ…。
特に深く考えずそのとき出来る選択をしながら生きてる人間も多いんじゃないかなあと大人になると思ったりしますが、ダイアンの真面目さ・若さ溢れるスピーチが胸に迫ります。
一方ロイドはなかなかのテキトー男で、教師から「あなただけ進路が決まってない」と詰め寄られても、「普通に働くのは何となく嫌、やりたい事はこれから探す」とのらりくらりした感じ(笑)。
でもなぜかこのロイドがすっごい魅力的なんですねー。
何にも囚われず人生好きなように生きたいという正直な姿、そこに痺れる、憧れるーじゃないけど、無理をしてない自然体な姿が眩しくうつります。
高校3年間周りの大人の期待に応えようと頑張ってきたタイプの女の子が、この先何が未来にあるのかと思い悩む。そういう義務感を全て否定して自由に生きてきた男の子と惹かれ合う。正反対なカップルなのが面白いです。
繊細で暗い一面もあるロイドですが、すごくよく人のことを見ていて気遣い上手ってところが伝わってきて、この映画のジョン・キューザック、カッコいいというか癒されるー!
ロイドの誘いのおかげで卒業パーティーに参加できたダイアンが、バカやってる高校生の中に初めて入って生き生きとした表情をみせるのも、青春って感じがして応援したくなります。
両親の離婚後、父親と2人暮らしをしていたダイアンは過保護に育てられ、お父さんだけが友達になっていたというなかなか寂しい状況。
もういい年になったら親から離れてちょうどいいんだよと思うのですが、父娘お互い思いやって離れがたいっていうのも、親子愛ではあるんでしょうね。
恋愛によって初めて自分の意志で自由を掴み取っていくことを知るダイアンが健気で可愛い!
お父さんの抱えていたビックリな秘密が明らかになる展開も含め、父親vs高校生カップルの三角関係が最後まで面白いです。
ラストシーン。結ばれてイギリス行きの飛行機に乗った2人だけど、離陸後ベルト解除のランプが消えないのをいつまでも不安そうに見守っている。
ここは何だか「卒業」のラストシーンっぽい感じがして、2人の未来は不安定なもの、先は分からないものだということを暗示しているのかなあと思いました。
ロイドはやりたいことを見つけられるのか…ダイアンの方は新しい学校で新しい人に出会ってどんどん先に大人になってしまって、2人合わなくなってくるんじゃないかなあ、別れる可能性も十分あるようにも思えます。
なんとなくロイドは、ジョン・キューザックつながりということで「ハイ・フィデリティ」の主人公みたいになりそうだなーなんて思ってしまいますが…
ちょっと余韻のこしたエンドもいいですね。
ラストシーンが個人的にはお気に入りですが、多分本作で1番有名なのは、ラジカセ持ったロイドがダイアンの自宅の窓の外からピーター・ガブリエルの「In Your Eyes」を流すシーン。
音楽オタク、キャメロン・クロウならではの愛の叫び…!!80年代らしさもあって、雰囲気も含めてすごく好きな作品です。