コナミの人気ホラーゲームをハリウッドが実写映画化。2006年公開当時劇場に観に行ったのですが、怖い、グロい、哀しいと3拍子揃った大満足の1本でした。
自分はゲームを全く知らずに映画を観たクチですが、原作ファンの友人も絶賛していて、映画オリジナルのストーリーだけどおおよそゲーム1作目をベースにしているとのこと。
ローズ、クリスの夫妻は8年前養女に迎えたシャロンが夢遊病を抱えていることに悩んでいました。
娘が呟く「サイレントヒル」という言葉を手掛かりに、母ローズは実際にあるその街をシャロンと共に訪れることにしますが、街は30年前の坑道火災で多くの人が亡くなり、ゴーストタウンと化していました。奇怪な出来事が次々と起こり、ローズは娘と離れ離れに…。
“娘を探す母〟というプロットで、ナイフ、懐中電灯といったアイテムを入手しながら、学校、ホテルと場所を変えていきつつ手掛かりをつかんでいく…実にゲーム的なつくり。
深い霧に覆われ雪と見紛う灰が降る街の画はどこか物悲しく、精神世界の迷宮という感じがして怖い!!
そしてウォーンとサイレン音が鳴り響き、赤黒い煉獄へと世界が一気に姿を変えていく映像はすごい迫力で怖いのに見惚れてしまいます。
襲ってくるクリーチャーたちも独特のデザインで、やたらスタイルがいいけど不気味なナース、現れたら絶望しかない三角頭という謎のムキムキ男とダークファンタジーっぽいグロさが好きな人にはとことん刺さります。
しかし!!本作で1番恐ろしいのは実は普通の人間…元々サイレントヒルにいたという生き残りの村人たちが1番怖い人たちでした。
火災事故の前から元々この街はカルト的宗教が権力を握っていて、彼らが異端と決めた人間はとことん虐げられる…というめちゃくちゃ嫌な街だということが明かされます。
「ミスト」のおばちゃん、「ヘレディタリー」のおばあさんと並んで、絶対関わりたくないタイプ!
狂った教団がアレッサという女の子を魔女だと言って追い詰めて、火あぶりにしたことから街の大火災が発生した…ともうリーダーのばあさんが全部悪いとしかいいようがない事の顚末。
しかし狂気に走る集団心理にはリアルな怖さがあります。
一命をとりとめるも苦しみだけが残ってしまったアレッサは、復讐を誓い、その念が善悪に分裂して、善の部分として街の外に出てローズの娘となったのがシャロンでした。悪となってしまったアレッサの方は最後に教会で虐殺を繰り広げる…。
アレッサちゃんがひたすら可哀想で、ばあさんの断末魔は何だかノリノリでみてしまいます。
しかし単なる驚かせホラーではなく家族ドラマ的なストーリーが織り込まれているのが上手いなあと思いました。
ローズ一家の父親(ショーン・ビーン)は、現実世界で行方不明になった娘と妻を探索しているけれど異界のサイレントヒルには結局足を踏み入れることがない。
このお父さん、なにげにずっと呼んでいるのは妻の名前だけで娘のことはほとんど口にしていない…。深い愛情を求めていたアレッサにとってこのお父さんはきっとお呼びじゃなかったんだろうなー、と父親不在のまま展開するドラマに味があります。
逆に巻き込まれてしまって気の毒だったのが女性警官シビル。心優しく素晴らしい警察官なのにあんな残酷な死に方…と処刑シーンは何度見ても辛いです。でもこの人は強い母性のある人だったからこそサイレントヒルに入れてしまったのかなあと思いました。
アレッサが最後に実の母・ダリアには手をかけなかったというのにも何とも言えぬ哀しさが残ります。
お母さんは殺せないという無条件の愛と、助けて欲しかったのに助けてもらえなかったという哀しみから死なすにはやさしいと思ったのかなあと…両方感じて、複雑な娘心に戦慄です。
最後、どこまで行っても霧が晴れないー!!ってところも絶望感漂っていてすごい好みのエンディングでした。
母娘2人きり、愛に飢えていたアレッサがお母さんを独占できるという意味ではハッピーエンドなのかも…と終わり方も美しかったです。
◆ゲーム版にもほんの少し手を出してみた
映画鑑賞後、ゲームはどんななんだ!?と、ホラーゲーム好きの猛者な友人(※過去記事「クロックタワー」参照)に借りて初代プレステ1の1作目に手を伸ばしたものの…
あまりにも怖すぎて即リタイア…!
アイテム(主に銃)で襲ってくる敵を倒していくのですが、かなり操作が難しくてゲーム音痴にはキツかった…!敵が近づくと鳴り出す音にビビりまくり、視界の悪い中を自分で操作して歩かなきゃいけないというビジュアル面の恐怖が圧倒的でした。
かなり序盤の学校までしか行けてないんですが、ライター照らして暗いところを歩くとことか、すごく映画に似てたところがあった気がします。
その後ゲームセンターにあったガンシューティング版を友人とプレイ。
サイレントヒルシリーズではマイナーなタイトルなのかもれませんが、画面を撃ってモンスターを倒しながら進むというものです。
簡単にバンバン攻撃できるのと、自宅で1人でやるシチュエーションじゃないというだけで、一気に怖さが希釈された感じがしました。
それでも衝撃的だったのは三角頭!!
扉破ってくる映画の登場シーンとそっくりな場面があって、あの虫も画面いっぱい覆い尽くすように出てくるのが嫌すぎた。三角頭から攻撃喰らうとダメージが一気にきて、コンテニューになってしまうというやはり絶望感たっぷりのキャラクターでした。
アーケード版も、街からの脱出&子供の幻影を追っていくというようなストーリーで何となく映画に共通した雰囲気だったと思います。
街の建物1つひとつがよく似ていたし、道路が途切れて崖になってるところなんかもソックリ…映画は相当ゲームを忠実に再現したんだろうなあとこれだけでも少し原作のテイストを知れた気持ちになりました。
場面の切り替えや回想シーンの入れ方など〝普通の映画〟としてみると雑なところもありますが、そういう粗が気にならないくらい、没頭できる世界観が成立していて、元のゲームの大ファンだったという監督の原作愛が勝利した作品なんでしょう。
初代サイレントヒルのOP曲もすごい好きになりましたが、ちゃんと最初に使ってたんですね。
silent hill 1 soundtrack theme 1(intro)
ゲーム知らずに観てもすごく良かったし、ゲーム好きの人も絶賛というのに納得でした。