緊急事態宣言が出て「サスペリア2」4Kレストア版の上映が延期になってしまった…
今年4Kレストア版Blu-rayが改めて発売されるということで記念に期間限定公開が企画されていた「サスペリアPart2」。
「フェノミナ」も併せてプログラムされていたようですが、自分の中では「サスペリア2」がぶっちぎりで好きな作品なので何としてもこれだけは観に行きたいと思っていたのですが…
元々公開予定してた劇場は、新宿シネマート、心斎橋シネマート、京都出町座の3館のようです。
年明けに公開してた「ヒッチャー」は時間差で各地域に公開館数がちょっとだけ増えてたみたいだけど、こっちはこの3館で打ち止めなのかな。
映画館も苦しい状況が続いていると思いますが、シネマートさんのホームページみると「上映中止」とは書いておらず「スケジュールを検討する」と書かれているので再プログラムが確認できたら必ず観に行きたいと思っています。
せっかくの楽しみが延期になってしまった代わりに!?といっては何だけど…
ランベルト・バーヴァ監督、ダリオ・アルジェント製作共同脚本の映画館を舞台にしたホラー、「デモンズ」をおうちで鑑賞。
アルジェントらしい作品かといえばそうでもないけど、80年代特有のポップさとイタリアンホラーの自由なアート性がミックスしてて気軽に楽しく観れる作品でした。
冒頭から鳴り響くクラウディオ・シモネッティの景気のいい音楽。
謎めいた仮面の男に後をつけられて女子大生シェリルは1人怯えながら駅を彷徨っていましたが…
仮面男は仮装して試写状を配っていただけだったようで、思わぬタダ券をゲットしたシェリルはその夜友人とともに映画館に出掛けることにしました。
たどり着いたメトロポールという劇場は改装したてで中々素敵な映画館。
ホールには上映作品のアイテムと思われる謎のバイクと日本刀、鉄仮面が展示。これは頭悪い映画やってくれそうで期待大。
しかしマナー最悪なグループの人たちが展示物を手にして大はしゃぎ、その内の1人の女性が仮面を被って遊んでいると顔を傷つけてしまいます。
シェリルたちは普通に映画を観始めていましたが、その内容はノストラダムスの墓を暴いたら呪いにかかって次々に人が死ぬという期待を裏切らぬB級映画でした。
しかし!!現実の世界にて先程仮面をつけて負傷した女性が気分を悪くしてトイレに駆け込むと突然悪魔のような姿に変身!!
「俺は人間をやめるぞ!」の元ネタはこれ!?
悪魔と化したこの女性が人を襲い、襲われた人も次々に悪魔化。パニックになった人々は出口に駆けつけますが扉は謎の壁に塞がれ映画館は脱出不可能な密室と化してしまいました…!
この作品の大きな特徴はやはり「映画の中の出来事が現実の世界に繋がる」というところ。
公開当時は「キュービックショック」などというよく分からん宣伝文句が付いてて過剰に煽られていたというのも時代を感じさせます。
てっきり映画を観ながらデモンズを倒す方法を探っていく凝ったストーリーになっているのかと思いきや早々にぶった斬られるスクリーン。
設定が特に活かされるわけでもなく丸投げってところがイタリアンホラーらしいです(笑)。
しかし「現実と虚構の境目が曖昧になる」という設定はビデオオタク世代の感覚を投影しているようでどこか80年代らしさを感じさせます。
そしてもう1つの大きな特徴はゾンビなのか何なのかよく分からない悪魔。
ロメロの「ゾンビ」と比べると動き早め、単純に人を食べにかかるのではなくもう少し高めの知能で襲ってくる感じ。
制作陣曰く3形態に分かれてるらしく、
・極めて人間に近いタイプのヤツ
・人間の皮膚の下から異質な皮膚が現れるヤツ
・人間の体内から生まれてくるヤツ
とゾンビとよりしっかり怪物してるクリーチャー。
特殊メイクは「フェノミナ」を担当された方みたいですが(セルジオ・スティバレッテイ)変身シーンは中々の見もの。
特に序盤デモンズ化する女性の、歯が抜け落ちてゆーっくりと牙が生えてくるところはよく出来ていて見惚れてしまいます。
また「密室ホラー」というのも本作の大きな特徴になってますが、映画館から出られなくなるという設定が何ともいえぬ非日常感。
クライマックス、キャラクターの1人が客席をバイクで駆けながらデモンズたちを蹴散らしていくところは「何往復すんねん!」というしつこさ、狭い空間を生かしたアクションになっておりヘビメタな音楽とあわさって不思議な爽快感です。
密室ホラーといいつつ、外の世界の様子も度々映るのも面白いところで街の看板の文字はよく見ると英語でもイタリア語でもなくドイツ語。
撮影地はベルリンだったそうで、時折映るカイザー・ヴィルヘルム教会が印象的です。
閉じ込められた映画館にて扉を壊した先に謎の壁が立ち塞がっていて絶望するシーンはドイツ東西分断への深い社会的メッセージが…
…あるとはとても思えませんが、どこか異国感漂う夜の街も開放感があり、夜中に1人でみると別世界にトリップしたような高揚感に包まれます。
クライマックスでは映画館にヘリコプターがいきなり落下!!ここも非日常的な景色にワクワク。「ゾンビ」のラストに目配せしたようなサービスに嬉しくなってしまいます。
90分足らずの短い作品なのでキャラクターは掘り下げる間もなく次々に退場していきますが、アルジェントと縁のある人たちがチラホラ。
バイク無双がカッチョいい青年ジョージは「オペラ座血の喝采」で変態やってた人…!!
「エイリアン2」みたいに換気口這ってたら悲惨な目に遭うイチャイチャカップルの女の子はフィオーレ・アルジェント…!!(アルジェントの長女)
冒頭から出てきた謎の鉄仮面男は後に「デモンズ95」を撮るミケーレ・ソアヴィ監督…!!(本作では助監督も担当)
尖った棒で串刺しにされるというルチオ・フルチっぽい死に方にワクワク。
そして映画館のもぎり嬢(←死語)を演じているのは「サスペリア2」に出てたニコレッタ・エルミ…!!
あのトカゲ刺してた女の子、こんなに大きくなったのねーとなぜか感慨深い気持ちになります。
終末感漂うラストなのに何故か観終わるとスッキリ。
アルジェント監督映画ではないけど他作品との繋がりも所々で感じれられて楽しい1本です。