どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ウォー・ゲーム」…高校生ハッカーvs核戦略プログラム

ジョン・バダム監督、「スニーカーズ」のウォルター・F・パークスが脚本を手掛けた1983年公開作品。

ウォー・ゲーム [DVD]

ウォー・ゲーム [DVD]

  • 発売日: 2002/02/08
  • メディア: DVD
 

コンピュータオタクの高校生がアメリカ空軍司令部のコンピュータに侵入。
核戦略プログラム・ジョシュアとのゲーム対決が現実世界に持ち越されてしまい核戦争の危機に!?

米ソ冷戦・コンピュータ黎明期という当時の世相を反映しつつ、カラッと明るい80年代ムービーに仕上がっている良作です。

 

まず冒頭オープニングシーンが秀逸。

核ミサイル発射管理棟で働く2人の男の下に「ソ連からの攻撃を受けた」とミサイル発射命令が下されます。

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定められた手順に従って発射手続きを進める2人でしたが、「2000万人の命がなくなる」とボタンを押すのを躊躇う職員。
隔離された密室にて外の状況など全く分からないまま恐ろしい命令に従わなければならない重圧。

しかし…!!実はこれは発射ボタンを押せるかどうか職員の適性検査をみるための試験でした。

あーよかったと胸を撫で下ろすものの、核管理を人に任せるのは間違いではないか、コンピュータに全てを任せるべきではないかと議論に発展していくこの幕開けが非常によく出来ていて一気に引き込まれます。

 

そして場面は変わってシアトル。コンピュータオタクの高校生デビッドは学校をサボってゲーム三昧していました。

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ナムコギャラガを夢中でプレイするマシュー・ブロデリック

成績は学校のコンピュータにログインしてFの科目を改ざんとやりたい放題、フェリスみたいな自由人。

ある日ゲーム会社の新作を発売日前に手に入れてやろうと目論んだデビッドは誤ってアメリカ空軍のプログラムに接続してしまいます。

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↑なぜかパソコンの脇にある固定電話

音響カプラでアナログ⇄デジタルに変換して通信を行っていた時代。電話回線でパソコンが繋がってるなんて現在と異なりすぎるネット環境でカルチャーショックですが、接続したい場所の周辺の電話番号に総当たりしてクラックするってのが面白いです。

相手のコンピュータにセキュリティはかかってるけど、パスワードを打てば開かれる裏口が存在している…開発者の経歴を図書館で調べてパスワードを探るところはめちゃくちゃアナログな手法(笑)。

今の時代から考えるとすごいザルに思えてしまいますがコンピュータ使ってる人が極めて少なかった時代にはこんなことがあり得たのかしら、と新鮮な世界です。

 

そうこうするうち”ジョシュア”というモニタ越しに話しかけてくる謎のプログラムがデビットと接触します。

ジョシュアのことをゲーム会社の新作と勘違いしたデビッドは「全面核戦争ゲーム」なるものの対戦プレイを開始、ソ連側となってラスベガスを攻撃地に選択しますが…
なんとジョシュアの正体は対ソ連の核戦争シュミレーションを行うスーパーコンピュータでした。

ゲームとリアルの区別がつかないジョシュアは「実際にソ連から攻撃を受けた」とゲーム上の出来事をそのまま軍に通達してしまい、勘違いした政府は右往左往。

迎撃ミサイルと偵察艦隊が配備されますが、その動きをみたソ連がさらに勘違いし警戒を高めてキューバ危機のような恐ろしい事態に…

「一方が核攻撃をしたらもう一方が直ぐに報復攻撃が出来るようになっているのでお互い絶対に攻撃しない」という抑止力の考え方で成立してた世界がバグ1つでこんな取り返しのつかないことに…冷戦時代にはかなり現実感のある〝もしも〟だったのではないでしょうか。

画面上にて無数の核ミサイルがアメリカに着弾する画面にはゾッとされられ、「ゲームの世界だけにしといてくれ」という気持ちにさせられます。

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デビッドの奔走で何とか政府もバグを認めてゲーム上の攻撃だとスルーするものの、今度はジョシュアがアメリカ側の反撃として本物の核ミサイル発射コードを入力してしまいます。

「もうコンセント抜いて電源切ったったらええねん!」ってメカ音痴は思うけど、鯖落ちしようが何だろうが反撃だけは絶対実行できるようにプログラムされてるってとこがリアルっぽい。

オチは人間が全くその境地に至ってない戦争の無意味さを機械に理解させるという物凄い皮肉で、ハッピーエンドながらよく練られたお話になっていました。

 

大人がちょっと間抜けすぎないかなーとか色々ツッコミどころもありつつAIものの走りとしてもよく出来てると思います。

シリアスなテーマを扱いながら高校生を主人公に全体的にはエンタメ映画してて子供でも観れる作品なのが嬉しいところ。

途中主人公がアドバイスを求めに訪れるオタクの面々の濃さには秋葉原を訪れたような気分になりますが、「本当に機械が好きなごくごく限られた人間しかコンピュータができなかった」という時代、そこで無双するオタクの万能感はみていてとても楽しいです。

主人公とクラスメイト女子とのやり取りなど80年代らしいゆるさを感じさせるシーンもたっぷり、個人的には主人公家族が食パンに生のコーンを転がしながらバターをつけて頬張るという謎シーンに爆笑でした。

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↑特に意味はないけど突然挟まる食事シーンって昔の映画特有の感じがしていいわー

冷戦時代の不安、コンピュータの先駆、物質的豊かさに満ちた能天気さと、多方面で80年代を満喫させてくれる作品でした。