ラストが衝撃的なホラーとして有名な作品。
タイトルだけは知っていて気になっていたのを初鑑賞してみました。
ジャケットはチープな感じですが、監督は「ナバロンの要塞」「恐怖の岬」のJ・リー・トンプソン。
主演は「大草原の小さな家」でお姉ちゃん・メアリーを演じていたメリッサ・スー・アンダーソン。
大どんでん返しに賛否両論あるようですが、イタリアのホラーをみる人間には矛盾点は大きな減点材料にはならない(笑)。
むしろ凝ってよく作られたホラーだなーと感心、ジャーロっぽい雰囲気で個人的には大変好みの作品でした。
◇◇◇
バージニアは名門私立高校の優等生グループ〝トップテン〟の1人。
4年前のある事故によって、前後の記憶を失い、時々恐ろしい幻覚症状を起こすようになっていた。
そんなある日グループのメンバーが次々に失踪する事件が起きる…
〝トップテン〟とやらのメンバーが嫌な奴らばかりでドン引き。
気に入らない奴のビールにネズミを仕込む、跳ね橋を激走してチキンレースする…やりたい放題のDQN高校生たち。
実家は太いお坊ちゃま&お嬢様たちのようで、ホラー映画で死ぬ若者としてはこれ以上ないという面子であります。
冒頭真っ先に死ぬのは女学生バーナデット。剃刀で喉スパーッが勢いよく、犯人の黒い革手袋がアルジェントっぽい。
2人目の犠牲者はフランス大使の息子・エチエンヌ。バイクのメンテ中に何者かが彼のマフラーをタイヤに巻き込ませて死亡。
3人目の犠牲者は、グレッグ。筋トレでダンベルをあげている最中に股間に重しを置かれ絶叫。持ち上げられなくなったダンベルが首に直撃して死亡…
殺人シーンはそれぞれユニークで面白いです。
なぜか死体が発見されず行方不明扱いになる犠牲者たち。
合間に主人公の回想が挟まれますが、4年前に母親とドライブ中に事故にあったバージニアは現在父親と2人暮らし。
特殊な手術をして事故から回復したものの、記憶障害が残ってしまいました。
亡くなった母親は貧しい家の生まれだったらしく、トップテンをはじめとする町の人に見下されていたようです。
事故のせいで分裂症気味になった主人公が犯人なのか…亡くなったお母さんの怨念が取り憑いたのか…
そんな王道ストーリーを予想していたら案の定、第4の犠牲者・アルフレッドがバージニアに刺されて殺されてしまいます。
第5の犠牲者・スティーブもバージニアに手料理を振舞われている最中、バーベキュー串を口にぶっ刺されて死亡。
さらに自宅の浴室で友人アンの死体を発見したバージニアは自分が殺したのではないかと精神科医に相談しますが、医者は「そんな死体はどこにもないよ」と彼女をなだめます。
全てはバージニアの妄想なのか…誰かの悪戯なのか…
そんな中バージニアの18歳の誕生日がやって来ました…
(以下ネタバレ)
娘のあとを追った父親が離れの家を訪れると、殺した者たちの死体を並べて〝お誕生日会〟をするバージニアの姿が…
殺された人間の死体が発見されないのが謎でしたが、全てはこの光景のために…狂気が炸裂したグロテスクな景色が壮絶です。
バージニアは驚いた父親も刺殺。
「今度はあんたの番よ。私の可哀想な妹よ…」と不可解な台詞を吐いたバージニアが、死体だと思われていた1人の身を起こすと何と彼女もバージニア…??
真バージニアが偽バージニアの顔を引っ掴むと、マスクが剥がれ落ち、中から出てきたのは友人のアン。
なんとバージニアに罪を着せるため、アンがバージニアの肉マスクを被ってなりすまし、酷い殺人を繰り返していたのでした。
「お前はイーサン・ハントかっ!!」とツッコミたくなること必至のびっくり展開。
実は2人は腹違いの姉妹で、その昔アンの父親はバージニアの母親と浮気していました。
愛人とその娘のせいで、自分の母親が家を出て行ったのだと憎しみを募らせていたアンが凶行に…
バージニアに薬品を嗅がせて眠らせ、犯行事に入れ替わっていたことが説明されるも、かなり難易度高そう。
死体処理も早すぎるし、声とか体格とか誰か気付くんじゃないかなーと現実的に考えるとかなりの無理ゲー。
でも犯人の動機には説得力を感じて、陰鬱家族ドラマがビンビンに感じられるストーリーに自分は魅力を感じました。
愛情深そうなお父さんとは実は血の繋がりがなかったというのにもびっくりです。
貧しい家の生まれで金持ちの愛人になったけど、男から別れを突きつけらて1人バージニアを出産。
その後また金持ちの男と今度は子連れで再婚し、見返してやろうとわざわざ同じ街に舞い戻ってくる。
「娘がイケてるグループの友達とお誕生日会を開くまでになったわ…!!ついに私も勝ち組よ…!!」みたいな思考になってるオカンが闇深すぎる…
しかしアンが嫌がらせでバージニアのお誕生日会にぶつけて自分もパーティーを開いたため、皆そっちに行ってしまい、誰も来てくれなかった4年前のお誕生日会。
いたたまれない空気の中、ヤケ酒あおるオカンと2人きりとか主人公が気の毒でたまりません。
アンは最後にバージニアも殺してすべての罪をなすりつけようと計画していましたが、返り討ちにあって死亡。
しかしそこに偶然警察がやって来て、バージニアがアンを刺す場面を目撃。
誤解されたまま全部彼女の犯行ということになってしまいそう…
家族も友人も全てを失った主人公の姿とともに流れてくる「ハッピーバースデートゥーミー」の歌声…容赦ない陰鬱エンドが胸にどっしり来ました。
冷静に考えるとアンの復讐劇は回りくどすぎるし、荒唐無稽であることは確か。
思わせぶりで結局何だったのかとなる場面も多数存在します。
特に剥製作りが趣味のアルフレッドの不気味さ(笑)。
行方不明の友人の死体の模型をつくるって悪趣味すぎてドン引きです。
実はこれがアンの差金で、肉マスクを作ってもらっていた協力者だった…とか、浴室でアンが死んでいるシーンが主人公の幻覚でなくアルフレッドに作ってもらったダミーの死体だった…とかそういう設定があったら納得したかも…
この作品、ディテールをもう少し丁寧に活かせていたら、もっとかなり化けたような気がします。
この他にも、グループの一員・アメリアが別棟の前でプレゼント持って震えてるシーンが謎だったり、本筋に関係ないヒロインの手術シーンにやたら力が入っていてグロかったり…
思わせぶりで伏線丸投げなところ、ラストにどどーん!!と唐突に真相が明らかになるところなど、良くも悪くもイタリアのジャーロに近しい印象。
けれど人間の心の闇、陰鬱な家族関係をじっとり描いている独特の暗さもジャーロっぽくて、自分はとても楽しんで観ることができました。
俳優陣は主演のメアリー・スー・アンダーソンはもちろん、他のメンバーも〝鼻持ちならない金持ち高校生〟の嫌なところが出ていて、皆良かったように思います。
主人公がこのグループにずっと馴染んでなかった感じがして、どうにも切なかったですね…
日本版のDVDは冒頭の曲がファンキーな洋楽になっていて、初見の自分は80年代スラッシャー映画らしいと違和感を感じずに観れてしまったのですが、元々はもっと雰囲気のある曲だったよう…ちゃんとしたバージョンがリリースされるといいですね。
海外版のジャケ写も大概だけどこっちの方が好きかも(笑)。
素晴らしくホラーしてるラストの画。あれだけでも一見の価値ありの作品だと思いました。