どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「WEAPONS/ウェポンズ」…整合性より勢い重視!!怖くて笑えて痛みあるラストがとてもよかった

ある町で小学校の生徒17名が突然失踪。

自宅防犯カメラには深夜2時17分に一斉に外に駆け出す子供たちの姿が映されていた。

担任の教師、生き残りの生徒、保護者など複数のキャラクターの視点が交錯する中驚きの真相が浮かび上がっていく…

漂流教室っぽいストーリーで面白そうだと思っていたホラー映画「WEAPONS/ウェポンズ」を、年末駆け込みで鑑賞してきました。

128分長さを感じさせず、勢いと吸引力に満ちていてとっても楽しかった!!

情報を極力シャットアウトした状態で鑑賞に臨みましたが、何も知らないまま見るのがベストな作品かと思われます。

 

※以下ネタバレあり/内容に触れているのでご注意ください。

 

SF系に行くのか、オカルト系に行くのかどっちだろう…とワクワクしながら見守りましたが、そっちかー!!となる怒涛の展開。

謎めいた語り口や人物設定はスティーヴン・キング作品、恐怖が振り切れてシュールギャグになるところは楳図かずお作品を彷彿させたりして、非常に好きな世界観のホラーでした。

加えて「マグノリア」にインスパイアされたという、登場人物によって視点が変わり時系列が交差するスタイルがユニーク。

1人目の人物パートだけ長尺だったり、繰り返し部分に来ると潔くバッサリ切られるなど、粗っぽく感じるところもありましたが、「絶対碌な奴じゃない」と思った人物が別視点サイドでみると思わぬ人間性が垣間見えたりしてとても面白かったです。

 

1人目のキャラクターは、女性教師・ジャスティン。

受け持ちクラスの生徒がほぼ全員失踪したことで「お前のせいだろ!」と保護者会で怒声を浴びせられる姿が気の毒。

車に落書きされるわ、脅迫電話が来るわ、散々な目に。

同情してみていると、この人のアカン面が次々に暴露されていき困惑。

酒瓶を買い込むあたりお酒に頼りがちな人なのかなと思ったら、過去に飲酒運転で逮捕歴ありなことが発覚。

さらには妻子持ちの警察官に誘いをかけてベッドイン、男にも依存するタイプっぽい。

けれど他パートに移るとさらにまた別の一面がみえてきて、いじめっ子生徒にちゃんと注意していたり、様子のおかしい生徒・アレックスに優しく声をかけるなど、教師の職業には適性があって本人も仕事にやりがいを感じているようでした。

精神的に脆いのかと思いきや、あんな怖い目にあっても街に残り続けるなど意外に強メンタル(笑)。

自分の主張を曲げずに立ち向かう勇ましい面もあって、弱さと強さの同居した人間味溢れるキャラクターで素晴らしかったです。

 

2人目のキャラクターはジョシュ・ブローリン演じるアーチャー。

保護者会でジャスティンに罵声を浴びせていたお父さん。

我が子が行方不明になったら我を失って怒りをぶつけたくなる気持ちも分からなくないけど、どうやらカッとなるタイプのよう。

妻と一切会話せずに仕事場に向かう姿からは、事件以前から家庭があまり上手く行ってなかったのかな、と思いました。

アーチャーの息子がアレックスをいじめてた生徒だと発覚するところではやっぱりー!!と納得。

夢の幻覚の中で「伝えてなかったけど愛してると言いたい」などと話していましたが、荒っぽい気性の人で普段子供に強く当たりがちだったのかも…そんな愛情不足の息子が学校ではいじめっ子に…負の連鎖が垣間見えるようで人物背景を想像させるところがとても面白かったです。

余談ですが、必死で子供を追いかけるジョシュ・ブローリンが先日見た「ジャグラー/ニューヨーク25時」のジェームズ・ブローリンとオーバーラップ、しかもどっちもフィジカルに強い(笑)。   

しつこく起き上がるウェポンゾンビを何度も拳で捩じ伏せるところでめっちゃ笑いました。

 

3人目のキャラクターは警察官のポール。

浮気警官でやってることはかなりのクズですが、束縛的な嫁との夫婦生活はかなりしんどそう。

妊活のプレッシャー、妻の帰宅が早まってうんざりしている様子など、無理を強いられた結婚生活を送っていそうで哀れに映りました。

さらには職場の上司(警察署長)が嫁の父親らしく、義父に気を遣いまくり。絶えず息の詰まる環境にいるのが気の毒。

酒に手を出して浮気に走った日はたまたま何もかもが上手く行かなかったアンラッキーデイ。

ただでさえストレス過多な警察官の職務、逃げ場のない生活が彼を追い詰めたんだろうなーと思いますが、注射器1本で大パニックになるなどそもそも警官に向いてなさそうな気が…

そしてあんだけエイズだなんだと騒いどいて不倫相手と激しいセックスするのどうなん(笑)。

さらにはジャンキー男に暴力を振るってしまい、隠蔽に走るなどどんどん堕落。

本筋への絡みは低めなのですが、意志の弱い人、自分の感情をコントロールできない人のどうにもならなさ、その転落っぷりには嫌なリアルさがあって引き込まれるパートでした。


4人目のキャラクターは麻薬中毒男のジェームズ。

街のはずれでテント生活、ヤクを得るためなりふり構わずなんでも窃盗するクズ男ですが、ズレた挙動がどこか滑稽で笑ってしまいます。

侵入した家があんな不気味ハウスなのに平気で居続けられるのがすごい。

動かないウェポンズ夫婦をみても銀食器を拾い続けるのどんなメンタルしてんのよ(笑)。

母親に援助を求める電話をかけるも速攻で断られていましたが、若いのに人生何があったんだー!?

かなり理不尽な目にあっているはずなのに、絶妙に笑いを挟んでくれるキャラで面白かったです。


5人目のキャラクターはマーカス校長。

物腰柔らかで事件に穏便に対処しようと奮闘、保護者会で教師のジャスティンをちゃんと庇ってくれるなど凄くいい人そう。 

この人が2章の終わりで走るゾンビさながらに襲ってくるのにびっくり。

このシーンを後にまで取っておいた方がよかったんじゃないかなーと思いましたが、穏やかだった人の豹変っぷりが輪をかけてホラー。 

ゲイの恋人をグロテスクに殺す場面も2人がラブラブそうだっただけに余計に残虐に映りました。

隠蔽警官やジャンキー男が死ぬのはともかく、この人だけ割に合わない死に方に思えましたが、生徒にフレンドリーに接するジャスティンの教育姿勢を戒めていたマーカス校長。

アレックスの異変を感じ取っていたジャスティンが強く踏み込めなかったのは、学校の「生徒に深く干渉するな」の教育方針があったからなのかも…(学校サイドだけでなく保護者サイドがそういう方向性を望んだからかもしれませんが)

善人校長で全く悪くないはずなのに、〝学校責任者〟である彼が無惨に死ぬところがシビアだなーと、厳しめホラーの世界観に圧倒されてしまいました。


そしてこの校長パートで、事件の黒幕がアレックス家に住む伯母・グラディスだったことが発覚。

急に出て来てすべてを掻っ攫っていくババア(笑)。

ピエロ風メイクにオレンジ色のウィッグ、みるからに関わりたくない人のオーラ全開。

正体は最後までハッキリ明かされませんが、魔女/呪術師的存在の様子。 

対象者の所有物と植物の枝に自分の血を混ぜておまじないを行うと、相手を意のままに操ることができるようです。

途中で寄生虫のテレビ番組が意味ありげに挿入されていたので、パラサイト的宇宙生物かと思いましたが…

いずれにせよ、長い年月を生きた謎の生命体で自分が生き長らえるために子供たちを攫った邪悪な存在であることが窺えます。

 

そうして物語の最終章は6人目、唯一行方不明にならなかった生き残り生徒・アレックスのパートへ…

アレックス一家がある日突然グラディス伯母さんに支配された恐怖の様子が描かれていきます。

お父さんお母さんを人質にとられ、誰にも助けを訴えることができなかったアレックスは、クラスメイトの所有物を盗んでグラディスに引き渡します。

ウェポンズ化した人間も食事は摂らせなければならないらしく、缶詰スープを飲ませる様が悲痛。

トイレは垂れ流しだったのか、2人でも無理だろうに17人はあり得ないでしょ…などツッコミどころは多々ありますが、家族の秘密を口外できない虐待児の苦悩、ヤングケアラーの孤独など、作り手の描きたいこと、強い思いが伝わってくるようでした。

 

アレックスパートは監督の子供時代の体験が反映されているらしく、ザック・クレッガー監督の親は依存症で、自身もアルコール依存症を経験。また本作を制作するきっかけもアルコール依存の友を事故で亡くしたからだったとか。

空になった缶詰の缶が部屋中に置いてあるところは「知らない間にもうこんなに飲んだの!?」となる親の空けた酒瓶の量。

フォークで顔をつつく様は「飲むのやめなよ」とどんなに嗜めても絶対に言うことを聞かず相手がひたすら健康を害していく様を見守るだけに終わる無力感と罪悪感。

「シャイニング」の如く怒りの形相の親に追い立てられる様は酒を切らして機嫌の悪いときに急に暴力を振るわれる恐怖。

荒唐無稽ホラーなようでリアルな人生の恐怖を感じさせて、胸に突き刺さりました。

 

アレックス一家が邪悪な存在に一瞬で支配される描写には説得力があったものの、警察の家宅捜査をやり過ごしたところは説明的に描きすぎている気がしてやや残念。

あんなに怪しい伯母さんの身元を調べない警察が無能すぎるとか、両親が仕事休んだら誰かが通報しないかなとか色々考えてしまうところもありましたが、「とにかくこのババアが強えんだよ!!」と納得してしまうだけの凄みがあったので、なんだかんだ勢いでみれてしまった気もします(笑)。

 

利用されるだけだったアレックスがついに反撃にでるクライマックス。

ババアと子供たちのシュールすぎる追いかけっこに爆笑。

なぜかこの場面だけウェポンズ走りでなく、走るゾンビみたいでしたが直線走りで家屋を次々と突き破っていくアクションの躍動感が凄い。

そして「死霊のえじき」ばりのグロ描写が炸裂、R‐18も納得で嬉しい驚き。カタルシスでいっぱいになるババアの断末魔。

 

けれど魔法のように全ての呪いが解けるわけではなく、ハッピーエンドとは言い難い結末に深い余韻が残りました。

アレックスのお父さんとお母さんは重い後遺症が残ってしまったとのこと。 

現実アル中なり何か依存症になった人はそう簡単に戻って来れないよね…リアルな結末が切ない。

帰ってきた子供たちも「1年後に話せるようになった子もいるらしい」と言うあたりなかなか厳しそうな様子で、傷ついた子供が立ち直るのもそう容易なことではないのだとシビアな着地点が胸に沁みます。

一度起こってしまったことは取り返しのつかないもの。  

見知らぬ女の子のナレーションに始まってナレーションで終わる演出はどこか寓話的で、何かに溺れないように、身近な人たちを大切にするように…ここまでの惨劇になってしまった大人の責任を問うような真面目さを感じました。


表向きは整然としているけれどどこか冷たく映る街の人々。

塞ぎ込んだアレックスをクラスメイトは完全に無視、大人が周りにいても誰も気付かなかった…

アーチャーが「監視カメラを見せて」と協力を頼んだときに暗い顔で断ったお母さんがいましたが、皆個人に終始しているというか、〝無関心や繋がりの希薄さ〟を感じさせるところが静かに虚しく怖かったです。

人と繋がるべきなのか、距離を置くべきなのか、何が正しいのか分からないような時代。でも結局最初に犠牲になるのが弱者家庭の子供だったというところに重たいものが残りました。

 

全体的にジャンプスケアを多用しすぎに思えましたが、悪夢のシーンはそれが顕著で全体から少し浮いている印象。

ジャスティンやアーチャーの罪悪感の夢にしてはグラディスが出てくるのが矛盾していて、グラディスが「嗅ぎまわるな」と警告のために悪夢をみせたのかな、と思いました。

(「家で起きたことを口外するな」とグラディスがアレックスを脅していた場面。アレックスが帰宅した際に「よしよし、言わなかったわね」などと全てを知ったような口調で語っていたあたり、グラディスには遠く離れた他人の意識を感知したり干渉する能力があるのかもしれません)

 

アーチャーの夢では家屋の真上に巨大な銃が浮かび上がっている不思議なビジュアルが出現して、強烈なインパクト。

このシーンを見た時は「子供を武器化する宇宙人が出てきて大暴れするのかな」などとSF路線を予想していましたが大外れ(笑)。

ところどころで全体と嚙み合っていないように思えるシーンもありましたが、サービス精神旺盛で怖い/不気味な画がたくさん。

カメラワークもかなり拘って撮られているようで、人物の顔を交互に映したり、異変のある背景をさっと映したり、緊迫感を高めていてかなり効果的でした。

 

今時の伏線凝らし系ホラーかと思いきや、勢いのあるB級映画していて面白かった。

怖いし、怖さを振り切ってシュールで笑えるし、とっても楽しい2時間で大満足。

公開から1か月たっての鑑賞でしたが、若いお客さんが多く夜の回なのに比較的席が埋まっていて盛況。でもリピーターの方が多かったのか、追いかけっこ場面で誰も笑ってなかったのが寂しかったです(笑)。

(パンフも購入、役者さんのインタビュー多めで嬉しい)

 

整合性云々よりも、監督の強い思い・描きたいものが理屈を超えて伝わって来る感じで、依存症や孤立することの恐怖がまざまざと迫って来る…深いものを感じる物語で存分に楽しませてもらいました。

 

 

◇◇◇

相変わらず新作映画をあまり観れていないのですが、それでも今年は自分にしてはかなり観れた方。

本数は決して多くないけれど、新作旧作両方とも、いい作品に出会えて充実した1年でした。

来年も映画鑑賞&ブログをマイペースに楽しみたいと思います☆彡.。