中古のVHSの叩き売りで発掘、パッとしないスプラッターかと思ったら意外に面白かった1作。
「ラストアクションヒーロー」と「ナイトミュージアム」を足したような…??子供の心に戻してくれる、ファンタジーとコメディ色の強い楽しいホラームービーでした。
主人公ポールはお坊ちゃま大学生。
授業に平気で遅刻するわメイドに課題レポート書かせるわといい加減な野郎ですが、80年代ならではのゆるくてまったりな雰囲気に癒されます。
ガールフレンドのチャイナとは関係が進展せず破局寸前のポールでしたが、ある日チャイナやその友人らと共に近くにできた蝋人形館に出掛けることになります。
どこか不気味な館主(オーメンの写真家、デビッド・ワーナー)、案内役には小人と大男が登場。展示物は殺人シーンを描いた不気味なものばかり。
度々映画化されている「蝋人形の館」の題材ですが、本作ではなんと生身の人間が蝋人形を演じています。
ちょっと動いてるよ!!(笑)…っていう反則技ですが、ある意味正しい演出、コスパもよさそうな使い方。
そしてこの蝋人形館、各ブースに近づくとそのお話の中の世界(異次元)に転送されてしまう、まるでスタンド攻撃のような仕掛けが隠されていました。
狼人間の展示コーナーに入れば狼人間に襲われ、バンパイアの展示コーナーに入れば吸血鬼に迫られる…
抵抗虚しくその世界で殺されてしまうと、被害者役の蝋人形と化してしまいます。
登場人物たちが殺される場面がある種短編ホラーとなっていて非常に凝っており、怪奇映画をたくさん観たようなお得感。
↑バンパイアの館。セットも凝ってて豪華…!!ヒロインが謎のタルタルスターキを完食するところで笑ってしまいますが ^^
通常のホラーだと一旦館に入ったらずっとそこで追いかけっこしそうなものですが、主人公ポールともう1人のヒロイン・サラだけが無事に館を抜け出しストーリーが続行します。
ビッチのガールフレンドがヒロインかと思いきや、キスもしたことない幼馴染枠の女の子がメインヒロインだったんですね…!!意外な交代劇。
(2人ともかわいい)
ポールとサラは警察に駆け込み蝋人形館が怪しいと訴えます。
大抵のホラーだと警察は無能パターンが多いのになかなか有能な刑事さんでここも面白い。
しかしエジプトミイラの世界に取り込まれて殺されてしまいます。
続いて古い新聞を調べたポールとサラはあの謎の館主が昔ポールの祖父に仕えていた執事だったことを知ります。
真相を追って祖父の古い友人を訪ねるポール。
なんと蝋人形館のマスターは悪魔と契約した不老不死の魔術師で、かつてポールの祖父が収集していた歴史上の悪人18名の遺物を横取りしていました。
悪人たちの犠牲者(蝋人形)が全て揃うと奴らは現実に蘇り世界が滅ぶ……急に壮大なストーリーに(笑)。
「実はあいつを長年探してたんだ」…ぽっと出のおじいちゃんのスピードワゴン財団感がすごいです。
ポールとサラは再び蝋人形館に戻り、展示物を燃やそうとしますが逆に異次元に囚われてしまいます。
処女のサラはマルキ・ド・サドの世界に夢中になってしまい鞭を打たれて恍惚の表情を浮かべます…
肉食系の元ガールフレンドは吸血鬼の餌食に、真面目そうな彼女はSMの世界へ…なんかこういうのいいですねー。
ポールも異世界転送されるも「虚構は虚構」と看破すると攻撃は無効になり1人無双を繰り広げます。
↑「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の世界もかなり凝ってます
ところが蝋人形館は新たな犠牲者を得てついに悪しき者どもが現実に復活…!!
そこにスピードワゴンじいちゃんが大軍を引き連れて現れ、最後は大バトルに突入。
悪者たちが驚くほど弱くアメリカ軍なら10秒で制圧できそうで世界の危機感はゼロ、けれど破茶滅茶で楽しいクライマックスです。
ポールはなぜかサド侯爵とフェンシング対決。往年のクラシック映画のようなアクションで侯爵役の人フェンシングやたら上手い(笑)。
18人の悪役が切り裂きジャックもいればボディスナッチャーもいてお前は実在の人物じゃないやろ!…と統一感もゼロですが、ホラー映画の古典は抑えられていて特殊効果がたっぷり拝めます。
館主(デビッド・ワーナー)が見せ場なくあっさり退場するのが非常に勿体なく恐怖度は低いのですが、館が燃えて崩れ落ちるお約束なエンディングにはスッキリ。
オープニングはスウィングジャズで、エンドロールはノスタルジックなロックで締められるのもよい仕上がり。
現実と虚構が入り混じる、「ナイトミュージアム」や「キャビン」などの先を行ったようなところもあり、夢のあるホラーで好きな作品でした。