「48時間」「ビバリーヒルズ・コップ」「ゴールデン・チャイルド」…自分が子供の頃には、TVの地上波でエディ・マーフィの映画がしょっ中放映されていた。
どれも傑作揃いだったように思うが、中でもお気に入りだったのは、「星の王子 ニューヨークへ行く」。
星の王子ニューヨークへ行く [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: パラマウント
- 発売日: 2019/04/24
- メディア: Blu-ray
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エディ・マーフィって正統派イケメンではないし、どちらかといえば”三枚目枠”な気がするけど、この映画では、本当にカッコいい王子様にみえる…!!
ものすごーく久しぶりにみたのに、大爆笑だったので、面白ポイントを少し語ってみたい。
ザムンダ王国ってどこ!?
エディ・マーフィ演じるアキームは、アフリカにある架空の国、ザムンダ王国の王子様。
そのお坊ちゃまぶりが突き抜けている…!
・目覚まし時計はオーケストラの生演奏
・歩く道には、花びらがまかれ、その上を歩かなければならない
・トイレには尻ふき係、お風呂ではアソコも洗ってもらい、歯磨きすら従者にやってもらう
21才の誕生日に、「国王が決めた、王子の花嫁修行だけをしてきた女性」と結婚することが決まっていたが、「自分で自分のことをやってみたい。」「自分の考えを持った女性と結婚したい。」と父親に直訴。
「息子は結婚前にハメを外したいのか…」と、盛大に勘違いした国王は、息子のアメリカ旅行を許可する。
冒頭のザムンダ王国のシーンは短いがめっちゃ面白い…!
南国風のインテリア、ターバンを巻いた女性たちの色とりどりの衣装、庭園を闊歩する動物たち…と平和で豪華な謎の世界観が確立されている。
婚礼儀式でいきなり臣下がソウルフルな歌を熱唱したり、美人花嫁がなんでも言うことをきくというので、犬の鳴き声を真似したり(しかも上手い!)、楽しくてゲラゲラ笑ってしまう。
全く美しくないニューヨーク
「アメリカのどこに行く?」…ダーツの旅くらいのテキトーさで、ニューヨークの中でも”庶民の町”クイーンズへ、お妃候補を求め、付き人のセミとともに出発…!
ニューヨークといえば、「ワーキング・ガール」だの、「プラダを着た悪魔」だの…オシャレな都会のイメージも強いが、「星の王子」では、80年代のニューヨークの殺伐とした感じが、遠慮ないギャグで描かれている。
(社会勉強のため)「安くて粗末な部屋がいい。」とリクエストして、出てきたのは殺人現場みたいなアパートの一室(笑)。
持ってきた大量のヴィトンのスーツケースは一瞬でスラれてしまう。
アパート階下には、老舗の床屋さんがあり、「ローマの休日」のアン王女のようにイメチェンするのかと思いきや…。
弁髪を2秒で切り落とし、カット終了、「8ドルだよ。」の世界…!
この床屋さん、謎の常連客が常にボクシング談義に花をさかせているという、「日本の田舎にもありそう」なちょっとノスタルジックな雰囲気がたまらない。
アキーム王子が賢くてカッコいい…!
こういう「異国の人間がアメリカの違う文化に触れて…」という物語の展開においては、「世間知らずだった王子がアメリカから多くを学んで成長する」というパターンが定石ではないかと思う。
しかし、「星の王子 ニューヨークへ行く」がいまだに新鮮なのは、アキーム王子がもともと最も賢く、心が豊かで、そんな主人公が自分で幸せをつかむ物語になっているところだと思う。
アメリカナンバー1じゃなくて、アフリカ人のアキームそのままが生き生きとしているという姿に、なんだか元気をもらえるのだ。
そんな頭のいい王子が恋に落ちたのは、黒人集会でスピーチをしていた女性・リサ・マクドゥーウェル。
ハンバーガーショップの娘という”庶民”だが、聡明で、「1人の男として接してほしいから」と身分を隠し、わざと貧乏なフリをしたアキームにも対等に接し、好意をよせる。
アキームは王子様なのに、傲慢なところがなく、謙虚で、物怖じしない優しい性格。
バーガーショップでは真面目に働き、強盗には果敢に立ち向かい、お金目的の女性には目もくれず、最後には「君と一緒になるためなら王位継承を放棄する」とリサに宣言…!
まるで少女漫画の王子様みたいなキャラだけど、エディ・マーフィが演じると、キザでもなく、暑苦しくもなく、だけど誠実で明るい青年にみえる。不思議なハマり役…!!
曲者ぞろいな脇キャラクター
しかし、まっすぐな主人公・アキーム王子の脇を固めるのが、なかなかの曲者揃いだからこそ、この映画がコメディーとして抜群に面白いのだと思う。
印象的なキャラクターを3人ピックアップしてみたい。
●セミ (演:アーセニオ・ホール)
付き人なのに王子よりしっかりしていない、お調子者の家来。
長いまつげをパチパチさせながら、”貧乏暮らし早く終わってくれ”な心情を雄弁に語る。
ボロアパートを劇的ビフォーアフターさせてバスタイムを決め込んでいたのに、アキーム王子の逆鱗に触れてしまったのはちょっと気の毒だったかも!?
本作では、エディ・マーフィとこのセミ役のアーセニオ・ホールが特殊メイクもしつつ1人4役こなしているのが話題になったそうだが、アキームたちが出かけたバーにいた女性もアーセニオ・ホールが演じている。
けど、このシーンでは、むしろ他のニューヨークの女性たちの方が怖い…!
カルト教信者や、「有名人になりたい」アピールの女性など、なかなか強烈。ここが1番ブラックな笑いに思えた。
●ダリル (演:エリク・ラ・サル)
リサの恋人で、アキームのライバルだったが、リサ本人の許可を得ずに家族同士で結婚の話を勝手にすすめようとして、結果彼女を怒らせてしまうことに…。
発明家の息子でボンボンなのに、集会で1銭も寄付しないドケチぶり。
「ハエが多いアフリカから来たなら分かるだろ?」…アキームの故郷をバカにしてマウンディングをとろうとするなど、嫌なヤツ描写が丁寧で、当て馬キャラとしては最高。
家族全員、発明品のワックス髪につけていて、座ったソファにもテカテカジェルがべったり付く…という、そんな絶妙なウザさのキャラ。
リサのお父さんで、マクドナルドそっくりのバーガーショップ・マクドゥーウェルを経営するという、なかなかの胆力の持ち主。
娘にはボンボン・ダリルと結婚してほしいと後押ししていたが、アキームの正体を知るやいなや、さっと手のひらを返し「王子様推し」になる強かさ。
でも、国王(アキーム父)の来訪で娘が馬鹿にされたと知ると、100万ドルの手切れ金を断り、「ここはアメリカだぞ!」と啖呵をきる…!親父さん、カッコいい!
ラストシーン、ちゃっかりロイヤル・ファミリー入りしている姿にはニンマリしてしまう。
子供の頃には気付かなかった小ネタ
改めてみると、色んな小ネタのある映画だな、と思った。
床屋さんでのボクシング談義や、黒人集会での台詞など、「多分知っていればもっと分かる内容」があるように思う。
自分が気付いたのは小ネタといえるほどのものではなく、周知の事実かもしれないが、改めてみて気にとまった点をいくつか挙げたい。
●「クンタキンテだ!」
床屋さんメンバーの1人が、アキームのことを「クンタキンテ」と呼ぶ。
これは1977年制作のアメリカのドラマ「ルーツ」の主人公の名前。
このドラマ自分は知らないのですが、黒人奴隷をテーマに描いた、当時大変話題になった作品のようで、「アフリカといえばクンタキンテを連想する人がいる」という人気ぶりだったということだろうか。
また「星の王子」でアキーム父役を演じているジェームズ・アール・ジョーンズが、「ルーツ」ドラマにも出演していたようなので、そちらへの目配せもあるのかもしれない。
●サミュエル・L・ジャクソンが強盗役で出演
アキームが働くバーガーショップを襲う強盗役がよくみると、若き日のサミュエル・L・ジャクソン!!
…といっても、サミュエル・L・ジャクソン自身、大変な遅咲きスターとして知られていて、この「星の王子」地点でもう40才!?
6年後大ブレイクする「パルプ・フィクション」のジュールス役では、逆に強盗カップルを名演説で撃退する大出世ぶり…!
しかし、1988年の本作において、サミュエル・L・ジャクソン当時40才、エディ・マーフィ当時27才というのは何とも不思議な感じ…。みんな貫禄があるなあ。
●「大逆転」の2人がホームレスに…
監督・ジョン・ランディスとエディ・マーフィが組んだもう1つの大ヒット作といえば、1982年の「大逆転」でこちらも傑作…!
「星の王子」でアキームとリサが街中をデートをしていると、道端にホームレスが。もっていた大金をひっそりと渡すアキーム。
なんとホームレスは「大逆転」で大没落したデューク兄弟で、「ツキが戻ってきた!」とにっこり…!ファンには嬉しいゲスト出演だ。
●See you next Wednesday を探せ!!
ジョン・ランディスの映画では、「See you next Wednesday」という架空の映画がカメオ出演!?しているのがお決まり。「星の王子」では、そのポスターが地下鉄の駅構内にポスターが貼られている。
毎回違う作品になっているようだが、ここではダン・エクロイド主演のSF作品のようだ。今観るとなかなか印象的で目につくなあ、と思った。
「2001年宇宙の旅」に出てきた台詞のパロディーだったのね。
80年代のコメディー映画だけれど、今観ても大爆笑だったし、ラストシーンにもすごく幸せな気分になった。
2020年には続編が予定されているそうですが、どうなんでしょうか…。
1つ気になったのは、過去にリリースされたDVDも、今出ているBlu-rayも吹き替えの人選がベストなのか、ということ。
自分は普段吹き替えで洋画をみないし、洋画声優さんにも全然詳しくない。
でも、エディ・マーフィの映画はTV放映の印象がいまだに残っていて、今回ソフトで観た吹き替えの声に「アレ!?」と思ってしまった。
ネット動画を探して、「これがエディ・マーフィの声だ!」と思ったのは、下條アトムさんという声優さん。
同様の感想がamazonほかあちこちであがっていて、「誰の吹き替えをソフトに収録するか」はメーカー側の重大考慮材料なのだと感じた。
それにしても、エディ・マーフィの映画、地上波でまたやってくれたらいいのになあ。毎週でもいいよ…!