どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「バニー・レークは行方不明」、めっちゃ怖かった…!

何この映画、めっちゃ怖い…!!

amazonの検索&注文履歴からの「この商品をチェックした人は他にこんな商品もみてます」にて、いーっつも出てきてたこのパッケージが気になって… …

バニー・レークは行方不明 [DVD]

バニー・レークは行方不明 [DVD]

 

TSUTAYAに行ったら、名盤復活コーナーにあったので、借りてみたら、めっちゃ面白かった…!!

1965年のモノクロ映画。主演俳優は以下の3人。

ローレンス・オリヴィエ…イギリス演劇界の重鎮

キャロル・リンレー…「ポセイドン・アドベンチャー」の歌手役

ケア・デュリア…「2001年宇宙の旅」のボーマン船長

 

この作品、ソフト化されたのが2015年と比較的最近で、映画評論家の町山智浩さんが「トラウマ映画館」で取り上げて注目されたようだ。

「子供が行方不明になる」…あらすじはこれだけ知っていればきっと十分…!

むしろ何も知らずにみるべき映画で、自分はもうジェットコースターに乗ったかのような108分、”怖い”と思うモノが詰まった作品だった。

 

以下ネタバレで(未見の方はバック)、この作品の恐怖ポイントを語ってみたい。

 

 

 

ここが怖いよ、バニー・レーク…!!

その1:保育園に迎えに行ったら子供がいない

主人公はアメリカからイギリスに越してきたばかりの女性・アン。保育園初日に子供預けて迎えに行ったら、自分の子だけいつまでも出てこない。

「順番待ってて自分だけ呼ばれない」とか「注文して自分の料理だけ来ない」とか、なんか日常あるあるな嫌なシチュエーション…。

それが、他のお母さんが皆子供連れて帰ってるのに、自分の子だけいないって、想像しただけで怖い…!初日の保育園の、絶妙によそよそしい感じが、さらに不安を煽ってくる。

 

その2:ホンマに子どもおったん!?が怖すぎる

子供が失踪する映画は色々あれど、バニー・レークが秀逸なのは、冒頭部分で子供の姿が一切映されていないこと…と評されているようだ。この描き方が本当に上手い。

保育園に行って預けて出てきたお母さん・アンの姿しか映っていなくて、「ほんまに子供おったん?」「ちょっとおかしいお母さんの妄想なん?」「もしかしてお母さんが子供殺すために嘘ついたん?」…と次々と恐ろしい疑念が湧いてくる。

引っ越してきて1週間足らずとはいえ、風邪ひいてて家にいたから誰もうちの子みてないの…ってそんなことある!?と、老警察官・ローレンス・オリヴィエとともに頭をひねってしまう。

 

その3:主人公の兄貴が不気味すぎる

主人公・アンと冒頭から仲睦まじげに電話で話し、子供が行方不明になったというと真っ先に保育園にかけつけ、保育士さんたちをネチネチと責めはじめる男・スティーブン。

「ちょっとクセ強いけど、お父さんも来てくれたんだねえ」と思ってみてたら、「私はアンの兄で、バニーのおじです。」えっ!?あなた旦那さんじゃないの?!兄妹が夫婦にみえるって相当不気味なんですけど…。こっから一気に恐怖度が加速する。

またスティーブンの顔が、人形っぽく整ってて、なんか怖い。

そしてどうやらこの人、全然子供・バニーの心配してるようにみえない…。まるでバニーという子供なんて元から存在してないかのように…。

そうすると次に怖くなるのは、主人公・アンの方である。

 

その4:主人公アンは狂っているのか!?

お話が進むにつれ、「あーあ、実在しない子供をつくりあげて1人で騒いでるヤバイ人なのか、この女性は…」とそういう目で主人公をみはじめてしまう。

アンは昔よく空想遊びをしていて、バニーと名付けた架空の友達がいたという。娘の本名はフェリシアだけど、あだ名でいつもバニーとよんでいる…。ここら辺のエピソードがでてきて”ちょっとおかしなお母さんなのかも”と思わせる。兄貴が必死に可哀相な妹の妄想を庇っているように思えてくる。

でも泣いている姿は本当に「子供を失った辛いお母さん」にしかみえない…。どっちだ!?どっちなんだ~!?

アン役のキャロル・リンレー、モノクロだととびきり美しくみえた。「ポセイドン・アドベンチャー」でも1人うずくまるか弱い人間の姿がリアルだったけれど、気の動転した母親のリアクションが本当に”どちらにも”みえて、絶妙な演技だった。

 

 

その5:近所のおかしな人も怖い

主要人物以外でも、あちらこちらで不気味なキャラクターが登場する。

まずは、保育園の経営者のおばあさん。

子供が夢(悪夢)について語った話を録音し、1人きいている姿がなんか怖い。しかしなかなか洞察力のある人のようで、あとから見直すと、「もしかしてレクター博士ばりのプロファイリングしてました!?」となるけど、それも含めて魔女のような不思議さがホラーである。

そして、もう1人は、家主のおじさん。

ズケズケ部屋に入ってきて、自分は詩人だの、テレビに出てるだの、女にモテるなど、アンに話しかけてくるが、虚言壁のおかしな人にしかみえない…でも主人公もこの人ともしかして同じなのか?と思わせる恐怖の煽り方がまた上手い。

(しかも、テレビには本当にでてたのね。おかしな人でも言ってること全部嘘とは限らない…ってどう接していいのか分からんわ…!)

引っ越してきた新しい土地の人たちが、全く親しみのもてない不気味な人たち、というのも、身近にあるなかなかの恐怖ポイントで、ここもストーリーを盛り上げていると思う。

 

 

その6:人形がめっちゃ怖い

なぜか自宅にあった子供・バニーの私物が全部盗まれるという怪事件の末、「そうだ、娘のお人形修理に預けてたんだった…!アレが証拠になるかも…!」と、夜中に「お人形のお医者さん」なるお店を訪れるアン。

ずらーっと並ぶ西洋人形たち。ひええ、もう勘弁して~。

人形って「言いなりに好きにできる子供」とか「自我のない子供」の象徴にもとれて、深層心理に訴えるような怖さがあるのかもしれない…それがこの作品の狂気にマッチしてて白黒映像が絶妙に怖い。

そしてこの場面ののち驚愕の展開に…!!

犯人はお前かー!!

狂気のお遊戯大会にゾゾゾーっともう凍り付きました。

 

 

終:大人のお遊戯が怖すぎる…!

「バニーおった!!」「ほんまにおったんか!!」と驚く一方、兄貴のやばさに呆然。おかしな妹を介抱する兄…とみせかけて、その逆だったのか~驚愕のミスリード

バニーが4歳になって殺そうとした…というのも、子供の自我が育つあたりで都合よく抹殺しようとする大人…ともとれて、なかなか怖いお話である。

娘を救うために、サイコパス兄貴を童心に返して支配しようと、子供の遊びをもちかけるアン。かくれんぼ、目隠し…どれも殺人鬼に追いかけられるシチュエーションとしては最悪なものばっかり…。

目隠しシーンで最初、アンがバニーの名前しか呼ばないのに「兄貴、嫉妬で暴走しそう」とヒヤヒヤしたり、信じられんくらい先回りしてくる瞬間移動に心臓ビクッ…!

最後のブランコ遊び、楽しそうな兄貴の顔に比べ、全く笑っていない妹・アンの表情…怖い、怖すぎるよ…!!

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プライムビデオ版に載ってるポスターもカッコいいですね。

 

 

鑑賞後、ついついあれこれ考えてしまい、疑問に思ってしまうところもあった。

こんだけヤバイ兄貴がおって、なんで兄貴のいる土地に来ようと思うのか?兄貴が犯人だと気付かないのか?…とか色々思ったけれど、バニーが4歳になるまでは上手く関係もててたんでしょうか。

あとこれが計画犯行にしては、「預けるときに保育園の人に100%会わずにいられるか」「イギリス到着後、もし風邪ひいて引きこもってなかったらバニーの顔おぼえられてたのでは?」とか、色々運任せなところも強いように思ってしまった。

 

でもまあ、細かいことは気にしない!!サスペンスとしてグイグイ引き込まれて鑑賞中気にならなかったので、それで充分…!。お話のディティールより、物語のみせ方に騙されるのが楽しい作品だと思う。

 

冒頭、ソウル・バスがデザインしたというオープニングがカッコよくてあたまから心掴まれ、幕のひき方もまた素晴らしい。

物悲しいテーマ曲、恐怖をあおる音楽にもドキドキさせられた。

そして、ローレンス・オリヴィエ演じる警察官だけが、英国の良心で、落ち着いた存在感があったからこそ、物語が締まっていたように思う。

 

 

殺人シーンも血もない映画なのに、ものすごーく怖かった…!だけど没頭してみれるサスペンス映画で至福の108分でした…!!