69年制作、「最後の西部劇」と呼ばれるサム・ペキンパーの代表作。
ペキンパーと共同で脚本を手がけたウォロン・グリーンはのちにフリードキンの「恐怖の報酬」の脚本も担当していて、クズ野郎どもが破滅に向かっていくという所では共通点があると言えるのかもしれません。
けれどあちらが不条理な運命をホラーテイストで描いているのに対し、こちらで描かれているのは男の矜持や懐旧の念など全くテーマは異なります。
「恐怖の〜」では極めてドライだった人間関係も「ワイルド・バンチ」ではもっとロマンチックに描かれていると思いました。
悪名高き強盗団「ワイルド・バンチ」は鉄道会社の銀貨強奪も謀るも失敗。
老いを感じたリーダーのパイクは仲間とともにメキシコに逃亡する。
そこを仕切る将軍からアメリカ軍の兵器を略奪する最後の大仕事を持ちかけられるが…
とにかくジジイの笑顔が眩しい映画。
仲間割れすんのか…と思ったらワーッハッハッハ。
サウナではしゃいでワーハッハッハ。
機関銃をうっかり乱射しちゃったメキシコ人もワーハッハッハ。
ちっちゃいこと気にしてたらこの西部では生きていけません。
古い仲間もいれば新しい仲間もいる強盗団のメンバー、ハナから強い結束があるわけではなく徐々に認め合う過程が丁寧に描写されています。
足の悪いパイクを老いぼれだと軽視していたゴーチ兄がその能力を認めて酒瓶を差し出す。
自分のことしか考えてなかった野郎共がエンジェルの愚直な故郷愛を無下にできなくなる。
列車強盗時にエンジェルに助けてもらったダッチが彼を一旦見捨てることになったときの切ない表情…
悪党どもの持つ人間味にどんどん魅せられていきます。
ほんの少ししか登場しない他のキャラクターも印象的。
冒頭の強盗シーンに登場する自分の死にすら無頓着なワイルドすぎるジジイの孫、どこか誇らしげに将軍に便りを持っていく少年兵、主人公たちグリンゴを無視して権力者の腕に抱かれるビッチ…など、どの人物も決して善人ではありませんが生き生きとしています。
ガメつい賞金稼ぎのおっちゃんがやたらおっきな十字架を首にぶら下げてるのが可笑しかったりして(笑)。
不思議な朗らかさとともに作品には強烈な寂寞感も漂いまくっています。
ときは1913年、鉄道が各地を走り次に迫るは飛行機の時代。
無法者の時代は終わった…「自分の居場所のなさ」を痛感しつつ頭をフル回転させて生き残ろうと必死なパイク。
冒頭のアリの大群に飲まれるサソリは主人公の心境そのものなのでしょう。
そしてそんな主人公を追うかつての仲間、ソーントン。
恩赦のため賞金稼ぎとなってパイクを追うも仲間はゴロツキに青二才とロクなのいない…
「パイクお前本当に大した奴だな、別れてからお前のことを考えない日は1日もないよ」…って言ってないけどジジイの心の声が聴こえる…
パイクも道中ソーントンと過ごした日々を思い出しそれをジトッとした目でみつめるダッチ…
「元カレのことなんか気にして…俺がずっと傍にいるよ」…って言ってないけどジジイの心の声が聴こえる…
結局パイクと対決することもなく1人死に場所を失ったソーントン。
長生きすることが必ずしも幸せとは限らないのかもしれない…何とも切なくなりますが、こんなに死を悼まれる、こんなに強く思える人が人生に1人いるってロマンチックですね。
列車強盗に橋爆破、圧巻のラスト銃撃戦とアクションのカタルシスは凄まじいですが、個人的に1番好きなのは突撃前の男の賢者タイム。
将軍たちの祝賀会から少し離れたところに泊まって女を抱く一行。
パイクに充てがわれた女は乳児を子育て中…(モラルどうなっとんねん)
(うるさいなあ…)
どう考えても男の方がクズですが、吐き出してもスッキリしない野郎どもの気持ちがまざまざと伝わってきて続くレッツゴー、ワイノットの名台詞…
最後に自分の思う道を選択しその責任を負うことを厭わない潔い姿が胸に焼きつきます。
どうしようもない悪党が見せる気高さが嘘くさくなく、静かなドラマ部分も通してよく出来てると思いました。
エンディングもジジイの笑顔が眩しかった…!!