英題:The Living Dead at the Manchester Morgue。
ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(68年)と「ゾンビ」(78年)の間…74年にスペイン・イタリア合作で作られたゾンビ映画。
「サンゲリア」のような作品を期待するとマジメかっ!!となる社会派要素も兼ね備えたシリアスゾンビ。
特殊メイクを手掛けたのが「サンゲリア」のジャンネット・デ・ロッシということもあってゾンビ自体の出来栄えが非常に秀逸な作品でした。
オサレヨーロッパ映画の雰囲気でやたらカッコいいオープニング。
舞台はイギリスのマンチェスター、工業化が進むなか街では公害が溢れ裸の女性(ストリーキング)が現れても無関心!?精彩を欠いた人々の姿が映されていきます。
バイクで都会から田舎町へと駆け抜けていくヒッピーっぽい雰囲気の主人公・ジョージ。
アクシデントに遭ってエドナという女性の車で彼女の姉が住む町まで同乗することに。
ところがその町では超音波を使って害虫駆除をするという新たな試みが行われていました。
「虫の神経系に作用してお互いを攻撃するようにする」…ところがこれが死体にも作用して2人は死人に襲われることに…
環境問題を訴えるラジオ音声が挟まるなどロメロを意識したのかな、と思ってしまう演出がチラホラ。
↑車が曲がった小道を向かってくる画も似てる
行き過ぎた科学技術が人に害なす存在となる…プロットはSF要素を兼ね備えていますが、肝心のゾンビは〝カメラに映らない〟など心霊系要素もあったりでどこかゴシックなムード。
最初に出てくるゾンビのおっちゃんはホームレスだったそうで村の誰も火葬費を出さなかった…
この世に未練でもあるような充血した眼でこちらをジッとみて襲ってくるのが怖いです。
ただの白塗りではない病的な顔色や生前の手術跡など「新鮮な死体感」のあるビジュアルが秀逸。
メインのおっちゃんゾンビをはじめ白髪バーサンなど顔に迫力のある面々が揃い、この世の重力を無視しているかのようにゆらーっと起き上がる動作も迫力たっぷりです。
食肉シーンも白黒で控えめだった「ナイト〜」のゾンビに比べしっかりレバーに喰らいついていてこちらの方が異常性が際立っていました。
墓石を持ち上げるまさかの知能ですが、決して人間離れしていないゾンビらしい動きで荒唐無稽な感じは全くしないです。
頭を撃っても死なず倒すには燃やすしかない…灰になって証拠が何も残らずゾンビの存在を信じてもらえない主人公たちは逆に疑われてしまうことに…
ラストもまさに「ナイト〜」なのですが、若者ヒッピーvs老世代の権力者という構図にニューシネマらしさを感じます。
美男美女の主人公2人が場当たり的にいい感じの雰囲気になってたり、麻薬常習者というこれまた時代を感じる設定なエドナの姉と夫の関係もあっさりしてて何があるわけでもなく…人間ドラマ、人物の描写は圧倒的にロメロに軍配が上がります。
最後の最後で因果応報な結末を迎えるのにはスッキリ、ここはイタリアンなホラーらしく思われました。
グロもアクションも昨今の映画に比べると控えめですが、「ナイト」後、「ドーン」前という立ち位置を考えるとかなり意欲的な作品だったのではないでしょうか。
教会で火を投げてゾンビを撃退する場面は「サンゲリア」に引き継がれてるように思われます。
真面目なゾンビ映画の名作…!!って感じの1本でした。