どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ゾンゲリア」…タイトル詐欺のおかげで余計に楽しめた

ゾンゲリア」!借りずにはいられないッ!「サンゲリア」を観たならば…

ゾンビのいる孤島でサバイバルするような作品を想像してたらとんでもないタイトル詐欺だったわけですが、これはこれでしっとりした凄くいい作品。意外なほどに格調高い感じのするホラーでした。

※どんでん返しのある作品についてネタバレしてます

 

何と言っても冒頭の掴みがバツグンな本作。

観光客のカメラマンが海辺でパシャパシャ写真を撮っていると、どこからともなく美女が現れ、「私を撮ってくれない?」と声をかけてくる。

頼んでもないのにトップレスになってくれて男はウハウハ。

「そんな旨い話があるかー!!」と思っていたら、振り返ると男は町民に囲まれ、タコ殴りにされ火炙りに…

これ、ホントにゾンビものですか??という理不尽さが突き抜けたオープニングにグッと心掴まれます。

 

そして事件を捜査する保安官・ダンが主人公となり話が進んでいきますが…

お話的には「町民はみんな既に死んでいて、実は主人公も…」というディックの短編とか「世にも奇妙な物語」にありそうな感じですごくシンプル。

でも町の寂しい感じがこの世とも思えない不思議な雰囲気、一見和やかにみえて不気味な住民は「見知らぬ土地の人が怖い系ホラー」の恐怖。

話の輪郭が掴めないままドラマが進んでいくのが上手くて引き込まれました。

町民たちの中でも印象に残るのはドSっぽい雰囲気の美人とモッコリした髪型のおばちゃん。

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ドS美人の方はナースコスプレで注射針を患者の目玉に突き刺すという芸を披露。

キルビル」のダリル・ハンナのナース姿はこの人のパロディっぽい。

基本静かなホラーだけど、一瞬の不穏なBGMとともに村人がドヤアと映るのにギョッとなります。

そして何より恐ろしいのは「少人数のよそ者を大人数で囲って殺す」場面で、殺しながら写真をパシャパシャ撮るのが不穏…!!

写真やビデオは「殺した人間を復顔するときに参考にする記録」として必要だったということなんですかね。

そして嬉々として傷んだ死体の修復をする葬儀屋のおじいちゃんがラスボスだと判明。

ハーバード・ウエストが大成功しちゃったみたいな感じですが、「人間は死ぬと病気にかからん」ってセリフが完全にサイコパス

ロメロゾンビやフルチゾンビとは見た目が違うし人も食べないけど、生ける屍という意味では間違いなくゾンビものではあって、彼らに自我があるのかないのかハッキリしないところが不気味です。

「彼らは支配者の意思で動く」…

82年公開ということもあって、ボディスナッチャーのような全体主義への恐怖を映したSF作品要素もあるように思えます。

自分は一体どこから来たんだ!?自分で決めてると思ってることも実は定められたもので見えない運命みたいなものがあるのかも…って人生で1回位は考えちゃうあるあるですが、そんなヒンヤリした怖さが全編漂っています。

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美人妻のいるやっかみなのか主人公に冷たい町の人々。

地元に馴染めてない主人公の疎外感、信じられる人がいない孤独感。

シックスセンス」よりB級で雰囲気ホラーなはずなのに、人生の無常感を感じて余韻の残る作品でした。

 

グロ描写は量としては少ないけど、眼球に注射針刺さるシーンや酸を鼻に注入するシーンをみて配給会社の人は「邦題ゾンゲリアにしたろ!」と思ったんでしょうね(笑)。

自分は逆にこのタイトルじゃなかったら手にとらなかったかもしれません。

良い意味で予想を裏切られるというお得さもあって!?「ゾンゲリア」は案外いい邦題だと自分は思います。

秋の夜長にみるのにピッタリなホラー。