どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

スターウォーズ エピソード5.5、「帝国の影」が面白い

コミックに小説と山程ある「スターウォーズ」のスピンオフの中で自分が唯一読んだ作品なのですが…「帝国の逆襲」と「ジェダイの帰還」の空白を描いたノベライズ版が面白かった…!

ジョージ・ルーカスが書いたわけではないものの、97年の特別編公開の際に公式から認められて出版されています。

「ローグ・ワン」と同じでポジション的においしい位置というのもあるかもしれませんが、昔図書館にあったのを見つけてたまたま読んだらかなりよく出来てるなーと。

 

お話としては「帝国の逆襲」の半年後ぐらいという時系列。

散々な痛手を負ったルークですが、凍結されたハン・ソロを連れ去ったボバ・フェットの行方を全力で追い、救出作戦を開始。

ルーク、レイア、ランドに加え、ヤヴィンの戦いでハンに大きな恩義を感じていたウェッジとローグ中隊が戦いに参加するのが胸熱です。

結局作戦は失敗するけれど、Xウイングで宙を舞うパイロット、ルークの姿がみれるのは嬉しい展開。

今作の敵はベイダー…というより、皇帝に取り入っているマフィアみたいな組織、ブラックサンという第三勢力が登場し、これとルークたちとダースベイダーの三つ巴的争いになっています。

この人がブラックサンという組織の首領、プリンス・シゾール。↓↓

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人間じゃなくて爬虫類を祖先に持つファリーンという種族ですが、作中では超イケメン設定らしくて、ゴージャス、ハンサムだと連呼されます。

何とこの人がレイア姫に一目惚れ。種族ならではの特異体質…異性を惹きつけるフェロモンを発散するという能力を持っていて、レイアを誘惑…!!

あの気丈なレイア姫がフェロモン攻撃を食らってクラクラするのに何だかドキドキ(笑)。

 

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「愛してるわ」…「知ってたさ」

エンダァァァァー!!・・・と叫びたくなる大人な「帝国の逆襲」の名場面もレイアの心の中で何度も再生されます。

「彼を失うと思った瞬間〝愛してる〟って言葉が出てしまったけどハンも同じ気持ちだったのよね?」…ってちょっと不安に思ってるレイア姫、意外に乙女な姿がギャップ萌えで可愛いです。

銀河中の女性を虜にするというフェロモンを跳ね返すレイア…多分それはフォースの力だけど、私が好きなのはハン・ソロよ!!とトカゲ男の股間蹴り上げるとこ、最高にシビれます。


敵キャラ以外の味方サイドではダッシュ・レンダーというオリジナルキャラが登場。

スター・ウォーズ 帝国の影

スター・ウォーズ 帝国の影

  • 発売日: 1997/06/14
  • メディア: Video Game
 

↑↑この小説をもとに作られたという任天堂64ゲームの主人公はこのダッシュだったみたいですね。

密輸を生業にするはみ出し者でパイロットの腕は一流…とまさにハン・ソロを思わせるキャラですが、より男臭くアウトローな感じがします。

彼がルーク&ランドのチームに加わって憎まれ口叩きながら協力している様子は楽しく、汚水にまみれた下水管を辿って皆で敵陣に突入するところ…
エピソード4のゴミ捨て場っぽくてめちゃくちゃスターウォーズしているなあと読んでいて嬉しくなります。

 

その他にも、

・タトゥイーンに戻って緑のライトセイバーを製作するルーク

・エピソード6で賞金稼ぎに扮したレイアが持っていた小型爆弾の出どころを伏線として回収する

…など、細かい部分も「おっ!」と思わせるサービスがあって、5と6のつなぎとして良く出来ているなあと感心します。

独裁国、帝国軍の卑劣っぷりとレジスタンスの抵抗というドラマもしっかりある。


個人的にこのキャラ惜しい!!と思ったのは、シゾールの部下の美人アンドロイドです。

ジェダイにも負けない格闘戦をみせる強化人間みたいな女性なのですが、主人に見捨てられた上、敗北。

「プログラムを書き換えてあげるから一緒に来ない?」とルークが誘うのですが、シゾールに忠実で死を選ぶ…切ない…。

ルークと美人アンドロイドの恋が始まらないかなあ、とアホなこと考えて読んでいました。 

 

 

◆この小説陣での続3部作がみたかった

ちなみにこの「帝国の影」(シャドウズ・オブ・ジ・エンパイア)を出してる出版社さんは、エピソード6以降の世界を描いた続編シリーズも出しています。

 

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竹書房巻末を参考

ガンダムみたいにずっと戦ってて長い…。

この続編シリーズはちゃんと読んでいなくてあらすじだけ子供の頃拾い読みしてたというテキトーすぎる記憶なのですが…

ルークは元パルパティーンの部下だった女ジェダイ騎士と恋に落ちて結婚して子供もできて…とディズニーの「スターウォーズ」と全然違うお話になってたかと思います。

自分は圧倒的旧三部作派で、少年漫画的世界のスターウォーズが好きだった身としてはこっちの方向性がみたかったかも…

 

ルーカスフィルム時代に公式から許諾を得て作られてたスピンオフは評価の高いものが多かったというけれど、ディズニーに買収されてからはそっちの方が正史から外されて非公式に…。

続三部作があんなに荒れるなら思い切ってキャスト変えてこっちの小説を映像化するか、ここの作家さんたち連れてきて脚本頼めなかったのかねーとか思ってしまいます。

 

theriver.jp

ディズニーが懲りずにまた新作つくるのか不明ですが、「シャザム!」の俳優さんが「ダッシュ・レンダー演りたい」とか言っていたみたい…。

オリジナルの世界観と整合性がとれるように相当気を遣って作ったのだと、すごく誠実さを感じる作品。「帝国の影」、いつかまたスポットが当たればいいのになあなんて思っています。

 

「スピナマラダ!」…アイスホッケー漫画の見事な着地に驚嘆…!

ゴールデンカムイ」の作者・野田サトルが2011年〜2012年にヤングジャンプで連載していたアイスホッケー漫画。

全6巻完結、打ち切りといっていいエンディングを迎えているのですが、なぜ連載終了したのか不思議なくらいめちゃくちゃ面白かったです。

幼少よりオリンピックを目指していたフィギュアスケーターの白川朗は母を亡くし、東京から親戚のいる北海道苫小牧へ引っ越すことに。

ある日地元のアイスホッケープレーヤーと練習場所の奪い合いになり、思いがけずホッケー対決をすることになるが…

フィギュアスケーターがアイスホッケーに魅せられて華麗なる転身。

92年の「飛べないアヒル」という映画にて、弱小チームが助っ人にフィギュアスケーターの女の子を呼んでその子が試合中くるくるスピンするという面白場面がありました。

飛べないアヒル [DVD]

飛べないアヒル [DVD]

  • 発売日: 2006/01/25
  • メディア: DVD
 

これが元ネタなのか分かりませんが、トリプルアクセル決めながら敵を突破する朗、めちゃくちゃオモロイです。

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 「スピナマラダ!」2巻より

氷上を優雅に舞いながらたった1人で戦うフィギュアの世界に対し、アイスホッケーの世界はラフプレーもなんのその、汗にまみれてチームで戦わなければならないという全くの別世界。

仲間に揉まれて変わっていく主人公がドラマチック…!!

でもフィギュアスケーターらしさはずっと持っていて、人一倍負けず嫌いで美意識が高い。ちょっと潔癖症でマメな性格してる朗くん、カッコかわいい面白イケメンです。


そしてホッケーの楽しさを知った朗は強豪校のアイスホッケー部に入りますが、そこにはハートマン軍曹かと疑う鬼監督が。

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「スピナマラダ!」2巻より 

映画の他にも「ジョジョ」や「マサルさん」など別漫画のパロディと思われるコマがあってそれを探すのも楽しかったりして…。時折炸裂する独特のギャグセンスも自分は大好きで、爆笑でした。

 

シュールさもありつつ全体的には感動的な王道スポーツ漫画で、アイスホッケーのルールを知らなくても分かりやすく楽しめます。

1巻の中学生試合にて…少子化で廃校になるためもうアイスホッケーが出来ない弱小校の苦悩はすごくリアルに思えたし、部員すらおらずボロボロなのにそれでも試合がしたくて戦う姿にもうグッとくる…。

ゴールキーパーのプレッシャーとの戦い、優勝を逃した卒業生のシビアな進路…キャラクターの内面を掘り下げたドラマが幾つも展開され、読み応えたっぷり。

「フィギュアは親に託された夢で自分のやりたいことじゃなかった」・・主人公が過去から脱却していく王道青春モノ的なストーリーにも爽快感があります。


しかし何が凄いってこんな感動てんこ盛りの内容が打ち切りのせいでたった6巻に濃厚圧縮されているということ。

最終巻はもう「武士沢レシーブ」にも負けないような詰め込みっぷりですが、それでも張っていた伏線ドラマをすべて回収して見事にまとめあげているのが驚嘆です。

下記は「ゴールデンカムイ」の単行本付録にて作者が語られていた言葉ですが…

体操の金メダル級の着地を目指しますが、バタバタとブサイクでもなんとか着地させるのがプロの漫画家だと思いますし、読者への責任だと思います。

なんてカッコいいんでしょう…。 

打ち切りって読者も悲しいし漫画家さんにとっては無念以外の何物でもないのでしょうが、行くところまで行ってぶん投げて終わるようなエンドもある中、限られた回数でまとめあげた作者の手腕と、最後まで完結をあきらめなかったド根性を感じて、ラストは不思議な二重の感動に包まれました。

 

綺麗に終わらせているけれど、2年生編が出来るエンドにもなっているし、完全版として20巻くらいの内容にして新しく書き下ろされてもいいし…

個人的には朗に恋するスピードスケーターの女の子のピュアなズレっぷりが可愛かったからここのラブコメももっと見たかったなー。

ゴールデンカムイ」のヒットで再評価されてるようなので、また読めないだろうかと密かに期待してしまう作品です。

 

「デビルスピーク」…犬に手を出すいじめっ子はヤッチマイナー!!

陸軍士官学校を舞台にした男の子版「キャリー」ともいうべきいじめられっ子の復讐劇ですが、悲壮感なく楽しくみれるB級ホラー。

81年公開作品とは思えないほどアイデアに溢れスプラッタ描写も秀逸、個人的には大喝采したくなる傑作です。

 

学園モノかと思いきや、中世のキリスト教異端審問という意外すぎる場面からスタート。

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サタンを信仰する黒衣の男がいけにえの半裸美女の首を跳ねると、いきなり舞台が現代にとんでサッカー試合の場面になるのですが…

吹っ飛ぶ生首→宙をとぶサッカーボール・・・の場面転換が神がかったセンスで、「2001年宇宙の旅」みたいでかっちょいい!!

もう冒頭から傑作の予感しかありません。

 

主人公のスタンリー・クーパースミスは両親を交通事故で亡くした孤独な男の子で、同級生からいじめられる毎日を送っていました。

とろくて空気が読めないすんごい独特のオーラの持ち主ではある。

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演じるのはロン・ハワード実弟、クリント・ハワード。

「キャリー」は環境が違えば違う人生があったのに、と悔しい思いになりますが、クーパースミスは3回生まれ変わってもクーパースミスなんだろうなと思わせる底力があります。

でも病気の子犬を可愛がる優しい心の持ち主でもあって、どこか憎めない応援したくなる系男子…!

 

陸軍士官学校なのにミッションスクールだというよく分からんこの学校、生徒はみんな覇気がなく、先生は差別的で感じの悪い人ばかり。

なんと実は冒頭にでてきたサタニスト、エステバンが建てた学校で、チャペルの下には人知れず悪魔崇拝の墓標が…というとんでもない学校です。

偶然チャペルの地下から悪魔の古書をみつけたクーパースミスはコンピュータでその内容を解析するのですが…

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ラテン語を打ち込んだら即英語に翻訳!!ってそんなエキサイト先生みたいな技術が81年にあるんかい!!

…ってどうやら悪魔がコンピュータを介して交信してきた模様。

次第にいけにえ召喚を要求する悪魔コンピュータ。女神転生っぽい悪魔召喚システムが時代の先を行っててすごくいいですね。

 

そんな中いじめっ子たちが暴走してクーパースミスの飼っていた子犬が殺されてしまいます。

なっ!何をするだァー!!ゆるさんッ!!

クライマックスは惨劇へと一気に突入…!

 

意外にも犬の殺害シーンはほとんど映らず、犬好きも耐えれるやさしめなつくりなのは嬉しいところ。

しかし人間には一切の容赦がなく、豚に食べられる、内臓掻き出される、首チョンパ、脳天直撃などスプラッタ描写がハデに炸裂。

低予算映画のはずなのにチープさをさほど感じないほど撮影や音楽の出来栄えがよく、とくに悪魔がクーパースミスに憑依する場面…CGのない時代なのに鏡を反射させて撮ったという見事な工夫で、エステバンの顔が浮き上がってくる演出は秀逸です。

そして、炎の中宙に浮いたクーパースミスが剣を持って迫ってくる場面も圧巻で、ヤッチマイナー!!と叫びたくなります。

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ここはワイヤで吊ってるの丸わかりだけど、スススーって来るのが逆に神々しい。

いじめっ子の生徒たちは皆たるんだ顔つきで、教員陣の面々はまるでナチスドイツものに出てきそうな強面連中というキャスティングも面白いですね。

食堂の裸エプロンのおじさんが癒し…!

 

 「キャリー」とは違って娯楽に振り切っているけど、とにかく楽しいホラーです。

 

「野獣教師」…トム・ベレンジャーの金八先生

プラトーン」と「山猫は眠らない」のせいか軍人役のイメージが強いトム・ベレンジャーが教師役に挑戦…!のB級アクションムービー。

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プロの傭兵・シェイルは麻薬組織の殲滅ミッションから解雇され次の仕事を探していた。

そんな折、高校教師の恋人が何者かに暴行を受けて休職してしまう。

荒れた学校に疑いの目を向けたシェイルは身分を偽って代理教師として赴任、やがて学校と麻薬組織とのつながりを掴んでいく…。

結局兵士役なんかーい!なトム・べレンジャー。

不良生徒たちとぶつかりあって心を通わせていく感動作への道は険しく、学校の荒れっぷりがなかなかにすさまじいです。

生徒がナイフや銃で襲ってくるというハードモードな洗礼をアクションで蹴散らしていく、グレート・ティーチャー・ベレンジャー。

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防弾チョッキ着といて助かったぜ。

 

一見ハチャメチャに思える作品ですが、意外にアメリカの暗部にスポットを当てた社会派ドラマな一面もあるように思います。

マイアミの公立校と思われるこの学校ですが、

・学校はフェンスで囲われ、入り口には金属探知機が設置されている。
・高校生なのに子持ちの生徒がたくさんいる。
・学力が極端に低い。

自分はアメリカに住んだこともないしアメリカ社会のこともよく分からんのですが、本作の学校は昔読んだこの本のイメージと重なりました。

ニューヨークの荒れ果てた学校に赴任した教師のドキュメント。

この先生も身の危険を感じて学校に銃や防弾チョッキを持って行ったりしていて、その上貧困層の生徒の学力は驚くほど低いと語っていてショッキングな内容でした。

ベトナム戦争の敵はヒトラー」というギャグのような台詞も、「不良になって麻薬がらみの仕事をしなければ最低賃金で働くだけだ」という生徒のつぶやきも、格差をあらわしたリアルなものに思えます。

 

開始早々バレバレで話が進んでいきますが、学校の治安を悪化させていた黒幕は校長先生。

この悪徳校長は黒人で、元警察官から教育の道に進んだ人物なのですが、(警官時代は)「家が焼かれたり、友人が逮捕されたりした」という台詞が重たい…。

暴動の際にはときに仲間を逮捕しなければならず、挙げ句には身内から恨まれる…
努力しても簡単に報われず、ダークサイドに堕ちるだけの何かがあったんだろうなー思わせる、なかなか味のある悪役なのもよかったです。

 

大人は更生しないけど、生徒たちの中にはベレンジャー先生と心を交わし慕う子たちも出てくる…。

ボンクラ映画のようでいて意外に浮ついてない、真面目さを感じる作品。改めてみても良く出来ているなあと思いました。


クライマックスには、ギャング団vsベレンジャー率いる元傭兵団のミリタリーアクションが炸裂!!

夜の学校を疾走、校舎を軽く破壊しながらドンパチをやって終わるというここはスッキリした仕上がりになっています。

 

96年公開のこの作品、ずーっと国内DVD化がなされておらずVHSのみしか存在していなかったのですが、この夏U-NEXTでめでたく配信が開始されました。

(今月公開の「山猫は眠らない」のプロモーションだったりするのかな)

TSUTAYA名盤復活とかに入れるほどの名作かといわれるとビミョーだけど、なんかヒカるもんがあるアクションドラマ。

久々にみれて嬉しい限りです。

 

「メジャーリーグ」…出てくるだけで面白いチャーリー・シーン

89年に大ヒットした野球コメディ映画。

スポ根モノの感動作とよぶにはドラマが軽すぎるけど、コメディとしてはよく出来ててゲラゲラ笑って楽しめる良作。

メジャーリーグ [DVD]

メジャーリーグ [DVD]

  • 発売日: 2004/03/05
  • メディア: エレクトロニクス
 

クリーブランド・インディアンスは34年も優勝から遠ざかっている弱小球団。

亡き夫の後を継いだ新オーナーのレイチェルはなかなかの悪女で、本拠地への移転を叶えるためだけに、わざとチームを負け越しさせようとたくらむ。

そのために集められた選手は問題児ばかりだった…。

寄せ集め集団が一致団結して勝利していくという王道展開ですが、変人だらけのメンバーがおかしくて野球シーン以外の方が面白かったりして…。

 

最大の問題児はチャーリー・シーン演じるリッキー。

刑務所から出所したばかりのところをスカウトされるという本人っぽいリアリティ。

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ギラついた目が怖いけど、髪はお茶目なカボチャ刈り…!!

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160キロ近い球速を繰り出す豪速球投手ですが、球のコントロールは最悪…しかし途中でなんと近眼だったことが判明。

メガネかけただけでめちゃくちゃ出来る子に…というアホみたいな展開に笑うしかありません。

 

他のメンバーも皆んなキャラが立っていて曲者揃い。

キューバから来たブードゥー教信者のセラノは、キリスト教信者のハリスともめて宗教戦争勃発…!!

「いけにえのニワトリをくれ。」→ケンタッキーフライドチキン差し出される流れにも爆笑。

 

バッティングは下手だけど、華麗な俊足を見せるのはウェズリー・スナイプス演じるウィリー・メイズ・ヘイズ。

のちに「ブレイド」になるとは思えないお調子者キャラだけど、おじさんのたるんだ裸体が多い中1番引き締まったいい身体してるー!!

 

物語的な主役は一応トム・ベレンジャー演じるジェイクで、膝を痛めてキャリアが低迷したかつてのスター選手。

チームの中では頼れる兄貴キャラなのに、プライベートでは別れた元カノ(レネ・ルッソ)に未練タラタラというかなり面倒臭い男。

魅力的なおじさんキャラが多いので、女性は無理に話に絡ませなくても良かったかも…

ストーカーにしか見えない粘着&略奪愛ドラマを、湿っぽいBGM流しつつ真剣ラブだとやり切ってしまうところも、ある意味80年代の豪快さなのかもしれませんが…


途中まったりしつつもラストの対ヤンキース戦は大盛り上がり!!

エキストラの観客は今だとCGになるんでしょうけど、ホンモノの人で埋め尽くされたスタジアムの映像は迫力いっぱい。

弱小チームの奇跡に沸いて、大合唱「Wild Thing」でチャーリー・シーンが登板する場面は色褪せず胸が高鳴ります。

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20代のチャーリー・シーン、どうみても危ない男だけど、子犬みたいな目しててかわいい。

80年代ムービーらしさに今みても笑えてスカッと元気が出ます。

 

貴志祐介「黒い家」…”おかしな人”に疲弊するサラリーマンの恐怖

生命保険会社で働く主人公・若槻はある日顧客の家に呼び出され、子供の死体の第一発見者となってしまう。

ほどなくして両親から保険金が請求されるも、発見時の不可解な点から、若槻は金目当てで継父が殺害したのではと疑い、独自の調査に乗り出す…。

黒い家 (角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)

 

〝保険金目当ての殺人〟という胸の悪くなる題材ですが、過去に保険会社に勤めていたという著者ならではのリアリティがあり、引き込まれて読んだサスペンス小説でした。

 


◆疲弊するサラリーマンが1番怖い

入社以来5年間外国債権を扱う部署に勤務していた若槻は、人事異動によって、初めて顧客と直で接する保険会社の現場で働くことになります。

やはり世の中には悪い人たちがいて、騙してゴネてお金をとろうという人たちも客としてやって来る。

接客業など、あらゆる人に応対しなければならない仕事…医療や行政関係の現場の人たちも同じかと思いますが、そういう仕事で感じ得る恐怖が身近なものとして描かれています。

半ば趣味のようにして、どうでもいいことで支社の窓口に難癖をつけに来る男だった。
いくら高姿勢で怒鳴られても、保険会社側はていねいな応対をせざるを得ない。

それが病みつきになり、日頃自分が社会から疎外されている鬱憤をひそかに晴らしているのだ。

モンスタークレーマーの人たちにも「お客様は神様」という悪しき風習のもと、馬鹿丁寧に接しなければならない…脅迫まがいのことをいってくる人間もいる…そのストレスにこちらもキリキリしてしまいます。


しかし保険会社側を一方的な被害者とも描いてはいないのが面白いところ。

営業成績達成のため、理不尽なノルマを押し付けられた現場の人たちが、ろくに調査もせず、本来なら加入すべきでない条件の人も次々に引き入れてしまっていた…そういう蓄積が次世代の主人公の下に負の遺産となって押しつけられる…目先の利益だけを追いかけるずさんな会社の実態も描かれます。

 

しかし真面目な主人公は会社に弱音を吐かない。

遺族から早く金を払えとストーカーのように粘着され、メンタルを病んでもなお仕事を着々とこなす。 

人事課は若槻のひ弱さを嗤い、到底激務には耐え得ないという評価を記録に残すだろう。

人事異動の季節でもない中途半端な時期に突然本社に帰ってきた人間の姿を思い出すと、たちまち気は萎んだ。

彼らは一様に背中を丸め、昼休みになると1人で昼食を食べに出ていくのだ。

一度でも弱音を吐けばそれが烙印となってしまう…同調圧力の強い会社の中で自分を壊しながら働かなければならない主人公の姿が何よりも恐ろしくうつります。

 

 

◆犯罪者は遺伝か環境か

お仕事ドラマとして陰鬱なリアリティを描き出しつつ、サイコスリラー要素、謎解き要素、スラッシャーものと複数のサスペンス要素が展開して緊張が途切れず、一気に読みたくなる小説です。

 

子供の親が殺人犯だと確信した若槻は、助言を求めて母校の心理学研究室を訪れるのですが、そこで持ち上げられるのが小学校の作文。

何か事件が起こると犯人像を掴もうと、「学生のときはこんな子だったらしい」などとニュースで下世話に報道されることがありますが、疑わしい人物の過去の作文を調べるんですね。

これがまたすごい不気味な文で、「羊たちの沈黙」的プロファイルが展開するのも面白いです。

 

心理学の専門家の1人が問う「サイコパスは遺伝か環境か」は暗く重たいテーマ。

本作では「こういう意見もある」と議論を抜粋しただけで、明確な答えを出しているわけではないのですが…
事件の真相としては「環境によって歪んだ人間の方が真犯人だった」というところに話が落ち着くので、後味が悪すぎないところも含めて上手いなあと思いました。


・「自分の欲求を満たすことだけに終始する人」が増えているという感覚

・そういう人たちを簡単に〝おかしな連中だ〟とレッテル貼りして切り捨てようとする姿勢

差別的に思える専門家の主張の中には、自分も似たようなことを思っているかも…と鏡をみたような嫌な気持ちにさせられます。

重要な役どころである主人公の彼女が強メンタルすぎるのと、警察が無能すぎるところがちょっと残念なのですが、「こんな未解決事件があるのかも」と思わせる怖さは充分でした。

 

1つ事件が解決してもモラルを喰いつくそうとする悪しき輩はどんどんやって来る…ラストはまさに「俺たちの戦いはこれからだ!」エンディング。

一応主人公は生命保険というシステムに再び希望を見出してもいるので、貴志祐介作品の中では意外と明るめな!?幕引きなのかなあと思いました。

 


話題になっていたらしい映画版ですが、こちらは全く面白くなかった…。

黒い家

黒い家

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

妙に演出だけに拘って、仕事ドラマの内容が全く響いてこない。俳優さんもみんな合ってなくて、若槻は抜けてるとこもあるけど優等生キャラなのが魅力なのに、映画だと間抜けにしかみえないのが残念でした。

大竹しのぶの怪演だけは見ものかもしれませんが、でも全く菰田幸子のイメージではなかったです…小説の彼女はあんなもんじゃないよ!!

 

バブル崩壊後の閉塞感、陰惨な殺人事件が話題になっていた90年代の空気。

当時を色濃く反映した作品かと思いますが、今読んでも古さを感じさせない面白さがありました。

 

「学校の怪談」の思い出/夏にみたい良作ジュブナイル・ホラー

自分が子供の頃、トイレの花子さん口裂け女といった怪談話が一大ブームとなっていました。

3番目のトイレには花子さんがいる…1番目と2番目にも誰かいるらしい…じゃあどこに入ったらいいんだよって位塞がっていました(笑)。

自分はトイレに1人で行けなくなるようなことはなかったけど、通っていた小学校の校舎がとても古かったので、人気のない校舎の不気味さ…放課後の見回り当番のときなどは怪談話がふと頭をよぎって怖かった憶えがあります。

 

有名な怪談エピソードの中で自分が1番不気味に思っていたのは「メリーさん」でした。

電話が突然何度もかかってきて、それとともにメリーさんとやらが殺人鬼の如く少しずつ近づいてくる…。

「スクリーム」や「暗闇にベルが鳴る」の類型にも思える怪談ですが、家に1人でいるときに掛かってくる電話ってそれだけで不安感があったから、これも上手く作られたお話だなあと思います。

 

誰かが意図的に作った創作なのか、出所がわからないというところも怪談の不気味さだったのかもしれませんが、こんな独特の挿絵のついた緑色の表紙の本もクラス内ですごく流行っていました。

学校の怪談(1) (講談社KK文庫)

学校の怪談(1) (講談社KK文庫)

 

短編集の如く、怖い話がたくさん載っていた本。


人面犬などファンタジックな話が多かった中、不思議なエピソードが1つ、うろ覚えながら心に残っています。

耳にピアスをあけた女の子の耳が突然痛くなって、耳を触ると突然白い糸が引けてきた。なんとそれは神経の糸で、女の子は耳が聞こえなくなってしまう…。

大きくなって思い返すと「神経が出てくるってどういうことよ!?」と笑ってしまうし、「勝手にピアスあけたら危険だと大人が都合よく作った教訓話的エピソードだったのかもしれない。」なんて思ったりするのですが…

子供の頃はそんなことがあり得るのかもと信じてしまう、ヒヤッとする怖さがありました。

 

一大ブームの中で多方にメディアミックス展開されていたのか、「学校の怪談」は映画にもなっていました。

学校の怪談  [東宝DVD名作セレクション]

学校の怪談 [東宝DVD名作セレクション]

  • 発売日: 2015/08/19
  • メディア: DVD
 

友達の家でビデオで観たのですが、子供の頃からあまり邦画を観ていなかった自分にも刺さって、意外なくらいすっごく面白かったです。

 

恐怖度でいえば、ネタ元の怪談話の方がずっと怖いというレベルでかなりマイルドにつくられたホラー。

でも雰囲気的には「イット」や「グーニーズ」っぽいというか、子供たちが力を合わせて怪談に立ち向かうジュブナイルもので、観ていてすごく楽しかったです。

夏休みを翌日に控えた小学校。立入禁止の旧校舎に偶然入ってしまった5人の生徒が、怪異に襲われながらも必死に脱出を試みる…。

たったそれだけのお話だけど、子供たちがザ・子役してなくて、美形が揃ってるわけでもない。すごく自然体な演技で今みても素晴らしいです。

 

親が留守がちで家のことを任されている長女のお姉ちゃんは、そのストレスから時々妹に辛く当たってしまうことを悩んでいる…。

子供の心を丁寧に見つめたキャラクターがいたりしてお話も上手い。

上級生に敬語で話しかける礼儀正しい下級生キャラ、ついついケンカ腰で話しちゃう男子と女子…小学生あるある/子供の世界が見事に再現されています。


一応途中から大人も登場するのですが、先生がものすごく頼りない人で絶妙にイライラさせてくれるところも含めてオモロイです。

 

登場する〝怪談〟は、メリーさん、花子さん、口裂け女といったメジャーどころもあるけど出番はごく僅かで、知らない怪談の方が目をひきました。

3回怒らせるとバケモノに変身してしまう用務員のおじさん。

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洋画のホラーの方がずっとリアルで怖いと思っていたけど、「物体X」っぽく変身するのにはドキドキ。


そして1番面白かったのは、教室の天地が逆転して、テケテケという霊が上から机とかを落としにくるところ。

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嫌な攻撃だなあ、上下反対の画が面白いなあとワクワクしました。

久石譲ジェリー・ゴールドスミスをちょっと足したような音楽も素晴らしい…!

CGは総じてしょぼいのですが、その稚拙さも含めて子供らしいファンタジックな世界観として楽しめてしまいます。

 

ラストは”お別れ”と子供たちの真摯さにほろっ…。

小学生のときの友達…何も考えずつるんで遊んでた瞬間って本当特別な時間だよなーと「スタンド・バイ・ミー」のような切なさが込み上げてきます。

 

怪談話を真面目に怖がれるのはある種の純粋さがあるからこそで、自分はそういう系統のホラーを楽しむ気持ちをすっかり失くしてしまってるなあと思うのですが…

学校の怪談」はある種の童心に一瞬返してくれる映画として、大人になって観ても充分楽しめる作品じゃないかと思いました。

 

劇場版 学校の怪談 DVD-BOX

劇場版 学校の怪談 DVD-BOX

  • 発売日: 2004/07/30
  • メディア: DVD
 

なんとシリーズ4作あったんですね…!!2は観た記憶があって、よりコメディっぽかった印象があります。3と4もそれぞれ評価が高いようで気になるなあ…。


子供の頃に出会った、怖さという点で強烈な印象を残したホラーというのは別にあるけど、この「学校の怪談」は心洗われるような貴重な思い出作品です。