どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「悪魔の追跡」と「2000人の狂人」見知らぬ土地の、得体の知れない人たちが怖い映画

自分は、ホラー映画が結構好きなのだが、ホラーというジャンルは細分化すると、「ゾンビもの」「殺人鬼系」「悪魔とりつき系」…などさらに区切れると思う。

 その中でも、「見知らぬ土地で得体が知れない人たちに襲われる」系のホラー作品というのが一定数あって、なかなかゾッとする作品が多い気がする。

 

代表的なのは、「悪魔のいけにえ」(The Texas Chain Saw Massacre)。

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 テキサスを旅行中の若者たちが、ガソリン切れで近くの家に立ち寄るが、そこには殺人鬼一家が住んでいて…というシンプルなストーリーだが、「こんな奴らが地球の片隅で普通に生活していそうだ。」と、妙なリアルさが漂う。

 

アメリカという国は日本人からは想像もできないほど広大で、州によって文化も風習も大きく異なるときく。(人種差別が根強くのこっている地域も多いのだろう。)

だだっ広い砂漠と荒野が続く視界…1本の長―い道路以外にはなにもない。そんな場所でもしトラブルに巻き込まれたら…と想像すること自体、ちょっとしたホラーである。

 今回感想を書いてみたいと思ったホラー2本も、“自分に馴染みのない場所で、得体の知れない恐ろしい人たちに出会って、信じられないことが起きる”…というものだが、その振り幅がマックス振り切っていて、狂気を感じる好きな作品だ。

 

「悪魔の追跡」

 この映画は学生の頃、レンタルしてきて観たが、ピーター・フォンダウォーレン・オーツという昔の名優が出ているし、借りた当初そんなに変な映画だと思わなかった(笑)。

 

簡単に言ってしまうと、田舎に旅行に行って、おかしな人たちに追いかけられるというシンプルなストーリーだが、主人公を若者にせず、おじさんにしているのがまずグッとくる。

ピーター・フォンダ演じるロジャーも、ウォーレン・オーツ演じるフランクも、2人とも軽薄な人間ではない。

まっとうに働き、自分たちの人生を楽しみ、築きあげてきたものがあるごく普通の人たちである。

彼らが夫婦2組で過ごそうと決めた念願の休暇。しかし夜のキャンプ中に、カルト教団が少女を殺害する儀式を目撃、それを集団に気づかれてしまい、追いかけられる。

 

この作品でとにかく恐ろしいのは、敵のカルト教団の人数というか人脈。

地元の警察に駆け込むが、全く話をとりあってくれない。警察官との会話をあとから反芻すると、まるで事件を予め知っていたかのような態度に違和感。彼らも仲間なのか。

行く先々の売店やガソリンスタンドで、なぜか電話が故障していてつながらない。

あらゆる場所で出会う人々が、どこかおかしく、異様な敵意を抱いたような恐ろしい顔をしている。(ようにみえる。)

 

 「ええー、コイツもコイツも教団の仲間なの!?」「もうどんだけ教団浸透してんのよ!?」「もはや国教やんけ!」とツッコミながらみてしまう。

 描き方としては、ハッキリ「仲間です」と断定的ではなかったシーンも多かったと思うし、それが演出の狙いのようにも思う。(じっくりきちんと見たら、儀式のシーンとラストに全て同じ役者さんがちゃんと映っているのだろうか。)

 

この映画の主人公の1人、フランクが手に入れた最新のキャンピングカーは、彼の人生の努力と夢の結晶だ。このキャンピングカーがボロボロになっていくカーアクションがなかなかスゴいのだが、正常な人間が数の力に勝てず、ひらすら痛めつけられていくというのが、絶望的である。

ラストの終わり方が良い意味でとても気味が悪く、1度みると忘れられない作品だ。

 

 

2000人の狂人

 もう1本はさらにカルト色の強いホラー。

タイトルからしてごめんなさいの人もいると思う。

2000人の狂人 [DVD]

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決してリアルでは人に薦められないが、スプラッタ―映画を初めてつくったとされるハーシェル・ゴードン・ルイスが、南北戦争100周年の1965年に作り、彼の代表作となった作品だ。

 

とある男女3組が、アメリカ南部を旅行中、道に迷って不思議な町にたどり着く。

そこには大勢の老若男女が集まっていて、みんなニコニコのハイテンション。町の100周年の行事に参加してください、といきなり懇願してくる。

なにがそんなにおかしいのか、村長が話すたび、ドッと笑う村人たちがとにかく不気味。

そして北部からの旅行者を捕らえた村人たちは、「これは行事だから」と笑いながら、彼らを残酷な方法で処刑していく。

 

この処刑方法にうんざりするほど凝りがあり、針のある丸太に入れたり、大岩を落としたり、四肢を裂いたり、恐ろしい残酷なシーンが続く。

しかし撮り方が低予算だからか、どこか雑さを感じる。切断シーンの瞬間、カメラが切り替わって、次は切断部分のカットだけ、引きの画はなし、みたいな。

低予算映画の頑張りをひしひしと感じて、時々強引に現実に戻されたような感覚になってしまう。

ツッコミたくなるような粗さを感じる部分と、マジっぽい狂気の集団。

このチグハグさが奇跡的に上手く成立していて、おかしなことを一生懸命やっている滑稽さに、笑いさえ感じてしまうから不思議な作品だ。

 

 一応設定としては、この狂気の村人集団が、実は南北戦争北軍に虐殺された村人2000人で、終戦100周年を記念に甦り、北部の人間(ヤンキー)を虐殺している…ということが映画の途中で分かる。

 ええー、心霊的な話だったんか〜というオチだけど、この映画に流れているのは、そういう霊的な怖さよりも、「もしこんな集団がでくわしたら」という現実的な怖さだと思う。

 

昔、リース・ウィザースプーン主演の「メラニーは行く!」という映画作品で、主人公が南部(アラバマ)に帰郷した場面で、人々が南北戦争ごっこをしている…というようなシーンがあったと思う。「(南部に行くには)パスポートが必要ね」なんていうジョークも言っていた。

 「南部の人たちは北部の人からどこか変わってみえる」というのを冗談めかして表現しているシーンなのだと思うが、この「2000人の狂人」は、それを真剣に90分やってくれたような映画ではないかと思う。

リメイク版があるらしいが観ていない。2065年に続編をつくって欲しいと思う。陽気な音楽がしばらく頭から離れず、「ヒィーハァー!」と言いたくなる。

 

 

 

自分の知らない土地、住み慣れない土地が魅力的にうつることもあるが、そうでない場合もたくさんあるのかもしれない。

慣れない場所で、閉鎖的なコミュニティにぶつかったら、相当なストレスだろう。

日本でいうと、もしかすると横溝正史作品がこの雰囲気に近いのかな、と感じる。

異なる人間を排除するという排他的な怖さを、上手くエンタメとして昇華しているホラー作品には、独特の魅力があると思う。今後も良作があれば発掘したい。