どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「カメラを止めるな!」は、私の好きな〇〇映画(ネタバレ)

一昨年話題になっていた「カメラを止めるな!」を今更ながら今年3月金曜ロードにて観ることができた。

前情報なしで観ることができてラッキーだった。とても面白かった…!

以下ネタバレありで、私も少し感想を書いてみたいと思う。

 

 

 

 

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ゾンビものとみせかけての、まさかの明るい人間ドラマ(笑)。家族の話でもあるけれど、個人的には「仕事への姿勢」を描いたドラマとして胸に迫るものがあった。


主人公の映像監督・日暮はこう評されている。「早い」「安い」「仕事はそこそこ」と。

クリエイターにとって”そこそこ”というのは、本来誉め言葉ではないような気もする。

しかしクライアントの要望をよくきき、妥協するのも上手いからこそ、予算内で一定以上のモノをつくる職人として重宝されてきた。

日暮はクリエイターであると同時に、サラリーマンなんだなあと感じる。

 

どんな仕事だって、100点を目指すなんて無理、無理。己の能力のせいであったり、予算のせいだったり、環境のせいだったり、プライベート(家族)とのバランスを選ぶがゆえであったり、…多くの人がどこかで“ある程度の妥協”をして仕事をしているように思う。

でも日暮はきっと、クリエイティブの分野(制作)の立場であるがゆえ、この“妥協”について、より複雑な思いを抱いて生きてきたのかもしれない…と感じた。

 

「もう少しお金があればもう少しいいものが作れる。」「自分に才能があれば違うものができるのかもしれない。」「これが果たして本当に自分のやりたいことだろうか」…自分の好きなことを仕事にしてしまうと、割り切りにくいことが沢山出てくる。

 

日暮と対照的に、「妥協を許さず自分の作りたいものを作る」という信念を持っている、娘の真央。

強い信念があるが、現実そんな拘りばかりで仕事が成立するはずもなく、父と違って、仕事をもらえていない。

また「自分が本来1番好きなこと」で一度挫折し、ほかの数多の分野にチャレンジしても、結局物足りなく感じている…という妻の晴美のキャラクターも面白い。

仕事において「やりたいこと」と「やらなければならないこと」の溝は多くの人が持ち得るものではないかと思う。

 

 

以前、たまたま付けたテレビのバラエティ番組でみたのだが、あの林修先生がこんなことを言っていた。働く意欲がない高学歴の若者とディスカッションをする…という番組だったと思う。(スミマセン、うろ覚えです)

 

「みんな好きなことをやろうとする。好きなことをやることが1番だと思っている。」

「色々考え方はあるが、自分は”できること”をやる人間でいいと思う。」

 

こんな感じだったと思う。…次いで、林先生は自己啓発本を沢山執筆しているが、それは自分の全くやりたいことではないにも関わらず、成功しているという。反対に、自分の書きたいことを書いた本は逆に全く売れていない…と話していた(笑)。

自分は好きなことを仕事にして挫折したことがあるからか、「できること」をやり続けている人のことを、尊敬する。妥協してカッコ悪いと娘から非難されている日暮のことも、”立派な大人”だと敬意を感じずにいられなかった。

 

 

カメラを止めるな!」後半にて、「これでいい」だったはずの日暮が、「これがいい」をぶつけるシーンはアツい。しかし日暮が「ONE CUT OF THE DEAD」を無事に撮り終えられたのは、「好きなこと」だけでなく「できること」を乗り越えてきた男だからだと思う。

 

 納得できる仕事ができたと思う瞬間…自分が関わった仕事に誇りを持てるという幸せ…こういう場面はいつもあるものではないからこそ、尊く感じてしまう。

 

曲者ぞろいのスタッフ・出演者にはニヤニヤしてしまうが、混沌の中、各々が各々の役割を果たしきっていく映画製作のバックヤードをみるのが楽しい。

仕事でなければ絶対になんの接点もないであろう人たちが、1つの目的に向かって、全力疾走する姿は、まるでスポーツの試合でもみているかのような爽やかさだった。

 

 

 映画館で観たらさぞかし楽しかっただろうと思ったが、金曜ロードで観ても、十分面白かった。鑑賞後、幸せな気分にさせてもらった。

 

 

ファンタジックかもしれないが、「カメラを止めるな!」は、私の好きな仕事映画だ。