ちょうどタランティーノ監督の「キルビル」の後編が劇場公開された頃だったと思うが、「燃えよ!カンフー」という昔のテレビドラマが地上波放映されていた。
局はどこだったか忘れたが、ナゾの”うしみつショー”という名前の番組枠(深夜枠)だったと思う。
「キルビル」でラスボスのビル役を演じたデヴィッド・キャラダインがこのドラマの主演だから、公開記念にオンエアしてくれたのかもしれない。
デヴィッド・キャラダインといえば…とにかくB級映画にたんまり出演している俳優というイメージが強い。
「デスレース2000」のフランケンです、と言って分かってもらえる方がいたら嬉しい限りだ。
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兄弟のロバートとキースも俳優なので、”キャラダインのお兄ちゃん”と言った方が分かりやすいのかもしれない。
この「燃えよ!カンフー」というドラマ、なかなか面白かった記憶があるので、うろ覚えになってしまうが、少し思い出してみたい。

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◆西部劇+カンフーのスピリチュアルドラマ!?
「燃えよ!カンフー」の舞台はいわゆる西部劇の時代なので、1870年前後かと思う。
主人公の男性、クワイ・チャン・ケインは、少林寺でカンフーをマスターした、中国人とアメリカ人のハーフ。ある事件をきっかけに中国から身を追われ、渡米。西部にいるはずの異母兄を探す…というストーリーだ。
ケインは西部をさ迷う中、色々な人・事件に出くわす。
行く先々での困難をアクション(暴力)ではなく、対話(東洋思想)で、乗り越えていくところがこのドラマの見所だったと思う。もちろんカンフーも身を守る術として時々使っていた。
西部劇のロケーションなのに、ケインが銃を持たず、馬にも乗っていなかったのは印象的だ。
西部を行くケインが困難にぶち当たる度、彼が過ごした少林寺の回想シーンが入る。
そこでカンフーマスターが人生の教えみたいなものを語るのだが、コレがかなり良かった。自己啓発的な内容とでもいうべきか。
気持ちの優しくなれるような教えばかりで、人やお金に執着せず、けれども他人に優しいケインがカッコよかった。
オープニングは沈む夕陽に、どこか東洋らしさを感じる荘厳な雰囲気の音楽。
西部劇と東洋思想みたいなのが、合体した、不思議な魅力のあるドラマだったなあと思う。
◆デヴィッド・キャラダインが全く東洋人にみえない件
ケインは中国人とアメリカ人のハーフという設定だ。行く先々で、「この東洋人が。」「あんた、一体どっから来たんだよ!?」と、人種差別的な攻撃をバンバン受けていた…と思う。
しかし、演じるデヴィッド・キャラダイン自身は東洋人の血など全く流れていない、アメリカ白人だ。
観ながら、「ケイン、東洋人にみえるか?」と正直違和感バリバリだった。
確かにキャラダインには多国籍風の、少しエキゾチックな雰囲気があるようにも思う。「おじいちゃんにアジアの血が流れてるんです。」とかいわれたら、そうなんですか〜と思うかもしれないが、しかし、どうみても東洋人にはみえない。
またデヴィッド・キャラダインのアクションが、こう言ってはなんだが、全くすごくなかった(笑)。
きけばこのドラマ、原案がブルース・リーで、ブルース・リーが主演したがったのに、キャスティングされなかったらしい。アジア人差別などの事情があったのかもしれない。
ブルース・リーの西部劇みたかったよ〜とも思ってしまうが、ある意味アクションがそんなにすごくないキャラダインのおかげで、「差別に非暴力で立ち向かうケイン像」が奇しくも確立されたのではないかと思う。
今だったらこのキャスティングは絶対に成立しないど思うけど、制作陣の「こっちが東洋人っていったら東洋人なんだよ。」という姿勢、自分は嫌いではない。
貫くことで出来上がったケインの魅力があったのではないかと思う。
◆1話完結のストーリーが面白かった
ストーリーについてはおぼろげな記憶だが、1話完結で、ケインが人々に出会っては別れゆく…というような、通して見ると長いロードムービー的なお話になっていたと思う。
第1話は、「シェーン」の完コピのような内容だった。シェーンと違って銃ではなく、カンフーを使うというだけで。
記憶に残っているのは、まだかなり小さい、ジョディ・フォスターが出ていた回だ。
ある事件を目撃するが、目撃現場にいた位置の違いで見えたモノが異なり、証言が食い違ってしまう…真実は何か??そんなお話だったと思う。ジョディ・フォスターがマンドリン?を弾き語りするシーンがあったが、とても可愛らしかった。
カポエイラの習得者が出てきた回も印象に残っている。
ケインが出会ったその人物は南米出身で、街の人から慕われていたが、「自分はここではなく、祖国に戻って祖国の不正と戦いたい。」というようなことを熱く語る。
ケインはその人に「不正はどこにでもある。ここで戦え。」などという。
もう祖国に戻ることが叶わないケインが「今の自分の場所で生きろ。」と語るのが印象的だった。
各話タイトルが、「幼心に仕掛人が走った」など、「流れよ我が涙、と警官は言った」のようにやたらシャレていたのも印象に残っている。
優しいケインに、出会った人々が心癒されていく。観ている自分も癒されるようなドラマだった。
◆ケインはお兄さんに会えたのだろうか?
ケインの旅の目的は、異母兄を探し出すことだった。
映画「パルプ・フィクション」にて、「俺は大地をさすらうぜ。燃えよ!カンフーのケインみたいにな。」というサミュエル・L・ジャクソンの台詞があったと思うが、ケインは決して自分探しの旅に出ていたわけではない。(でも自分のルーツ探し…という意味では同じか。)
とにかく行く先々で、必死にお兄さんの情報を集めようとしていたのを憶えている。
「燃えよ!カンフー」は、全部で3シーズンあるようだが、うしみつショーで放映してくれたのは、第1シーズンだけだった。
第1シーズンでは、ケインのお兄さん情報は結局皆無のまま終わってしまっていたと思う。
こういうストーリーラインだと、どうしても、兄が悪の道に堕ちていて、兄弟で戦い、最後に和解する…というのを想像してしまう。
ケインがお兄さんに会えたのか謎のままだが、あんなに一生懸命探していたので、会えているといいな、と思う。
思えばタランティーノの「キルビル」のラストバトルも、ビルのアクションはほぼなし、あえてスパっと短くみせたものだったけれど、それも味になってて良かったんじゃないかなあ、正統派のアクション俳優ではないけど、デヴィッド・キャラダインの不思議な魅力が出ていたように思う。
「燃えよ!カンフー」はなかなかビデオレンタルでは見かけないのが残念だが、もしチャンスがあれば、再視聴してみたい。