どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「マッドボンバー」…爆弾魔vs暴行魔vs熱血刑事

「デビルズゾーン」のチャック・コナーズが狂気の爆弾魔を演じた72年公開作品。未見だったのを鑑賞してみました。

マッドボンバー [Blu-ray]

マッドボンバー [Blu-ray]

  • ヴィンセント・エドワーズ
Amazon

特にストーリーが面白いわけではないけれど、濃ゆい顔の俳優陣をみているだけでドキドキ。

理屈なんてねえ!!感じろこの孤独感!!と言わんばかりの異様なオーラに呑み込まれる作品でした。

 

LAの街をウロウロする異様な風体の大男・ドーン。

目の前にいた男がゴミをポイ捨てすると拾うように注意しますが、凄まじい殺気…!!

(こんな迫力ある人に睨まれたらとりあえず謝るしかない)

信号無視して歩道に突っ込んできた男にも激怒、車のキーをぶん取りポストに投げ入れます。

序盤はマイケル・ダグラスの「フォーリング・ダウン」を彷彿させ、気持ちは分からなくもない暴走正義マン。

しかしそれ以上に「関わっちゃいけないヤバい人オーラ」が溢れまくっていて圧倒されます。

レストランで注文に来たウェイトレスに「なんで目を合わせないんだ」と迫ったり、スーパーでチラシの値段と違うとクレームつけたり…こういう人いるいると思ってしまうやり取りが迫真。

 

実はドーンは娘を最近亡くしたばかり。

娘は麻薬中毒が原因で亡くなったらしく、腐った世の中を正さねばとお手製の爆弾であちこちの公共施設を破壊しまくっていたのでした。

麻薬組織撲滅とかに動くならまだしも何で無関係な人を巻き込むのか…

新聞を見て目についたニュースを元に爆破先をランダムに選んでいたようですが、病院、高校、フェミニスト集会と爆破先はバラバラ。

やり場のない怒りを抱えていることだけは伝わってきます。

紙袋を抱えてはフラーっと現れるチャック・コナーズが不審者すぎて、こんな特徴的な人、目撃情報がすぐに上がるやろ…と思ってしまいますが、警察はその足取りを掴めません。

しかし爆破先に選ばれた病院で、レイプの真っ最中だった暴行魔がドーンの姿を偶然目撃していました。

熱血刑事のジェロニモはまずこの暴行魔の行方を追うことに。

覆面捜査官の協力などを得て見事逮捕に成功しますが、なんとこの暴行魔、妻子持ちだというから驚き。

自宅の「秘密の部屋」には拡大された妻のヌード写真が飾られ、裸体の妻が誘惑してくる謎フィルムを上映して恍惚とした表情でそれを眺めていました。

そんなに奥さん好きなら奥さんとやっとけばいいやん…子供3人いて仲良さそうで拒絶されてるってこともなさそうなのに何故強姦に走るのか…

病的なレイプ犯の心理が謎すぎて気になります(笑)。

 

ジェロニモ刑事は暴行魔ジョージに爆弾魔の人相を問いただしますが、暗闇で一瞬みただけでその記憶は不確か。

人相をヒアリングしながらモンタージュ写真を作成することに。

「この中で似ている目はどれ?」「鼻は低かった?長かった?」…犯人とは程遠い写真が合成されていくのにドキドキするも、突然特徴的な骨格が現れ「絶対これ!」と断言されて完成するチャック・コナーズの肖像(笑)。

しかし情報を流したことがマスコミに報道されて自宅が特定されてしまったジョージはドーンの爆弾の餌食になってしまいます。

(嫁のポルノビデオ観ながら絶頂してる最中に大爆発とかなんちゅー死に様)

 

一方ジェロニモ刑事は完成した肖像を手がかりに見事ドーンの自宅を突き止めました。

しかしドーンはLAの一区画をも吹き飛ばす大量のダイナマイトをトラックに積んで逃走。

ジェロニモはその後を追い、車のルートを特定して道路を封鎖しました。

さらには元妻に来てもらい動揺を誘ったところを狙撃。

ドーンは爆弾と共にその身を散らして死んでしまいます…

ドーンの娘はなぜ麻薬に溺れてしまったのか、どうして全て社会のせいと怒りを抱くに至るまでになってしまったのか…結局何も明かされません。

しかし余計な説明など一切不要!!

チャック・コナーズの顔と身体が何よりの説得力。異様な孤独感が佇まいだけで伝わってきます。

善玉役のはずのジェロニモ刑事も言動が粗暴。妻と離婚して息子と離れ離れに、同僚からも孤立しているようでした。

フレンチ・コネクション」のドイル刑事のようなアウトロー感があります。

レイプ犯が捜査に協力すると野放しにされるあたり、警察にも暗い一面があり、こういう善悪のなさも70年代らしいです。

 

性癖が特殊なレイプ犯、孤独な刑事、被害妄想的な爆弾魔…碌でもない男3人がギラギラしているだけの映画なのになぜか惹きつけられる。全く説明もないのに3人の病みと孤独がグワァーと迫ってきました。

女性の裸体がポンポン飛び出してくるのにもびっくり…!

70年代の映画を観たという満足感が残りました。