どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「エクソシスト ディレクターズカット版」午前十時の映画祭で観てきました

劇場公開版の方が観てみたかったよ…と思いつつ、今週から午前十時の映画祭で2週間上映されている「エクソシスト ディレクターズカット版」を観てきました。

なにげにこの作品を映画館で観るのは3度目。

1度目は中学生の頃、ディレクターズカット版が公開されて、友達を誘ったのですが「怖いからやめとく」と断られて1人で劇場へ…

ビデオでも観たことがなくてこのときが初見。お化け屋敷にでも入るような覚悟で恐る恐る鑑賞に臨んだのですが、思った以上に静かな作品で人間ドラマしていることにびっくり。

2度目の鑑賞は上京した大学生の頃、川崎チネチッタで「ゾンビ DC版」「死霊のはらわた」「エクソシストDC版」というとんでもない豪華3本立てがやっていてオールナイトにチャレンジ。

1番楽しみにしていたはずの「死霊のはらわた」で爆睡(笑)、でもそのおかげか大トリの「エクソシスト」はスッキリした頭で鑑賞することができ、劇場公開版と後味が大きく異なるハートフルエンディングも改めて観るといいなあと思って、明け方沸々と身体に力がみなぎるようでした。

 

そして今回久々の3度目の劇場鑑賞。

200席ほどの劇場が大方埋まり盛況、大きな画面に音が抜群によく聞こえて、やはり映画館での鑑賞は格別だと実感しました。

改めて凄いと感じ入ったのは冒頭のイラクの場面。

あの時代のあの場所がそのまま切り取られたような迫力ある映像がフリードキンならでは。説明なしで一気に引きこむ力が凄いです。

こんなに短かったっけ!?と驚いたのはスパイダーウォークの場面。

中学生の頃劇場で観たとき、既にテレビスポットで散々流れていたこのシーンになると「きたーっ」で感じで観客がザワついて、「見せ物っぽくなってしまってよくない」と思っていたのですが、記憶より遥かに控え目な印象。

やっぱり「エクソシスト」って悪魔の特殊メイクや超常現象のシーンは実はそんなに盛り沢山ではなくて、病院の検査シーンや精神病棟を訪れるシーンなど現実的な場面の方に遥かにゾッとさせられる。

これ見よがしに脅かしてくるタイプのホラーとは全然毛色が違うよなあと思いました。

 

仕事と育児あくせく両立させながら愛情かけて育ててきたと思っていた娘から突然拒絶される怖さ。

本人の意思を尊重したいと思っても良かれと思う道を必ずしも選択できるとは限らない介護の難しさ。

年を重ねて観ると余計に胸に染みるものがあるというか、人生の苦難がリアルに描かれているのがこの作品の真髄だと思いました。

登場人物にこれという悪い人はいないはずなのに異様な「冷たさ」が全編を貫いていて、父親との口論をリーガンがこっそり聞いているところやカラス神父が見舞う精神病棟の場面は原作にはないオリジナル描写。

心優しいカラス神父は疲弊して厭世的になっていて、聖人に映るメリン神父も持病の心臓病を1人抱え込んで他人と関わることをやめていたあたり心に弱い部分があったのかも…

完璧な善人が存在しない世界、でもそこに誠実さを感じてドラマに引き込まれてしまいます。

寂寞感の残る公開版のエンディングの方がフリードキンらしいのかなと思いますが、原作に忠実な希望を一筋残したようなエンディングが自分は好きです。

 

凄い作品は何度観ても凄い。

人間が悲しみに立ち向かう物語に胸がいっぱいになりました。