どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ラストコンサート」…ベタだけど素朴で綺麗なラブストーリー

70年代にヒットしたイタリアの恋愛映画だそうですが、監督が「エイリアン・ドローム」のルイジ・コッツィ、主演が「サンゲリア」のメナード医師…と何だかとても気になる布陣(笑)。

不治の病を抱えた少女と自信を失った中年ピアニストの愛を描く…

ストーリーだけみると苦手な作品かも…と思ったのですが、くどくもなく辛気臭くもなく、普通にいい映画でした。

 

イタリア映画なのになぜか舞台はフランス、冒頭は美しいモン・サン・ミシェルの景色で幕を開けます。

手を痛めたピアニストのリチャードが病院を訪れると深刻な顔をした医者が切々と語り始めました…

「娘さんは白血病で寿命は2ヶ月もないかもしれない…」

誰の話やねん、とキョトンとするピアニスト。

なんと先に診察を受けていた少女・ステラが「次にパパが診察室に入るから検査の結果を話して」と嘘をついて、あとから自分の病状を聞き取ろうと画策したのでした。

謎の少女はその後もしつこくリチャードにまとわりついてきます。

「一緒に帰ろうよ」「踊らない?」…最初は邪険にしていたピアニストもまんざらでもない様子。

おっさんが夢見てんじゃないよ!!と言いたくなるようなストーリー(笑)。

女の子が元々このピアニストのファンだったとかそんなエピソードがあるとスッと納得できそうなのですが…

 

ステラは幼い頃に家を出て行った父親に会いに行きたいけれど1人だと不安なので付いてきて欲しいとリチャードに訴えます。

おっさんに惹かれるのは父性愛に飢えているからなのかも…他人と距離感なくベタベタしちゃうのも愛着障害の1種なのかも…何だか哀しい女性に見えてきます。

聖子ちゃんカットにベレー帽!?若さが眩しく愛らしいパメラ・ヴィロレージ。

対するリチャード・ジョンソンはくたびれた陰気な中年親父。

皮肉屋で悲観的、才能はあるけど人付き合いが下手でくすぶってる…面倒くさいダメ男ですが、くたっとした色気があって意外に悪くないです。

親子ほど年の離れた女の子に叱咤激励されるのってどうなん…と思いつつも再びピアノに向き合うリチャード。

ときには罵倒しあったり激しくぶつかりながらも惹かれあった2人はやがて一緒に暮らすことに…

ついにリチャードはコンサートで演奏するチャンスを得ますが、急速にステラの容態が悪化。

ウェディングドレスを着てコンサートを訪れたステラは愛する人の演奏を聴きながら静かに息を引き取ります…

 

ベッタベタな展開なのですが、音楽がいいので引き込まれてみてしまうクライマックス。

美しいピアノの旋律に時折女性のハミングが重なってくるのが切なく、幸福だったステラの時間が流れ過ぎ去っていくよう…

余命いくばくもない中、恋して死にたい&好きな人に夢を叶えてもらいたいとアグレッシブに行動したステラ、力強いですね…

ラストは2人出会ったモン・サン・ミシェルで1人佇むリチャードの姿でジ・エンド。

何という喪失感、やっぱり残された人間は寂しいよなあと最後の最後で涙が出てしまいました。

 

ベタなお話ですが、主演2人の相性がいいのかあまり湿っぽくない雰囲気。

闘病の描写などそっちのけ、撮りたい画だけを撮ったような潔さがあり、舞台のフランスもこれみよがしに絶景をみせてくるでもなく気取らず美しい景色が撮れていて、素朴なところが逆に心に染みました。

これと「エイリアン・ドローム」がまったく重なりませんが、普通にいい映画でした。