ジョン・カーペンターの「要塞警察」と並ぶ2大籠城モノ!?として有名な作品。
リアタイ世代には淀川長治さんが解説されていた日曜洋画劇場での視聴が伝説的だそうですが、未見だったのを初鑑賞。
めちゃくちゃ面白かったし、怖かった…!!
「要塞警察」より荒削りでさらに低予算な感じがしましたが、ラストが強烈でびっくり。
これテレビでいきなり観たらさぞかし衝撃だったろうな…とレジェンド入り納得の作品でありました。
◇◇◇
警察のストライキで無法地帯となったカナダのハリファックス市。
自警団がゲイバーを襲撃し、誤ってバーテンダーを殺害。口封じのため目撃者を次々に処刑していくも、1人の男が逃亡に成功し古いアパートに逃げ込む。
アパートの住人であるホレーショは男を匿うことにしますが、自警団は引き下がらず血みどろの襲撃を計画して…
自警団のつけてる腕章、N O(ノー)かと思ったらニューオーダーという意味だそうで…
新秩序の世界を俺たちがつくる…!!ゲイは不快だから暴力でとっちめる…!!
大義を抱えて爆走、やってることは弱い者虐めと最低最悪の連中。でもこういう人、本当にいそうで怖い。
奥さんのつくったサンドイッチにマーガリンがねえと文句つけながら陶器を壊しまくるDVモラハラ夫っぷりにドン引き。リーダー格のグースが憎たらしいことこの上ないです。
襲撃を受けたゲイバーの店主も反撃しますが、やっぱり銃がなければ太刀打ちできない…
「銃社会なんてとんでもない」と思うけど、行政の機能が低く治安の安定しない場所では暴力を制するには暴力しかない…無法地帯の心もとなさにひたすら震え上がります。
暴行の最中に酒瓶が突き刺さって店主が死亡してしまい、ビビった自警団はレーゲンという謎の男を呼び寄せます。
「パルプ・フィクション」のハーヴェイ・カイテルや「ニキータ」のジャン・レノのような〝掃除屋〟的存在…??
いかにもベテランの殺し屋といった佇まいが不気味。
横並びになった目撃者を何の躊躇いもなく射殺していくシーンは「戦場のピアニスト」を思い出す、息を呑む恐ろしさでありました。
隠しナイフを持っていた青年が命からがら逃走するも、誰もいない夜の町の冷たいこと…
なんとか逃げ込めたのが、主人公・ホレーショのアパートですが、狭いわ暗いわで、要塞警察を遥かに上回る密室感。
友人・チェスターの部屋と隣同士で、浴室の鏡部分に穴が空いてて隠し通路になっている…という作りが秘密基地みたいで面白いです。
廃品を集めていることが冒頭のバイク運搬シーンで示唆されていたけど、とんでもないDIY野郎のチェスター。次々に武器をつくって有能すぎる…!!
盲学校の生徒は足音で敵の人数や動きを察知…!!
主人公のガールフレンドはキャンキャンうるさくて鬱陶しいだけかと思いきや、謎の山勘で殺し屋をひと突き(笑)。
主人公組が劣勢かと思いきや意外に逞しく、対する自警団は切れ者からは程遠い、思慮の浅いチンピラの集まり。
武器の差はありつつも、もしかしてなんとかなるのか…!?戦力バランスが丁度良く絶妙にハラハラさせられました。
(ここからラストまでネタバレ)
畳み掛けるように悪党が始末されるクライマックス。
憎たらしいグースの死に様も実にあっさりとしていてハリウッド映画にはないクールさ。
指示役のおっちゃんは割に合わない仕事だと引き下がるんじゃないかと思ったら、目撃者を確実に消しておきたかったのか、プライドが許さなかったのか…殺しにかかってくるというのが意外でした。
通常の映画だと生き残りそうな、障がい者やチームのMVPが惨たらしく殺されるのが情け容赦ない。
そして1人だけ逃げおおせた〝汚ねえ奴〟の正体がまさかの…
あのキャラクターだけが警官だったのか、自警団みんな警察官だったのか、どっちだったんだろうと頭を捻りつつ、凍り付くような恐ろしいラスト。
やっている当人にとっては、オフ中のレクリエーションみたいな感覚だったのかもしれませんが…
思いもよらない人が思わぬ一面を持っていて、したり顔で人を傷つけているの、本当にゾッとする結末でした。
先日発売されたBlu-rayには数量限定で吹替台本が付いていました。
中身が手書きでレア感がすごい!!豪華キャストにびっくり…!!
テレビ放送版もしっかり収録されていて、4対3の画面サイズで左右は見切れつつ、上下はワイドになっている…と完全別バージョンのつくりで2度楽しめる仕様。
リーフレットには”アパートの見取り図”というこだわりの特典があってこちらも併せてみると楽しさ倍増でした。
YouTubeで淀川さんの解説を発見して視聴。
ワイラー的、ペキンパー的、暗くなるまで待って…興奮の解説に深く頷きながら、いい映画をみたという満足感が残りました。