「V」(ビジター)は、1983年~84年に製作された、アメリカのテレビドラマだが、残念ながら、自分はリアルタイムで観た世代ではない。
バイト先の先輩が面白いといっていて、学生の頃にレンタルして観たのだが、80年代を感じるつくりながら、SF作品として十分に楽しんで観れた。
「V」とだけ描かれた、潔いシンプルすぎるパッケージデザインが印象的。
自分より少し年上の人と話すと、「自分が子供のころは、ビデオ屋の壁一面が”V”だった。」などときいたことがある。
テレビドラマではあるが、この「V」(ビジター)、全5話と大変短めなのが意外。1話あたり2時間弱、映画の5部作みたいなつくりになっていた。
当時は金曜ロードショーでも放映されていたようだ。
なかなか海外ドラマはシリーズが長いと観るのに気合いが必要だったりする…。しかし「V」は非常にコンパクトであるがゆえに、自分も観やすかった。
ずいぶん前に1度みたきりでうろ覚え部分もあるが、物凄く面白かったので、思い出して少し語ってみたいと思う。
地球への来訪者は敵か、味方か
ある日突然、空に巨大UFOが浮かび、宇宙人たちがやって来る…。
大きな円盤UFOは、「インデペンデンス・デイ」に影響を与えたというが、なかなかのインパクト。
「ビジター」が面白いのは、エイリアンたちがまずは”友好的な味方”としてやって来るところだと思う。
Alien(よそ者)でもInvader(侵略者)でもなく、Visitor(訪問者)。
しかも、人間と同じ見た目をしていて、人間と同じ言語で語りかけてくる。
燃料が枯渇しているからと言って地球にいさせて欲しいと頼んでくるが、「代わりに癌をなおせるワクチンを教える」などと美味しい話ももってくる。
よかった、よさそうな宇宙人たちで!!と大衆はすぐに騙されるが、実は水面下ではじめられる侵略。
「もしかして、どっか変?」と気付いた人たちは拉致されて静かに消されていく。
メディアがまず乗っ取られ、ビジターに好意的な報道しかされない。
独裁国家の誕生ってこんな感じ!?という雰囲気の描写だったと思う。
また宇宙船に忍びこんだ主人公が目撃した、衝撃の事実…!
人間と同じ外見だと思っていた彼らは、実は”人の皮”を被っているだけで、爬虫類のような見た目をしていることが判明する。
しかも、ビジターたちは、実は超肉食で、人間を〝食べる〟のだ。
'V' TV-series (1983) Dirty Diana
ビジターたちの美しきリーダー・ダイアナ様がネズミを丸呑みするシーンの衝撃といったら…!
食料用として仮死状態の人間がたくさん保存されているシーンも怖かった。
子供のときにみていたら、トラウマもんじゃないだろうか。
トンデモない敵だったのか!!と正体が判明していく前半の展開がサスペンスフルだった。
まるで”人間vs人間”な異星人との戦い
「ビジター」が多くの人の心を惹きつけたのは、エイリアンとの戦いが、〝人間同士の戦いみたい〟だったからではないかと思う。
ビジターはヤバい奴かもしれんと気付いた人たちがレジスタンスとなり、彼らも密やかに戦いを開始する。
主人公のマイクは、戦地に赴くような気骨あるジャーナリスト(カメラマン)。
報道でもって大衆に真実を伝えようとする→メディアをまず制圧するビジター…の戦いがリアルだ。
ビジターたちが配る、友好を訴えるポスターのデザインは、「どこかに存在していそう」な、独特の気持ち悪さのあるものだった。
かつてナチスの強制収容所にいたというおじいさんが、見せかけの友好を訴えるビジターのポスターにスプレー缶でVの字を描く。
Vの文字には(抵抗運動の)「Victory」の意味もある。
1話のラストはここで終わっていたと思うが、カッコいい。
そして、ビジターの中にも、本当に人間に友好的な人たちがいて、味方になってくれる人たちもいる、という展開も面白かった。
「エルム街の悪夢」のフレディ役でお馴染みのロバート・イングランドが友好的ビジター・ウイリーを演じている。ウイリーと心を通わす女性も登場するが、2人の関係は切ない。
そして、もう1人、ビジターの正体を知らず、ビジターの子供を身ごもってしまうロビンという女の子のキャラクターが登場する。
この出産シーンにドキドキ、ハラハラ。
赤ちゃんに罪はないのに…生まれてきた子供のドラマに胸が痛んだ。
望まない妊娠の選択肢とか、環境破壊とか、そういう当時の視聴者が不安に思っていることが映し出されたドラマだったのではないかと思う。
濃いオレンジのビジターの服装も、赤色っぽくもみえて、共産圏への意識もあったのかもしれない。
しかし2000年代にみても、充分見ごたえがあった。
「V」(ビジター)は、2009年にリメイクされているようだが、こちらは観ていない。
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ダイアナ様に代わる新リーダーのビジュアルをみて、「なんかちがうかも」と思ってしまったのだが、面白いのだろうか。
ダイアナ様が、人間くさい、キツイ感じの美人だったから、たまらんかったのです…!なんて。
また83年度版のビジターには正式な続編があって、「V2/ビジターの逆襲」(全19話)は、オリジナルのキャストが集結しているようだ。
こちらも未見だが、なんと、ソフト化されていない。
ここは初期5作とV2をBlu-rayで出してみてはどうだろうか。
金曜ロードで評価が高かったという豪華日本語吹替もつけてみて…。
近隣のビデオショップに足を運んでも、かつてのレンタル王者だったという「ビジター」がもう置いていなくて、寂しく思ってしまった。
80年代を感じることができる、見ごたえのある作品だったので、配信でもなんでも再度観ることができると嬉しいと思う。