自分が観たアルジェント映画の中でダントツで好きな作品。
昔ホラーに詳しい先輩に、「PART2って言ってるけど、サスペリアじゃない、全然別の映画」「観てない人間は損してる」と猛プッシュされ、気になって観た。

サスペリアPART2 日本公開35周年記念究極版 Blu-ray
- 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
- 発売日: 2013/02/27
- メディア: Blu-ray
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なんてこった、ホントにサスペリアじゃないわ、コレ!…と全然異なる面白さに驚愕…!むしろ自分はこっちの方が大好きです!!
「サスペリア2」の魅力は、推理ものであるところ。
オカルト要素も序盤あるけれど、基本は「犯人は誰だ!?」のストーリー。その惹きつけ方が上手い。
ホラーが苦手な人も案外みれるんじゃないかと思う。
アルジェントに珍しくストーリーの破綻が少ないと言われるみたいだが、伏線の張り方も見事で、自分は犯人にも全く気付けず、100%楽しめた。
完全版を久しぶりにみて、心が生き返るような面白さだったので、感想を語りたい。
※以下、猛烈なネタバレ
映像センスがすごすぎる
まずこの映画に出てくる風景が好きだ。
マークが殺人を目撃する広場。派手ではないのになぜか美しくみえる噴水。絵画そのものなバー。
登場人物のいる部屋のひとつひとつのインテリアも何気に迫力がある。
そして「サスペリア」より静かな作品であるがゆえに、一層映像と音楽の使い方の大胆さに驚く。
なんだかよく分からない小物を並べて映していって、大胆に鳴り響くテーマ曲(笑)。
よくこんな演出が出来るな、と思う。普通だったら怖くて出来やしない。
そしてテーマ曲がここぞとばかりに流れる壁画発掘のシーンに大興奮!!
とんでもないが起こっているぞ!!感が爆発し、盛り上がりまくる。
屋敷から転落しそうになったときにプログレ感100%の曲が突然遠慮なくかかってビクッ!
何もかも大胆すぎるが、それでも納まっているのがすごい。
浴室に湯気が立ち込めてダイイング・メッセージが浮かび上がる…というシーンも大好きだが、やはり、撮りたい画がまず浮かんでストーリーに組み込んでいるのだろうか。(まさかの本筋に絡まないという展開…)
ヨーロッパ映画をあまり観ない人間だけど、イタリア人の感性はとんでもないな、と思う。
「サスペリア」も本能に訴えてくるような怖さを訴求した恐怖の演出だったが、この作品の登場人物の死に方もそんな感じだ。
何かに引っかかって引きずられる…熱いお湯…ぶつけたらイタイイタイ…。
家族で鑑賞したとき、ラストシーンにて、「普通ね、あんなことになったら、ネックレスの方が千切れると思うよ。」と言われたが、そんなことは知らない。
きっとオリハルコンかなにかで出来てんのよ…!
犯人が分からなかった…!
何気にキャラクターも皆、魅力的だ。
マーク(デビッド・ヘミングス)のことを、「ポール・マッカートニーやん!!」といった人がいて、以降ずっとそう見えてしまうように。
自分もみたあと布教したくなり、どんでん返しものが好きな人におススメしてあとから感想をきいたりしたが、「犯人わからなかった」という人ばかりだった。
自分は、猛烈にジャンナを疑っていた。
怪しすぎるから犯人じゃない……かーらーのー!?と予想していた。
マークより腕っぷしが強いフラグが立てられていたとはいえ、入り組んだ屋敷から意識のない大の男を連れ出して、めっちゃ涼しい顔…って力ありすぎじゃないでしょうか。
なんだよ~普通に主人公大好きヒロインだったのか。
ダリア・ニコロディ、「サスペリア」で当初スージーを演じる予定だったというが、彼女じゃなくて本当によかった。
ダリア・スージーなら、しっかりしすぎてて、普通にアリダ・ヴァリと戦いそうで怖さ激減だ。
そして見返すたびに、カルロの悲しさが際立つ。
「医者によると僕は潜在意識で父を憎んでいて、父を殴る代わりにピアノを叩くそうだ。」…このマークの台詞がむしろカルロにかかってくるように思えてきて、切ない。
煩悩いっぱいの人間なので、マークと一緒にピアノを弾いてるシーンがなんか意味深にみえてくる。
ジョルダーニが序盤、「犯人はきっと精神分裂病」とめっちゃ決めつけていたが、自分は元女優だと語るオカンのそれっぽさといったら…。
観るたび、「なんで気付かなかったんだろう、自分…」と思ってしまうが、色んな迫力のあるものがチラつきすぎて、そっちが面白くて、気がそれてしまうのかな、と思う。
事件に”2人の犯人”がいるのかと、混乱してくるが…
【オルガ殺害】→オカン犯人。
【マークの家襲撃】→オカン出動。
【アマンダとジョルダーニ殺害】→オカン犯人。
【屋敷でのマーク襲撃】→カルロ出動。
【ジャンナ刺される】→カルロ犯人。
だろうか。
・殺す気マンマンで、割りにあわないアホみたいな労力で、出動したのがオカン
・マークが好きで、警告して追跡やめさせたかっただけの想いで出動したのがカルロ
なのかな…と思っている。
よくよく考えるとwhy?how?が多い気もするが、映像や音楽が素晴らしいので、なんかどうでも良くなる。
印象的な、例の”お人形”…。あの「SAW」シリーズをつくったジェームズ・ワンはアルジェントが大好きで、SAW人形は「サスペリア2」へのリスペクトでは…といわれているらしい。
「サスペリア2」人形は売ってないのかしら…。(いらないけど)「あんな大きな人形運んでくるって…もしかしてなくてもよくね!?」…でもそんな使い方がイイ!!
「サスペリア」をボロクソに言っていた映画評論家の双葉さんが、「2の方がいい…と思ったらこっちが先だったのか…」などと書かれていた記憶があるのだが、「サスペリアPART2」ってタイトルのいい加減さに驚く。
「デモンズ95」と同じく、タイトルで判断しちゃいけないことを教えてくれる作品。
「紅い深淵」と呼びたくなるかというと、別にそうでもない。
PART2だけど、PART2じゃないで!!といいながら売り込む映画としてきっと定着している。
「サスペリア」とどっちがいいか!?はもう題材の好みの問題だろうが、今見るとPART2の方が荒削りで大胆という感じを受けた。つくられた順番に納得だ。

サスペリア アルティメット・コレクション DVD-BOX (5000セット限定)
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2005/07/23
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昔買った1・2セットのDVD-BOXは、触ると手の熱で、絵が浮き上がるという豪華仕様だったけど、夏になると部屋の暑さで色が変わって、謎の風物詩になった。
Blu-rayとか4Kとか、次々新しいメディアがでるけど、映像が超鮮明になるのは、この作品にとって吉なことなのか…。
リメイク版きっかけの久々の鑑賞だったが、「サスペリア」、「サスペリアPART2」どちらも面白かった…!!
来月はなかなか映画を観る時間がなさそうだが、「インフェルノ」「フェノミナ」「歓びの毒牙」もまた観てみたいな、と思った。