どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ジャッカルの日」…1発の弾丸にすべてを賭ける仕事人に惚れる

今週Blu-rayが発売になる「ジャッカルの日」。いい値段するな〜と思って予約していないのですが、子供の頃以来にBSで録画していたものを鑑賞。

音楽がほとんど無く、大げさに盛り上げるような演出は皆無。しかしテンポよく緊張が続き、142分があっという間に感じられました。

子供の頃は、ド・ゴールが実在の人物とも知らず、「大統領は絶対に殺される!」と思いながら、不思議と殺し屋を応援する気持ちで観ていたように思います。

今観てもそれは同じで、1発の弾丸に己の全てを賭けて挑む仕事人・ジャッカルに、惚れ惚れとしてしまう。

 

そしてフレデリック・フォーサイスの原作、こちらもめちゃくちゃ面白い!!

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図書館から借りてきたハードカバー版。ゴルゴ13かよ!ってちょっとジャッカルのイメージが違いますが(笑)

 

フレッド・ジンネマン監督によるドキュメントタッチな描き方といい、映画はかなり忠実な脚色といえそうです。今回映画を観返して、見所や改めて気づいた点などを少し語ってみたいと思います。

 

 

誰が、なぜ、ドゴールを殺そうとしたのか

子供の頃、全く理解してなかった大事なところ(笑)。

本作の舞台は1962年のフランス。軍や入植者の反対を受けながらも、アルジェリアの独立政策をとったドゴールは、軍部や極右派の人間から恨みを買っていました。

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冒頭でドゴール暗殺に失敗した組織の実行犯・バスチアン・チリー。

上のキャラクターは実在していた人物で、狙撃事件も実際に起こった出来事を元にしているとのこと。

反ドゴールの組織・OASには、ドゴールを殺害できれば、再び極右派が勢いづき、自分たちの密やかな支持者が、また資金を提供してくれるだろうという目論見もありました。

生涯で31回の暗殺未遂事件にあったというドゴール。実話かな?と思わせるような話の作り込みがすごいですし、事件を淡々と描いていく映画にどんどん引き込まれていきます。

 

映画版のドゴールはある意味〝影〟のような存在で、誰かとしゃべったりするシーンは出てきません。しかしクライマックスの式典で、退役軍人に祝福の接吻を与えようと前にかがんだ姿。それだけでなぜかカッコいい。

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原作ではもう少しばかり出番があり、「大統領がけちな殺し屋の脅威におびえないことこそ、フランスの国益にかなうことなのだ。」というドゴールの台詞があるのですが、きっと現実のご本人のスタンスがこうであったのだろうと思わせるものがあります。

 


ジャッカルと男爵夫人の情事の謎

反ドゴール組織は、自らの死を省みないものの暗殺作戦がことごとく失敗したので、外注でプロの殺し屋を50万ドルで雇うことに。(1962年の50万ドルって4億円くらい??)

〝狙撃できる状況〟をつくるためだけに、約2ヶ月半、たった1人で、入念な準備を行うジャッカル。

パスポート1個あったらよくない?なんで3つもつくったん?銃しまうデザインって結局どんなんなん?パリに来てなんで1番に行くところがサウナなの?

改めてみるとジャッカルの切れ者っぷりがすごすぎて、全然わかってなかったわ〜と苦笑い。

 

また昔観ててポカーンだったのが、ホテルで偶然一緒になった男爵夫人との情事。

ロビーでの会話にて、「夫人に全然相手にされてないやん!」と思いきや、次のシーンでちゃっかり一緒にベッドで寝てる2人。

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士官学校へ行った…息子の卒業式…息子は19歳…

この短い台詞で、夫人が〝人生に不満のある寂しい人〟というのが何となく伝わるし、ジャッカルは、レストランで1人食事をしている彼女を一目みて、夫人の人間そのものを見抜いたということなんでしょうね。今観ると本当によく出来ているドラマだし、無粋な口説くシーンなどない、粋な男女のやり取り。

そもそもなぜ夫人に近づいたのか??身元が割れてホテルにいれなくなるかもしれないことを見越して、決行日まで宿主になりそうな人物を探してたということでしょうか。ストレスで溜まった色んなものを発散するためというのもあるかもですが(←マジで)本当に用意周到だし、サウナでゲイに声かけられるのも狙い通りとはなんとモテる男!!

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細マッチョにしては筋肉少なめかしら。でもカッコいいよ〜。

 

クライマックスは1対10万人の警備。こりゃ絶対殺るの無理、どうするんだろ〜からの、あのお姿でのご登場。(またわざと遠くから映すカメラが上手い!!)冒頭で買ってた衣装の伏線も回収され、見事な仕事ぶりに、もうジャッカルを応援したくなってしまいます。

 


警察も有能だからこそ、面白い

しかし!!相対する捜査陣の人間も皆、地味にいい仕事する優秀な人たちというところも、この物語の面白いところ。

なかでもルベル警部の、”常に物事を悪い方に仮定した上で捜査する姿勢”は、ジャッカルへの脅威となっていきます。

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初登場はまさかの鳩と戯れる姿。こんなオジサンがまさか超やり手とは…

部下のキャルヒーとともに、全然寝てなくて必死にサラリーマンしてる感に、こっちはこっちで応援したくなってしまう。

捜査陣営は、本で追いかけていてもややこしく、協力者のイギリス側も含めてキャラを追うのが大変…。哀しき女性諜報員や、武器職人、ボディガードなど、出番少ない脇キャラクターも豪華で、本当に贅沢な作品です。

 

 

ちなみに今回発売するというBlu-rayはどうやら、テレビ放映版の吹替が3バージョンも収録されているのが大きな特典のよう。うーん、リアタイのテレビ放映でみた作品じゃないし、吹替に思い入れないと思ってたけど、日本テレビ放映版のジャッカル吹替は山本圭!!

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あ!最近観た「新幹線大爆破」のこの人か。ちょっと気になる(笑)。

 

お子様当時の視聴でもジャッカルのカッコよさだけは伝わっていました。しかし大人になってからみると、気付く点は山ほどあって、繰り返し観たい作品のように思います。

本も本当に面白かった~!!文庫本買おうかな。