ううっ、怖い…!!
オリジナル版「恐怖の報酬」が面白かったので、同じアンリ・ジョルジョ・クルーゾー監督の「悪魔のような女」を初鑑賞。個人的には面白さでは「恐怖の報酬」、しかし恐怖度では遥かにこちらが上回っていました。
96年のリメイク版を「まーたシャロン・ストーン叩かれてるんか~」と完全にスルーしていたことに感謝!!
台詞の1つ1つが伏線になっていたりして、思わず二度見してしまう、至高のサスペンス映画でした。
(以下、結末までネタバレで語っています。)
二転三転する展開にドキドキ
舞台は1950年代のフランスの男子寄宿舎学校。学校だというのに、なんか暗くてジメジメした不気味な雰囲気。
校長のミシェルは病弱な妻・クリスティーナがありながら、同校の女教師・ニコルと不倫関係にありました。
しかし横暴なミシェルに実は嫌気がさしていた2人は、ニコールのアパートにて殺害計画を実行、死体を校内のプールに沈めます。
ところが、驚きの展開が…死体が発見されるのを心待ちにしていた2人が、プールの水を抜くと、あるはずの死体がない!!
ここホントにええっ!?って声でそうになりました。一体何が起こったというのか??
なんと愛人と旦那がグルで、心臓が弱い正妻の財産を横取りしようと仕組んだ大きな計画!!心理ショックを与えて死に追いやろうとしたという狡猾な手口!!
自分はこういうサスペンスものをみるとアホな頭で色々推測しながら、話を追ってしまったりして「どっちか騙してる!?」「もしかして旦那生きてる!?」という考えも途中よぎりました。
それでも面白くみれたのは、みせ方がすごく上手だから。
クリーニングされたスーツ。集合写真にうつる顔。なになに、もしかして妄想系のオチ!?さすがに幽霊はないと思うんだけど…。最後に第3の人間が脅迫しにくる!?
死体安置所で正妻の方が身元確認しに行く場面なんて、ハリウッド映画ならバーン!!と旦那の顔アップで映して、ハイちがいました〜って分かりやすくやりそうだけど、ハッキリ映んない。
モヤモヤさせたまま話がすすむのが、逆に怖いのです!!
対照的な2人の女性がみせるもの
「恐怖の報酬」ではイヴ・モンタンとシャルル・バネルという対照的な2人の男性の関係がスリリングでしたが、今回はまたタイプの異なる2人の女性に魅せられました。
まずは正妻のクリスティーナ。
序盤、めっちゃイライラしてみてました。やるならやる、やらんならやらん、ハッキリせーや!!修道院育ちとのことですが、離婚は悪、しかし旦那殺すかどうかは迷うってどうなんでしょう。
この台詞、2度目にみると何ともいえない気持ちになる。
また旦那に毒入りワインを飲ませるところ、観返すと直前でこの人は飲むの止めようとしてて、旦那が進んで狂言死に進んだ感がある。
通してみると、繊細で悲劇的なヒロインでした。
そして、正妻と対照的すぎる、シモール・シニョレ演じた愛人・ニコール。
グラマラスだけど男っぽい感じもして、すごい迫力の美人。
しかし、こんなにタフそうなカッコいい女性が、碌でもない男に夢中だったというオチ。人は見かけじゃわからんもんだ〜。
旦那がクリスティーナに向けて放っていった、「彼女の話はすべて嘘さ。」という台詞も見事なブーメランになって返ってきた感ありますね。
個人的にクリスティーナとニコルがもっとも1番対照的に思えたポイントは、信仰心。
7歳から地獄なんて信じてない。「祈りに逃げてどうするの。」ラテン語なんか教えてもしゃーない…。
クリスティーナと違って、ニコルは生まれながらの裕福さもなく、自分だけを頼りに生きてきた感があります。
現実的な女性が愛する男を勝ち取って生き残ったとみるか、信仰をなくした人間が悪魔と化したとみるか…
「恐怖の報酬」もそうだったけど、昔のフランス映画、如何様にもとれる深さみたいなのが凄いですね。
最後に一世一代の芝居見せてくれた旦那。
ニコルが機転きかせて息継ぎ的な間はあったでしょうが、それにしても身体張りすぎでしょ。多分、「ポセイドン・アドベンチャー」でも生き残れるよ!!
戦慄のラストにぶるっ!!
クルーゾー監督は、フランスのヒッチコック、ヒッチコックが嫉妬した…などと言われているそうですね。でもヒッチコックならあんなラストにはならない…と、全然趣が違うなあと思いました。
これがアメリカ映画だったら…アパートのお隣さん&ガソリンスタンドで絡んできた男を話に絡ませながら、探偵とクリスティーナが組んで一芝居、犯人2人をムショ送りしてちゃんちゃん♫な気がします。
それが正妻死亡、まさかの心霊オチという予測不可能な展開が待っていました。このラストが怖かった!!
そう、この映画には意外なもう1人のキーパーソンがいて、それがわんぱく少年・モネくん。
スルーしてたけど、ここも観返すと伏線だった!!
無自覚に真実に近かったルネがラストに死んだはずのクリスティーナに会ったという。しかし嘘をつくな、と大人から怒られる。
心霊オチなんて、普通にやったら1番白けるやつだろうに、本作ではなぜか言いようのない不安感のようなものがのこります。
大人の起こした殺人事件で学校が閉鎖。本当のことを言っている子供が嘘つきよばわりされたまま終わる。
この後味が悪さがなぜか怖い。
小さな町の小さな殺人事件を描いているだけのはずなのに、その中に、社会不安とか、絶望とか、そういうものが込められているような、不思議なスケールを感じる作品でした。
数年前に午前10時の映画祭で上映されていたようで、劇場で観れた方がうらやましい。
蛇口から水ひねった音とか、ほんのささやかななものにビクッとさせられたりして、地味そうにみえて、映画館でみたらスゴい迫力のある作品な気がします。
「恐怖の報酬」もこちらも、どっちもすごく良かった〜。古い名画すごいなあ。タイトルは…「悪魔のような者共」じゃダメかな!?