あれ?思ったより怖くない??
「チャイルド・プレイ」より1年前、1987年に製作された作品ですが、こちらもお人形が人を襲う系ホラーとして、有名な1作。
子供の頃チャッキーに震え上がった身としては、かなり構えて鑑賞に臨みましたが、なんだろう、ちょっと怖い童話読んだくらいの恐怖感でした。
「ドールズ」の舞台は現代。
少女ジュディ(8歳くらいかな)は、財産目当てで再婚した父と意地悪な継母に連れられて、イングランドの田舎町を旅していました。
しかし突然悪天候に見舞われ、車は立ち往生。
近くにあった古い屋敷に身を寄せると、そこは人形師の老夫婦がたくさんの人形に囲まれて暮らしていました。
さらに、気の良いビジネスマンのラルフと、ヒッチハイクしてきたパンク娘2人も駆け込み、6人が屋敷に泊めてもらうことに。
しかし次第に1人ずつ姿を消していき…。
まず人形師のご夫婦がかなり雰囲気があっていい感じ。
まるで現代から隔絶したかのような異空間。
でもこの老夫婦も、お人形たちも、殺人鬼そのものだったチャッキーのような邪悪さは全く感じません。
子供をネグレクトしている親、無礼で窃盗をはたらく不良娘たち…と、モラルの低い人間だけが消されていく。
善良な人は生き残る…とどこか教訓めいた単純なお話で、スカッとするっていっていいのかな、理不尽さに恐怖するホラーとは違った趣きがあります。
こういう西洋のアンティークドール、自分はリアルでもすごい苦手で怖いんですが、この作品の人形たちはなぜかちょっと可愛いと思ってしまいました。
いっぱい並んでいると迫力があるし、表情も怒ってる顔とかは怖いんですけど、みんなでどーするーって話し合ってる雰囲気とか、何を話してるのか分からない高い声とか、あどけない小ちゃい子供にも映ります。
100体くらいは出てるでしょうか、皆んなそんなに統一感がないところがいいですね。
動きはストップモーションや操り糸で動かしてみせているようですが、これもよく出来ていて、不思議とあまりチープな感じはしません。
パンチさんの格闘シーンはカッコよくて、お人形の方を応援したくなってしまいます(笑)。
また観ていて個人的に1番怖かったのは、”人形の中に人間が閉じ込められている”という設定です。
この映画、”お人形がヒトを殺す場面”よりも”ヒトがお人形を壊す場面”の方が残酷に映り、さらにその壊れた人形から、腐った人体!?みたいなのが出てくる。ココが1番怖かった!!
その後の展開で、老夫婦の意に介さなかったモラルのない人間が人形に変えられたということが示唆されています。
そうすると、この屋敷の人形たちが、新しく来た人を襲うのって、ちょっと腑に落ちない気もするんだけど…人形になると自我を消されるか、あっても表出できないように押し込まれて、完全に人形師の支配下になるということでしょうか。
またラストは、ジュディの夢オチじゃないの??と勘ぐって観てたのに大ハズレでした(笑)。
冒頭ジュディは「空想癖のある女の子」として紹介されていました。
「ぬいぐるみのテディが巨大化して親を殺す」というシーンは明らかにジュディの妄想(願望)としか見えません。
子供だって辛いことがあると仄暗いこと考えて逃避するんだよ、っていう妄想エンド嫌いじゃないなあ、と思って期待しつつ観ていたのですが…
オチをみると、「次の家族がまたやって来る」という締め方なので、ジュディだけの世界じゃないんだーとハッキリ分かる。
悪いことをした人たちに罰を与えるちょっと怖い妖精みたいな存在がいる…と童話性を強調したようなエンディング、これはこれで世界観が確立されてて良かった、と思える仕上がりになっています。
妄想オチだと救われないもんね…。
ジュディが途中「ヘンゼルとグレーテル」を読んでいる場面も印象的ですが、童話って案外残酷なものが多い…。
日本昔話も例えばさるかに合戦とか悪いことをしたさるは最後相応の罰を受けていたと思いますが、最近のものはちょっとその描写を緩くしてるものも多いみたいで、「どんな過程があっても最後には無理やり皆仲良くしてるのが違和感」と言ってる友人がいました(笑)。
でも「ドールズ」は、まさにここを大人向けにグレードアップさせてみました!って感じで、そこに安心できるようなところが魅力なんだと思います。
子役の女の子は、絵にかいた美少女という感じではないのですが、ものすごく愛らしかった…!!
監督は「死霊のしたたり」「フォートレス」などのスチュアート・ゴードン。でも製作がのちに「パペット・マスター」を手掛けたチャールズ・バンドなので、この人の趣味が全開な作品なのかも。
77分という短さで、B級っぽいのにB級臭のしない不思議な品格がありました。
なかなかめっけもんのホラーです!!