♫ジャンゴ〜 棺桶ずるずるずるー
「続・夕陽のガンマン」という作品を鑑賞したあと…すごい大傑作を観てしまったから1ヶ月くらい他の映画みれんかもしれんなどと思いながら、1週間後に借りてきて観たのがこの「続・荒野の用心棒」でした。
どう考えてもこれ「荒野の用心棒」の正式な続編じゃなさそう、「夕陽」みたあとじゃ何みても霞みそう、と期待薄で臨んだところ、まさかのこれも大当たりという…一体このジャンルはどうなってるんだーと叫びたくなりました。
オープニングから♫ジャンゴ〜と雄々しいボーカル入りの主題歌が爆音で鳴り響き、黒ずくめの男が棺桶ひきずってる後ろ姿しか映らない。
しかも地面はなぜかドロドロしてて、西部劇っぽい乾いた雰囲気からかけ離れている。
さらに女性が鞭打たれるというショッキングなシーンが続き、おどろおどろしい吊り橋に底無し沼みたいな川と妙にホラーな景色が展開される…
「夕陽のガンマン」とまったく次元の違う世界に連れてこられて、なんじゃこりゃーと一気に虜になってしまいました。
本作の監督は、セルジオ・コルブッチという、アメリカ映画の巨匠に憧れたレオーネと対極的に、イタリア魂を貫いたような職人監督。
主人公を演じたのはフランコ・ネロ。この当時ほぼ無名の新人。
タランティーノの「ジャンゴ」にゲスト出演もしていましたが、もとから老け顔の人は年取ったとき逆に若々しくみえる!!
「続・荒野の用心棒」の大体のあらすじは…
流れ者の主人公ジャンゴが辿り着いたのは、メキシコ国境の街。ここでは元南軍のジャクソン少佐とメキシコ人のウーゴ将軍が対立していました。
ジャンゴはウーゴに、ジャクソンが管理をするメキシコ政府の砦にある金塊を盗もうと話をもちかけます。
その真の狙いは…。
基本、〝流れ者が町の2大勢力相手に大立ち回り〟するお話で、プロット自体「荒野の用心棒」によく似ているから〝続〟と付けられたようですね。
勢力の一派、ジャクソン少佐は嬉々としてメキシコ人を惨殺するとんでもない人種差別主義者。
元南軍ということで、この一味は赤いスカーフを付けていますが、中にはKKKを彷彿させる赤い頭巾を被っている者も…。
社会的メッセージを訴える演出なのかと思いきや、
じつは低予算のため人が足りず、同じ人物が何度も死ぬのを隠すためであり、〝まとも過ぎる〟エキストラの顔を隠すためでもあったという。
「SCREEN特別編集マカロニ・ウエスタン BEST SELECTION50」より
まさかのB級映画ならではの大工夫(笑)。
メキシコ人のウーゴ将軍の方も、人の耳を切ってそれを食わせるというスプラッターなリンチをする非情な奴。
でもメキシコ革命の夢を抱くリーダーでもあって、豪快さが不思議と憎めない人物。
序盤の見せ場はなんといっても、ジャクソン一味に取り囲まれたジャンゴの棺桶の中身が明かされるとき…!!(※重大なネタバレ)
機関銃で敵40人を一気に殲滅!!
必殺アイテムかと思いきや大事なときに沼に落ちて消滅というすごい雑な扱い方がまたイタリアン。
主人公のダークヒーローっぷりに加え、ストーリーに女性がしっかりと絡んでくるところも先に観た「夕陽」と異なるところでした。
アメリカ人とメキシコ人のハーフであるヒロインのマリアは、差別を受けて虐げられる存在ながら、意志を持って抗おうとする強さのあるキャラクターとして描かれています。
マリアの愛を知って、人間性を取り戻すジャンゴ…と殺伐とした世界でラブ・ストーリーを展開。
脇役のはずの娼館の女性たちも、独特のインパクトがあり、漂う場末のスナック感がまたたまりません。
クライマックス…両手を潰されたジャンゴは、圧倒的ハンデを抱えて決闘に向かっていく…。
コルブッチ作品にはこの他にも、「殺しが静かにやって来る」(声の出せない主人公)「ミネソタ無頼」(視力を失っていく主人公)と、障害を負った人が戦う作品がありますが、レオーネのような格調高い感じはしないのに、「逆境に立ち向かう反骨精神」みたいなドラマを感じます。
手の使えなくなったガンマンはどうやって闘うのか…??ラストの決闘シーンはシビれるカッコよさです。
記事を書くのにググって今知ったのですが、
今年はセルジオ・コルブッチ監督没後30周年ということで、「続・荒野の用心棒」デジタル・リマスター版が1月末から公開されていたようです。
春から上映のところもあったみたいなのに、コロナのせいで映画館も大ダメージ。
時期がずれてもいいから、また公開されるといいな…。
自分にとっては、「夕陽のガンマン」、「続・夕陽のガンマン」、そしてこの「続・荒野の用心棒」が、このジャンルの入り口になってくれた映画でした。全部すごい作品だった…!