どうながの映画読書ブログ

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「バトル・オブ・シリコンバレー」…ジョブズvsビル・ゲイツのパソコン興亡史

スティーブ・ジョブズビル・ゲイツも実は盗人!?

アップルの設立者であるスティーブ・ジョブズと、マイクロソフトの設立者であるビル・ゲイツの2人を主人公に、1970年代〜90年代後半までのコンピュータ界の歴史を振り返るようなドラマになっています。

バトル・オブ・シリコンバレー [DVD]

バトル・オブ・シリコンバレー [DVD]

  • 発売日: 2011/12/21
  • メディア: DVD
 

元々はテレビ映画だったのにアメリカでは99年の放送時から評価が高かったそうで、のちに劇場公開、TSUTAYA名盤復活コーナーにも登録されている作品です。

 

原題は「パイレーツ・オブ・シリコンバレー」という、ジョニー・デップかよ!なタイトル。

これはおそらくジョブズ本人が口にしたと言われる「海軍に入隊するより海賊でいたい。」という言葉からとったと思われますが、互いを出し抜き争い、いかに技術を他所から盗むか…かなり赤裸々な、というかよく怒られんなーという内容になっていました。

ソーシャル・ネットワーク」のような「ああ人間って孤独!」とひとりごちたくなるような重厚な人間ドラマではありませんが、勉強になるよく出来た伝記ドラマだと思いました。

 

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俳優さんが頑張ってて2人ともすごい似てる!!


映画のあらすじ(シリコンバレー史)を振り返ると・・・

まずジョブズの方は70年代にブルーボックスという“料金を払わず不正に電話をかけることができる装置〟を友人ウォズニアックにつくってもらい、それを売って利益をあげていました。

ジョブズはアイデアマンで、実際にすごいものをつくってみせるのはウォズニアックという人の方なんですね。

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スリムすぎるウォズニアック。

 

コンピュータは企業だけが使うバカ高いモノという認識であったこの時代に「個人が使うパーソナルコンピュータ」のアイデアが既にあった天才ジョブズ。しかし企業からは「大衆がコンピュータを何に使うのよ!?」と全く理解されません。(時代の先を行くってそんなもんなのかー)

しかしインテル社にいたマイク・マークラから出資を受け、アップル1を製作、さらに後続機種アップル2は発表と同時にコンピュータフェアで人が殺到し、大ヒット商品に。

 

このコンピュータフェアの場面にて、まだ無名のビル・ゲイツジョブズに、「自分は言語をつくってる。手を組まないか。」と声をかけるのですが、袖にされてしまいます。
実際の歴史がどうだったのか知りませんが、もしここで2人が結託していたらまた全然違うパソコン史になっていたのでしょうか。

 

ビル・ゲイツの方は、戦前からの一大帝国であったIBMに対し、まだつくってないOSをつくってると盛大なハッタリをかまして契約。(気弱なギークかと思いきや豪胆な詐欺師!)
シアトル・コンピュータ・プロダクツから買ったOSに改良を加えて転売して大儲けしました。

 

一方アップル社は、“マウスを使ってのパソコン操作〟という画期的な技術をゼロックスから根こそぎ奪ってしまう…!!ゼロックスの発明だったことにびっくり!!)

ここが盗人、海賊というタイトルの所以なのかなと思ったのですが、違法を犯したわけじゃなく使用権の購入というお互い合意の上のもの。

映画の中ではゼロックス側の女性がアップルに対し、「私たちが開発したのに」と愚痴をこぼす場面がありますが、ジョブズのおかげでゼロックスの技術が腐らず普及に至ったという見方もあるのかも…。

しかしゼロックスの会社の重役たちが「なんだよマウスって、ネズミの死骸かよ!」とコケにする姿はなんとも残念…。技術の取り合いの世界で上が無能だと現場の人やりきれんなー。


しかし大成功したジョブズパワハラやりまくりの独善的すぎる姿勢からやがてアップルで孤立、業績の停滞も重なって退陣に追い込まれます。

人格否定の圧迫面接、怒鳴る、週90時間働こうTシャツを配る…。

プライベートでは出産した元恋人と娘リサを放置、大金持ちになっても一銭もやらん!!だけど新作のコンピュータの名前はなぜか娘と同じリサにする…ってサイテー男通り越してサイコパスにしか見えない…。

 

一方ビル・ゲイツは、強かな面もありますが、穏やかで落ち着いた物腰にみえます。私生活では倹約的、慈善事業にも熱心、という人柄のイメージがなんとなく一致する人物像でした。

しかし最後の最後に「マッキントッシュをまるパクリしたといってもいいウィンドウズ発売」をしれっとやってのけるゲイツ。そしてジョブズに「君のつくったものには敵わないから別モノだよ。」とお茶を濁すというとんでもないコミュ力を発揮(笑)。

映画の後半は駆け足で、ジョブズはまたアップルに戻るけれども「マイクロソフトがアップルの株所有」となんとなくゲイツ勝利という雰囲気で幕を閉じます。

 

うーん、ビル・ゲイツが1番すごかったのは、自分が他所から技術を買った時は買い切りだったのに、いざ自分が売るときはしっかりライセンス契約にしたというところじゃないでしょうか。

高性能の機械、アートをつくること執心したジョブズに対し、あくまで企業が仕事で使うソフト開発(大人数に必要なもの)に注力したからこそ、時間をかけてトップに登り詰めた…そんな印象を受けました。


しかしこの作品の未来を生きてる私たちにとっては、「このあとiPod、さらにiPhoneが出るし」とツッコミたくなってしまいます(笑)。

ジョブズの発想力がまたすごいものを生み出す。本人が作る人じゃないからこそ全てを度外視して人に「つくれ!」といえてしまうところがすごいのかも!?

ジョブズに関しては”変人だけど天才”という漠然としたイメージしかなかったので、この映画で描かれてるヤバイ人っぷりにどうなんだ!?と思ってしまいました。すごい人なのも伝わってきたんですけどね…。


何もかも真実というわけではなく、フィクションとして楽しむべき作品かと思いますが、あとから色々調べても小ネタとかも上手く使ってすごく良くできてる作品なんじゃないかと思いました。コメディタッチで2人の変人っぷりには大いに笑ってしまいます。

リドリー・スコットが撮ったというマッキントッシュのCM(1984)もちょっと出てくるけど、カッコいいー。