マイケル・ベイの監督第2作にして、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーがドン・シンプソンと組んだ最後の作品となった1996年公開の「ザ・ロック」。
子供の頃、友達のBちゃんと保護者同伴で映画館でみた作品なのですが、圧倒的ド派手アクションにウキウキ、しかし小学生がみてもツッコミたくなるありえない展開の連続に、見終わった後にはゲラゲラ笑って、その後「ザ・ロック」ごっこもして遊んだという思い出深い作品です。
ストーリーと見所を追うと…
アメリカ海兵隊の伝説的英雄・ハメル准将は、かつて機密作戦に参加した際に部下を見殺しにされ、その後政府から勲章も恩給も支給されなかったことに腹を立てていました。
そこでハメルは14人の部下とともに化学兵器VXガスを強奪、観光地となったアルカトラズ島に人質をとって立てこもり、遺族への補償金として1億ドルを要求。のまなければ、VXガスを発射してサンフランシスコを壊滅すると脅しをかけます…。
このエド・ハリス演じるハメルのキャラクターのドラマはすごくシリアス!!目的が私欲ではなく、民間人を殺す気は本当はさらさらないというところ、表にすら出ない軍人の犠牲の上で国が成っていたというところ…「新幹線大爆破」の高倉健のような生真面目さで敵ながら大変魅力的です。
この大事件を解決するため、FBI化学班から呼ばれたのが、ニコラス・ケイジ演じる、スタンリー・グッドスピードという縁起が良さそうな名前の化学オタク。
そしてもう1人、かつてアルカトラズを2度脱走したことがあるという謎の男メイソンが招集されますが…これがなんと元英国諜報員という設定で、演じるのがショーン・コネリー。
国家機密を握って隠したため、裁判もされずに幽閉されてた男…という007がまさか…とファンに目配せしたようなキャスティングです。
政府を疑って協力を渋るメイソンの説得を、グッドスピードに全投げするという雑すぎるFBI。
隙をついてメイソンが脱走し、シスコの街を気前よく破壊するカーチェイスがいきなり勃発!
グッドスピードも黄色のフェラーリ&原付で街を疾走…あんた頭脳担当じゃなかったんかい!!
しかしここはさすがマイケル・ベイ、サンフランシスコの“坂道〟のロケーションを生かし、車や路面電車が転がり落ちるようにデストロイしていく様は実に迫力のある絵面でワクワク。
メイソンを再度捕らえて説得し、海軍特殊部隊とともにいよいよアルカトラズに水面下から潜入することになりますが、この部隊のリーダーはどっかでみた顔、マイケル・ビーン。
クリムゾン・タイドっぽいBGMとパイレーツ・オブ・カリビアンっぽいBGMが鳴り響く中、ひっそりと島に上陸…!!
入り口が封鎖されててどこからも入れん!!と困った一行…どういう用途でつくられたのかさっぱり分からない、謎の歯車行き交う炎にまみれた通り道を発見!!
火を噴くボイラーの中を転がっていくありえなさすぎるメイソンの姿にBちゃんと爆笑。
無事に向こう側にたどり着いたメイソン、反対側から扉を開けて、
ここで決め台詞が炸裂!!
とても昨日まで幽閉されてたとは思えない俊敏さ。なんてカッコいいおじいちゃんなんだ!!
しかし、潜入部隊はハメル准将側が用意したトラップに引っかかり、間も無く包囲されてしまいます。
マイケル・ビーン隊長が、あなたの気持ちは分かりますがと言いつつ、ハメル准将に降伏を訴える…ここは本作屈指の名シーンです。
結果偶発的に撃ち合いになってしまい、部隊は全滅。残されたメイソンとグッドスピードのとんでもない猛攻撃がはじまります。
アクションでもさらっと敵兵の死に方が残酷極まっているのが実にマイケル・ベイ。
喉にナイフが突き刺さる、重機が落下して潰される、ロケット発射された上に身体が電柱に突き刺さる…と芸が細かいです。
そもそもくだんの化学兵器がかなりヤバい代物で、少量散っただけで激痛とけいれん、皮膚がとけるという恐ろしすぎる1品で、ものすごい緊張感です。
しかしさらに驚くべきはこの爆弾の解除方法が、「チップを取り外すだけ」という超簡単なもので、これ化学班いらなかったんじゃ、とツッコミたくなる…。
でも安全装置も外せなかったグッドスピードがなぜか後半射撃の達人ばりに大活躍!!本当にこの人をチームに加えてよかったね…!
そして…途中1基解除出来なかったガス爆弾が発射されてしまうというハラハラの場面がありますが、それを遠隔操作で海に落とすハメル准将。
やっぱり民間人を巻き込まない良い人でした。
しかし仲間であったはずの部下から「俺たちの取り分はどうするんだ?」と銃を向けられ、撃ち合いになって命を落としてしまいます。
銃を向けたメンバーは、ハメルと共に戦場を駆けた者ではなく、今回のミッションで初めてタッグを組んだ者だった…という人物配置もよく出来てる!!
ハメルとメイソンは、国から利用されて捨てられたという点で共通している2人なのですが、メイソンには娘がいて、いつか会えるというささやかな希望が国への恨みを消し去っていたかと思われます。
映画の冒頭が妻の墓にたたずむハメルで始まっているのは振り返ってみると素晴らしく、失うものが何も無くなったハメルの哀しみが際立っています。
そして…作戦失敗かと勘違いした政府が、人質もろとも島爆破のオーダーを下しますが、
グッドスピードがすんごい表情で発煙筒を焚いてミッション成功を知らせる…!!
生き残った男2人のやりとりも粋で、エンディングがまた実に洒落ています。
マイケル・ベイらしさにあふれた、90年代ボンクラアクション大作のお手本のような作品かと思いますが、主演3人のバランスが絶妙で色褪せず面白い!!
大人になっても大いに笑ってスカっとさせてくれました。