どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「サザン・コンフォート」…ウォルター・ヒル最高傑作!?ボンクラ小隊決死の脱出劇

81年制作、日本国内では劇場未公開だったというウォルター・ヒル監督作。

ジャケ写は戦争映画のような雰囲気ですがサバイバルホラーと言っていい仕上がり。

「田舎で得体の知れない人に襲われる」系ホラーの醍醐味もあり、個人的には今まで観たウォルター・ヒル作品の中で1番面白かったです。

1973年ルイジアナ

アメリカには州兵(National Guard)という連邦政府とは別に州の管理下にある軍隊があり、その中には「本業は別にあるけどパートタイムで軍に入る」という人たちが一定数いるようです。

アメリカはやっぱり広い国、州にも別軍隊あるなんてスゲーッとか思っちゃうけど、本作に登場するブラボー小隊は驚きのボンクラ集団。

週末だけの演習にはお遊び気分で参加。

訓練中に迷子になり地元住民のカヌーを無断で使用するも、チーム1のバカがふざけて住民に発砲してしまいます。

↑ヒャッハー!この笑顔である

小隊の持つ銃は空砲だったのですが、そんなことは露知らない住民は怒り心頭、反撃に出てチーム唯一の〝軍人〟だったリーダーが真っ先に射殺されてしまいます。

土地勘のない場所に放り出されるボンクラ兵士たち…

ジメジメした湿地帯の舞台がムード満点。

追跡者は終盤までその姿をみせず、エグい仕掛け罠が登場したり犬に襲われて負傷したりとドキドキハラハラな展開が続きます。

 

本作に登場する地元住民〝ケイジャン〟はフレンチ・インディアン戦争の頃からルイジアナ州に住むフランス系移民をルーツとする人々。

同じ国の中に全く違う言語・風習の人たちが住んでいる文化摩擦。

やたら怖く描いてしまって誤解を与える??と懸念もされそうですが、割り切ったホラー演出ですしそもそもケイジャンの人たちは作中そんなに悪く描かれてないように思われます。

1番おっかないのはマヌケ小隊のあまりのマヌケっぷり。

統率のとれてない軍隊ほどアカンもんはない。

疑心暗鬼になって地元住民に暴力振るうわ、自分たちに非があったのに「復讐だ…!!」と正義に燃え盛るわと痛々しい愚行が続きます。

♫バシャバシャバシャ〜 FPS勢もドン引きしそうな大音量(笑)

皆を鼓舞する新隊長は方向音痴!あまりの右往左往っぷりが段々笑えてきたりもします。

 

メンバーの中で比較的常識人なのはスペンサー(キース・キャラダイン)とハーディン(パワーズ・ブース)の2人。

ドゥー・ユー・スピーク・イングリッシュ??……異文化尊重もへったくれもない中、唯一対話でコミュニケーションしようとするスペンサー。

ワイルドな見た目と裏腹に繊細なハーディンは実は化学技師。
地元が合わずに引っ越してきたのに「テキサスのバカのルイジアナ版だ」…何ともいたたまれません。

州兵→ケイジャンへの無理解・蔑視もありつつ、比較的知識人の2人→ザ・底辺な他メンバー…の分断が絶望的です。


(ここからラストまでネタバレ)

湿地帯を抜けてからのクライマックス30分も全くダレず、ケイジャン奥地の村に辿り着いてからの緊張感がハンパありません。

もしかして村人全員グルなのか…観てるこっちも疑心暗鬼に。豚のように処刑されてしまうのかどっちだーー!!演出が冴え渡っていて手に汗握ります。

1人生き残りor全滅エンドかと思いきや、ラストは助けが来てグッドエンド…??

意外な終幕ですが時が止まったようなラストの見せ方も洒落ていて、もう何にも信じられない&命が助かっても心はもう帰ってこれない…

年代的にもプロット的にもベトナム戦争を批判した感ありありですが、ウォルター・ヒル監督は政治色を入れたくなかったようで役者には「ベトナムものだと思うな」と言ったとか。

アメリカの広さや格差を想像させられつつも、小難しいこと考えず第1級のサバイバル・ホラーとして存分に楽しめる作品になっていました。

それにしてもタイトル:Southern Comfort(南部のやすらぎ)って……嫌味かっ!!